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20121030Tue
 >文省堂書店 ・ キントト文庫

昼、仕事場に行くと、先輩が
「中森明菜が『デザイア』歌ってたの、今の私より年下の時じゃん!
 真っさかさまに落ちてデザイアー♪、ってどんなハタチだよ!」
と、よく分からない理由で落ち込んでいました。

そんな本日、フロム神保町。2軒の古書店へ行ってきました。

「文省堂書店」 (http://www.bunsho-do.com/
bun.jpg
神保町は、古本屋街というよりは問屋街な性格がありますので、
土・日曜はほとんどの店が閉まってしまうんですね。
そんな中でも開いている強い味方といえば、小宮山書店(ガレージセール!)、
そして個人的にはこの文省堂書店であります。

現在の場所に移転する前は、戦前から建ってるビルで営業されてました。
店外の均一棚は名物で、アニメ『ROD』でも読子さんが漁ってる場面があったりしました。

現在でも量は減ったものの、外の均一棚は健在で、文庫は1冊500円で買えます。
雑誌も100円均一で結構回転が速くて、月イチくらいで眺めても楽しいです。
店内にも均一品はたくさんあります。普通の本はとにかく安い印象。

しかし、文省堂といえば、ポストカード・絵葉書、
アーンド、グラビア雑誌、そしてエロ雑誌! だと思う!!

店内奥に行くと、グラグラととても濃ゆいコーナーが展開されています。
『S&Mスナイパー』と『奇譚クラブ』くらいしか知らないんですが、
なんか、もう、近づきがたいよ! けど、近寄っちゃうよ!!って感じの、
黒ーいアダルティーなコーナーでございます。

ポストカード・絵葉書の棚が充実しすぎてて、下手するとここだけで一日潰れてしまうんじゃないかと、
なかなか見る勇気が出ないのが残念。こんどちゃんと買います。
あっ、あとマンガも、少し古めのが沢山あります。『パタリロ』が揃えられそうなのが魅力。



「キントト文庫」 (http://jimbou.info/town/ab/ab0051.html
kin.jpg
すずらん通りの小さなお店、キントト文庫です。狭いですが、濃い店です。
前に神保町を徘徊していた頃は、必ず寄っていました。
並んでいる本は「どこから集めてきたんですか!?」と聞きたくなるような、マニアックな本ばかり。
昭和・軽風俗・落語・空手・プロレス・お色気・カメラ・歌謡曲、などなどなどなど。
ジャンル分けが難しい、キントト的と言うしかないような品揃え。

棚と棚の間が狭くて、そのくせ棚に上から下までギッシリと本が詰まっているので、
一周見るだけでも、結構疲れます。背伸びしたり、かがんだりしないと見れないし、
結局そうやっても、全部は見れません。それくらい、なんか、ギッシリ詰まってます。
だって、背表紙が黒くて判別出来ないやつとかあるし(そういうときは、本の並びで判断します)、
それ以前に中綴じだから背表紙が無い本が大量に並んでたりするし、
それ以前のそれ以前に、なんだか貴重そうな本ばかりだから、
買うかどうか迷ってる段階でいちいち棚から出すのが、なんだか申し訳ないから!!!

お色気系のマヌケな本とかねー、中味を見てみたいんですけどねー。
なんか、立ち読みが許されない雰囲気なんですよねー。
なんせ、店奥にいらっしゃる女性店長が、すごく怖そうなオーラ出してますので……。
けど、お会計のときはすごく良い人です。
勇気を出して、興味の湧いた本を買いましょう!

