20140829 Fri
久しぶりにジャズのライブへ行きました


川下直広トリオ+のライブへ行ってきました。
なってるハウス(合羽橋)
なってるハウス、職場が入谷だったときには何回か行ってたんですけど、
ずいぶん久しぶりになってしまいました。

川下さんはこういう方です↓

“ある本”っていうのは確か、
田中啓文『聴いたら危険! ジャズ入門』 (アスキー新書)
だったと思います。
ちなみにこの川下さんの紹介文を書いてるのは、
田中さんではなく、バリトンサックス奏者の吉田隆一さんです。



僕は、川下さんのことを、渋さ知らズのライブDVD『天幕』で知りました。
僕は渋さが演奏する「Naadam」という曲が大好きなんですけど、
このDVDでは、はじめのテーマのあとスローテンポのまま、川下さんのソロが入ります。
それが、ものごっつカッコ良いんですよ。
初めて聴いたとき、ほんとにシビビビビッと痺れました。っていうか何回聴いても痺れる。
バックでベースを刻む高岡大祐さんのチューバも良い!
灯篭に火が灯っていく絵に重ねられて、すごく好きな映像です。何百回と観ました。

それからずっと、川下さんのライブにはいつか行きたいと思ってたんですけど、
なってるハウスでは土日が多くて、
川下さんが昔やってたバンド、フェダインのCDなど聴きつつ、これまでは見送ってました。
そんななか、何かに導かれるように、久々になってるハウスのホームページを開くと、
行ける曜日に、川下さんのお名前が!
とうとう時機がやって参りました、というわけ。

メンバーは、ベース不破大輔さん、ドラム岡村太さん、ピアノ山口コーイチさん。
どなたも渋さ知らズや何やらで何度も拝見しております。
特に不破さんがは、出演されていた数日前のDOMMUNEで観たばっかだったので、
ライブハウスに入ってお姿を見た瞬間、なんか、芸能人にでも会ったような気分になりました。

20時を少し回ったところでスタート。
1部は川下さんのハーモニカから始まりました。
たしか、3曲を演奏して終了。
目の前で川下さんが演奏しているという事態が信じられずに、あまり記憶に残ってない。
俺、緊張してた、たぶん。

休憩中にはライブハウスから、スイカが振る舞われました。美味しかった。
あと、ドラマー・のなか悟空さんが、
ドラムセットと共にアフリカをツアーをした際のお土産と写真が展示されてるんですけど、
「好きなもの、持ってってください」と太っ腹。

2部は、いきなりド有名な『Only you』から、
サッチモの『What a wonderful world』、
そしてなんと、『Naadam』

テーマが始まった瞬間、きゃああああああ!、って叫びそうになりました。
ホント嬉しかった。ホントーーーに嬉しかった。
1部2部、ひたすら感動して、あっという間に終わってしまった感じ。
ずっと聴いていたかったです。

終わったあと、悟空さんのアフリカ土産をひとつだけ頂き、
(ピアノの山口さんに「全部持ってっていいよ!」って言われたけど)
オンリーユーを口ずさみながら、小雨