・買ったもの
『図解 水泳読本』
以前、早稲田古本祭りで買ったのが、昭和ヒトケタ代の水泳教科書。
今回は昭和30年代のもの。
だいぶ現代に近づいていて、読みやすいです。……当然か。
いっそ水泳の本集めようかな。

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20121026Fri
 >泣きボクロ池袋

tumblr_mcg4n44POR1r0q4o3o1_500.jpg

池袋西口公園古本まつりへ行ってきました。
思った以上に棚が多くて、12時から17時くらいまでいました。
バカです。もしもバカにランクがあるならば、大バカです。
昼ごはんも食べずに行ったので、はっきり言って、しんどいです。
半分過ぎたくらいから、意識も朦朧としてまいります。
けれども「でもやるんだよ!」と言い聞かせ、最後までガッツリ見てきました。
なんのために? その問いは不毛ですな。

っていうか、今ブログを書くにあたって荷物をひっくり返したら、
5時間も居て、3冊しか買ってないってどういうこと!
コストパフォーマンス悪いよ!俺!!
あれです。なんだかんだ楽しかったので、良いのです。

・買ったもの
『男性飼育法』三宅艶子
『ギャルの隠語 おもしろ大辞典』ヤングの隠語調査委員会
『太陽 '81 7月号』
ポストカードを3枚

雑誌は出来るだけ買わないつもりでいるんですが、
太陽のこの号が、創刊18周年記念特大号 パズル200集とか銘打ってて、
ついパラパラッとめくってしまいまして、
で、見るまで恥ずかしながら知らなかったんですが、
写真の太陽賞っていうのがあるらしくてですね(第一回はアラーキーがとってる)、
この号で第18回太陽賞が発表されてまして、

それがね、……めっさカッコ良い!

受賞は、これもまた不勉強で存じ上げなかったのですが、橋口譲二さん。
『視線』という一連の作品で受賞されてます。
以下の3枚の写真は、写真集『視線』に載っているものです。

bousouzoku.jpg

e1-hashiguchi.jpgtupari13.jpg

吉永マサユキさんの一世代前っていう感じでしょうか。
ギラギラした若さが伝わってきて、とても好きになりました。

ネットで色々調べていたら、橋口さんが表紙を撮っている雑誌や、
他にも面白そうな写真雑誌の存在を知ってしまい、
まだまだ古本の日々は続くことになりそうです。





20121026Fri
 >呂古書房

s_IMGP0843.jpg

神保町が好きだと公言しているものの、よく考えるまでもなく、
普段ヴィレッジヴァンガードくらいしか行ってないことに気付いてしまい、
こりゃイカンと。コツコツ回ってこうぜと。
思い立ったが吉日。まぁ、いつまで続くか知らんけど。
怪電波フロム神保町!と、またパクリで攻めつつ、
さっそく1軒行って来ました。

「呂古書房」 (http://jimbou.info/town/ab/ab0178.html
神保町でおそらく唯一の、豆本専門古書店です。
ビルの4階にある店は、面積こそ広くはないものの、
なにせ置いてあるものの大半が豆本ですので、結構な本密度となっております。

気になった本は、『洋酒マメ天国』全巻セット棚付き。めっちゃ可愛い。
あと『ジョゼと虎と魚たち』の豆本。
原作はあまりよく覚えてないけど、映画は超好きっていう、ありがちな人間です。僕。

豆本だけじゃなくて、紙モノも沢山あります。
恥ずかしながら、金子國義さんの写真集があることを知りませんでした。
その発売当時のチラシが売ってたんですが、
モデルさんのメイクが、金子さんのイラストに出てくる女性ソックリ!
ぜひ写真集の現物を見てみたいです。
(参考→http://www.kuniyoshikaneko.com/art_gallery/?cat=28

蔵書票もたくさん置いてありまして、1枚300円均一の箱の中から、
今回は1枚買わせて頂きました。可愛いのが沢山あってめっちゃ迷いました。
女性の店員さんが2人いらっしゃって、とても丁寧に対応して頂きました。
包んでもらう袋がまた可愛いこと可愛いこと。

・買ったもの
蔵書票
zousyohyou.jpg

ありがとうございました!




20121024Wed
 >老人、バッグにロージンバッグ

20041224201664C.jpg

なにも無かった日でもブログは書いてみようかと。
なんか、そうでもしてりゃあ、なんでもない日おめでとう、的な気分になれるんじゃないかと、
ネクラなりの終わりなき日々への対抗。
ってか、ブログに書くために何かすりゃいいのか。おっととっとっと本末転倒。

まあ、なにも無かったって言っても、例えば、
バイト先の男ロッカールームがいつでもめっちゃフローラルな香りに包まれてて、
「お前ら女子か!」って突っ込んだりはしてます。心の中で。

あと、帰りに寄ったコンビニで、
おばあちゃんが入り口に犬をつなぎながら、
「じゃあちょっと買い物に行ってくるからね」
「ワフ!」 (※注:犬ももう年寄りなのでフガフガ言ってる)
「大人しく待っててね」
「ワフ!」
「大人しくしててくれたら早く帰れるからね」
「ワフ!」
みたいに普通に会話してて、おもろいなぁと見てたら、
おばあちゃんがヨボヨボと店に入ろうとしたところで、
「ワフワフワフ!!」
淋しくなったのか、犬が吠え始めて、
「ちょっとどうしたの? 大人しくしてて言ったじゃないの」
「ワフ!」
おばあちゃんがわざわざ戻ってきて、可愛いなぁって思ってたら、

「じゃあちょっと買い物に行ってくるからね」
「ワフ!」
「大人しく待っててね」
「ワフ!」
「大人しくしててくれたら早く帰れるからね」
「ワフ!」
おばちゃん店に入ろうとする
「ワフワフワフ!!」
おばあちゃん戻ってくる
「ちょっとどうしたの? 大人しくしてて言ったじゃないの」
「ワフ!」
「じゃあちょっと買い物に行ってくるからね」
「ワフ!」
「大人しく待っててね」
「ワフ!」
「大人しくしててくれたら早く帰れるからね」
「ワフ!」
おばちゃん店に入ろうとする
「ワフワフワフ!!」
おばあちゃん戻ってくる
「ちょっとどうしたの? 大人しくしてて言ったじゃないの」
「ワフ!」
「じゃあちょっと買い物に行ってくるからね」

って、見てた限り3回は繰り返してて、さすがにちょっと怖くなってきたので、
さっさと晩御飯を買って帰ってきたりはしてます。

今日のところはこんなもんか。
まぁ明日からだね。明日から本気出すよ。
ほら、俺はまだ本気出してないだけだから。
って、お父さんが泣きながら僕の頭を撫でて、パチンコへ行きました。




20121023Tue
 >フカフカのカフカ。



試しにiphoneから書いてみます。
情報ってのは、まずは速さが大事。
速さで勝てないんだったら、質で勝負ってことになるけど、質っていうのは、
・量
・専門性
・深さ
によるのではないかなと思った夜、皆様はいかがお過ごしでしょうか。

休日の朝からパルプンテみたいな天気だったので、映画を観に行ってきました。
『演劇1・2』@シアターイメージフォーラム。
平田オリザ率いる青年団を観察したドキュメンタリー映画です。

少し前まで舞台に立っていた者として、とても面白く観ました。
舞台がどうやって出来上がるかを知らない方は『1』を観ていただくと良いんじゃないかと思います。
『2』の方はとにかく平田オリザの驚異的な仕事量が収められていて、作・演出・代表って、やっぱこういうことなんだなぁ、って思いました。

個人的に印象に残った言葉は、
事務所の額に収められた、“まず食うこと。それから道徳”。
その言葉の通り、平田さんは臆することなく金銭交渉をしていくし、役者へのギャラや助成金の申請などを常に考えています。
お金のことを考えずに「売れたい」っていうのは、ほんとアマちゃんなんだなぁと思いました。

もう一個印象的な言葉がありまして、平田さんが講師を務めた、学生のためのワークショップの発表会後の挨拶で、
「演劇というのは楽しいものですので、もしもこの先演劇を続けていって、楽しくないというふうになったときは、何かを間違えています」
といったようなことをおっしゃっておられて、まぁ僕は我が身のことを言い当てられた気分でしたね。

1と2は、個人的には順番通りに観るのが良いのではないかと思います。
ただ、続けて観る必要はありません。
良い映画ですので、演劇に興味がある方は、観て損はないと、言えます。

オススメです!!……と、最後の最後にパクリで締め。




20121023Tue
 >仕切りなおし切り治し。

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お久しぶりです。ナカイデです。
1週間ほど早寝早起きをやってみたのですが、逆に目の下にクマが出来る始末。
どうやら根っからの夜行性のようです。
ブログなんてどんなことでも良いから書きゃいいのに、
なんだかんだ自分で縛りを付けてしまう難儀な性格なので、メンドくさくなっちまうのですね。

そんで、そろそろいい加減、フラットな感情で見られるだろうと、
前までいたバンドの、現在形をYouTubeで見ました。
評判には聞いていたのですが、めっちゃポップになってて驚きました。
ドラマーが変わるって、こういうことなんだなぁと。
ベースに関しては、ねぇ。良い、と言うよりないでしょう(笑)?
いや、実際良いと思うし! 今の感じに合ってる人だと思います。

なんつーか、遠い話になってしまったけど、頑張って欲しいなぁと思いますよね。
レコーディング終わったみたいなので、音源出来たらライブに行こうかしら。
今にして、いや、今だからこそ、思うのですけれども、
人前に立つっていうのは、すごいことなんですね。そうなんですよ。

結論→水野晴郎は凄い。




20121021Sun
 >B面 「This is not a lovesong」

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 外壁に蔦の這う、古ぼけたビルの2階。
他の部屋はオシャレなエメラルドグリーンの鉄製ドアなのに、そこだけはさらに古ぼけた木製ドア。
取っ手も若干錆びが浮いていて触るのにしのびない。
そこを何とかしのびにしのび、ガチャリと開ける。
内側に取り付けられたカウベルが、寝惚けたような音でマロンマロンと鳴った。
店長の友人がオーストラリア土産にと置いていったものらしいが、ぶ厚い鉄に刻まれているのはどう見ても漢字だ。
独特としか言いようのない匂いがスイッと鼻に飛び込んでくる。
埃と水と土が一緒に腐ったような匂い。だけど嫌な匂いではない。

この部屋が一体何なのか、一目で分かる人はそういないだろうと思う。
一応、本屋、という体裁らしい。
が、実際は本屋では無いのではないか、と僕は昔から疑っている。
僕が覚えている限り、本を買っていったお客さんを見たことがないし。

店の入り口反対側には大きな窓があって、その他左右の壁はほぼ目一杯が棚になっている。
大半は本が入っているものの、何に使うのか良く分からないオブジェや仏具らしきもの、
文房具、変わった形のカメラ、古写真・古葉書、どこかの国の古い腕時計、
医療道具、実験器具、化石・鉱物、昆虫標本・小動物の骨格標本・鳥の羽・卵。など。
暖色電球で照らされた一角には多肉植物・食虫植物や苔が生い茂っていて、
支柱にくっ付いているたくさんのキノコとキノコのフィギュアはもう見分けがつかない。
棚の一番下の目立たない場所に置かれた虫かごでは年中コオロギが鳴き、
さらに隣の虫かごでは、マダガスカルゴキブリがシューシュー威嚇音を鳴らしている。

窓際には黒い革張りの3人掛けソファが置かれていて、両脇には水槽が積まれている。
片側の水槽にはフトアゴヒゲトカゲが入っている。
さきほどのコオロギやゴキブリはコイツの餌だ。
もう片方は、カエルタワー。及び、ベタの水槽になっている。
普段よく見るアマガエルは当然。ペットとして人気らしいベルツノガエル、
アカメガエルやピパピパなどのキワモノ、原色が眩しいヤドクガエルたちもワンサカいる。

室内で最も混沌のオーラが立ち込めているのは中央に置かれた机の上だ。
中央に置かれた文鳥の入った鳥かごを取り囲むよう、机自体の表面が見えないほどに物が敷き詰められている。
一応メインの売り物である本が何冊か表紙が見えるように置かれているのは当然ながら、
地元アーティストの作品から、実体顕微鏡から、地形図から、
作りかけのエフェクターから、店長の永遠に書き終わらない小説の原稿から、
何から何まで置いてあってどこからどこまでが売り物だったのか、もはや誰にも判断がつかない状態だ。
あと、床には絨毯の代わりに、一円にもならなかった店長のクズ原稿が散らばっている。

“ヴンダーカンマー”と言えば聞こえは良いが、
その実、ただ物が捨てられないだけというこの部屋の主は、
入り口左側にあるスペース、小さな机と椅子だけの簡素な帳場に突っ伏して寝ていた。
夢の世界で冒険中の店長の頭の横で背中を伸ばしてシャンと佇み、
このガラクタ部屋の店番をしているのは、黒猫の頁(ページ)だ。
僕がいつものようにポケットから煮干を出して頁の手前においてやると、
「今は勤務中につき頂けませんが、あとで美味しく頂戴いたします。
 サカさん、いつも本当にありがとうございます」
と言うようにペコリと頭を下げる。
首の下をワシャワシャとやってやると、くすぐったそうに黄色い目を閉じてニャンと一鳴き。
その鳴き声に気付いて店長がニャムニャム言いながら起きた。
すると今度は頁がそれに驚き、フシャー!と言いながら慌てて机を飛び降りると、
開けたままになっていたドアから外へと飛び出していった。
頁を逃がした本人は、よだれを拭き、腫れた目をこすりながら、まだ目が覚めない様子だ。

「お、いらっしゃい」
「こんにちは」
「今日は、サカのが早いんやね」
「部活の無い日やから」
「あれ、煮干?」
「頁、逃げました」
「……やっぱ俺、嫌われてんのかなぁ」
「たぶんそうです」
「そこは嘘でも、違うって言およ」

サカ、というのは僕のあだ名である。
本当は、杯(さかずき)という名前なのだが、あまりその名では呼ばれない。
よく、サカ、とか、サック、とか呼ばれる。僕はそれをアメリカのスラングみたいで気に入ってる。
もちろん本名の方も好きだ。下戸だけど。
うなり声を上げてストレッチし、ボサボサと頭を掻いていた店長が、
腰を押さえて「いたたたた」と呟きつつ、のっそりと立ち上がる。

「下でコーヒー買ってくるけど、サカも飲む?」
「うん」
「ブレンドでええよな」
「うん、あ、店長、机貸して下さい」
「ええよ。適当に物どかしといて」

マロンマローン。
1階のカフェに僕の分のコーヒーを買いに行けるほどの儲けはあるのだろうかと、毎度の事ながら心配になる。
次こそ忘れないようにゴールドブレンドを持ってこよう。
店長には物をよけるよう言われたが、何かを動かすと何かが落ちて壊れるのが目に見えている。
ゲームセンターに置いてあるお菓子を取るゲーム機みたいだなぁ、と思った。

学校では名ばかりの考古学部に在籍しているのだけれど、
歴史のほうにはあまり興味が無くて、僕の活動は専ら実地に出ての研究、
特にビルに入っているエレベータの調査を主としている。
部活動だけでは物足りず、いわゆる同好の士が集まる会にも参加し、
月に一度の会合で互いの調査結果を報告しあったりしている。
以前、同好会を見学しに来た店長が「あ……あんなディープな世界があるなんて」と驚いていた。
事故を起こしたエレベータを主に研究している人も居るが、個人的にはあまり好きじゃない。
若さゆえか、と自分でも思うのだけれど、僕は最新の性能の良い物を研究するのが好きだ。
先週、東京で見学させてもらったエレベータの調査結果をまとめようと、
机の下から丸椅子を引っ張り出し、店長の原稿の上に自分のノートパソコンを広げた。

すると、バターンと勢い良くドアが開き、カウベルがカンカローン! と気持ちよく鳴った。
中学校の制服を着た女の子が「こんちゃー!」と元気良く登場。
「……って、あれ? お兄ちゃんだけ? けんちゃんは?」
「店長なら下にコーヒー買いに行っとるよ」
「くっそ、すれちがったかー、何かおごって欲しかった!」
物欲を丸出しにしながら、この混沌の部屋をまるで我が家であるかのようにスタスタと渡ると、
窓際のソファにカバンを放り投げ、自分もその勢いでボスンと飛び込んだ。
この女の子は僕の妹で、猪口(チョコ)という。
チョコが「ページー」と呼ぶと、どこからかニャンと返事が聞こえ、
少し開いていたドアの隙間から、ヒョコッと頁が入ってきた。
頁はそのままトトトとソファの方へと歩いていき、チョコの膝の上に飛び乗ると丸くなった。
「むにゃむにゃにゃー」と言いながら頁をいじくるチョコ。
「チョコさん、ご勉学お疲れ様です。
 思う存分撫でてストレス発散してくださむにゃにゃにゃー」。
乱暴に撫でられているようにしか見えないのだけど、頁はチョコに懐いている。
そりゃもう、店長によりは断然。

マロンマローン、と嫌われ者が戻ってきた。

「おっす、チョコ、いらっしゃい」
「おっすー、けんちゃん、あれやって、あれ」
「あれってなんやねんいきなり」
「ほら、あの、芸人殺しとまで言われた、吉本越え確実、爆笑必至の、ほら……あれ」
「思い出し段階でハードルあげすぎやろ」
「はい、フリに答えられなかった罰ゲームー、ジュースよろしくー」
「もうお前帰れよ」
「ここでわたし帰ったら、お母さん、何て言うかなぁ」
「チョコさん! ジンジャーエールで良いッスか!」

コーヒーを僕の前に置くと、再びトンボ帰りでパシらされる店長。
その背中に「ウィルキンソンの辛い方ねー」と追い討ちをかけるわが妹。
マロンマローン。店長の目から一筋涙がこぼれるのを見た気がした。
母方の祖父母をあまりよく知らないのだけれど、我が家は確実に女系一族だな、と改めて思う。
カウベルの余韻が消えたあとでも、リンリンシューシューコポコポガタガタと、この店はうるさい。
やはり本屋と名乗るのは考え直した方が良いのではないだろうか、
と余計なお世話を頭にめぐらせつつ、調査データをノートパソコンに入れていく。

頁をぶうらぶらとしばらく振り回したのちソファに着地させると、チョコが僕の向かいに移ってきた。
頁はそのまま、ソファに置かれた毛布に潜って大人しくしている。
チョコがなんだか心配そうな顔で切り出した。

「なーなーなー、お兄ちゃん。気付とるとは思うんやけどさ」
「どしたん?」
「けんちゃん、いつもより良い格好してない?」
「……やっぱり、そうやんなぁ」
「髪もヒゲも何となくちゃんとしとるしさぁ……」
「うん……あのさ……昨日、やったよな」
「せやんなぁ……」

十何年も兄妹をやっていると、なんとなくで思っていることは通じ合う。
つまり、一応お世話になっている身分としては店長のことを少しは応援したいのだが、
その本人がこうだと、僕たちにはもうどうしようもないということだ。
僕とチョコは同時に、ムハーッ、と大きく溜息をついた。

マロンマローン。おそらく走ってきたのだろう。
息を切らせて腰を押さえながら、店長が戻ってきた。
やたら爽やかな匂いを撒き散らしている。
そんな、現役高校生男子の僕でもこれはないぞと思うほどの制汗剤の香りで、
部屋の酸素が少なくなった気がした。
鏡でも見てきたのだろうか、いや、歯まで磨いてきてるなコイツは。
さわやか、と本人は思ってるけど実のところ引きつっているようにしか見えない笑顔を、
当て所なく無駄打ちしながら、胸ポケットからハンカチを抜いて額の汗を拭いた。
待ってくれ店長、なんだ、店長、ハンカチなんて持ってどうした。
いやいや、それ以前に、そのジンジャーエールと一緒に右手に持った、一輪の花はなんなんだ!
俺、どう? っていうドヤ顔で僕たちのリアクションを伺うのは止めて欲しい。
チョコと、どちらがいくかというアイコンタクトを交わした後、
今回は僕が折れた。つまり店長に泣かれるのは僕ということだ。めんどい。

「えーっと、店長、」
「お、どした、サク」
「あの、もしかしてさぁ、」

と僕が腰を上げかけた瞬間、
ビタン!ガツーン と今日一番の勢いでドアが開き、
カラン!カララーン! カウベルの音が、これが正解ですぞーという音で鳴った。
このベルをここまで鳴らせる人物は界隈に1人しかいない。

「たのもー!!」

僕とチョコの、母が登場した。

「母さん、ここ、道場破りするほどの店とちゃうから」
「そう?」
「うん、お母さんもう既にこの店のオーナーみたいなもんやからさ」
「じゃあ、けんちゃんは雇われ店長ってわけね」
「無給で」
「いや、チョコ、それは店長じゃなくて奴隷やで」
「え!? 何か違った?」
「杯、けんちゃんって……何なんだっけ?」
「母さんまで、乗らんといてや」

勢い良く開けられたドアで後頭部をしこたま打ち付けた店長が、
そのまま額まで棚にぶつけて、呻きながらうずくまっている、
ことに関して、僕たち3人は完全にスルーを決め込んだまま会話を回した。
家族って、良いなぁ。

「いてて、ってってー、なーんちゃってー、あはあはは、いらっしゃいませ」

頼む、店長、ここは空気を読んで黙っててくれ、という僕の思いもむなしく、
先ほどからさらに一段口角の上がった気持ちの悪い笑顔を作り、
いや笑顔というかもはや変顔を作り、店長が母に声をかけた。

「あのえーっとそのぅ、」
「ん? なんじゃらほいなー」
「お、おっ、お、お誕生日おめでとうございます!」

ビャッとすでにボッキボキに折れてしまい完全に萎れた一輪の花と、
ついでにジンジャーエールの瓶を母の方へ突き出した店長の、
どもりかつひっくり返ったどうしようもない声が、
店中に置かれた物たちに吸い込まれるまでの間はまるで永遠に近い時間だった。
毛布から顔を出した頁が、にゃあ、と鳴いた。永遠は終わった。
マダゴキたちは動き、コオロギも鳴き、水槽のポンプが泡を吐き出し、
母は返事をした。

「けんちゃん、私の誕生日、昨日」
「あがっ!!?」

店長は妙な音を発するとそのまま固まった。一方の母は慣れたもので、
「昨日来たとき何も言ってくれなかったから、絶対忘れてると思ったのにー!」と呵々大笑だ。
そんな子どもみたいな大人たちを見て、僕とチョコはふたたび、同時に盛大な溜息をついた。ムッハーァッ。
チョコは立ち上がると固まったままの店長の手からジンジャーエールを引き抜いた。
毛布から出てきた頁が呆れたように大きく伸びてあくびを、ふにゃああ。



クラムボン 「Re-雲ゆき」



  

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日記 (619) 作り話 (25) 

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このブログのタイトルは OFZK です
ソントン という人間が書いています
だいたい本を読んでいます





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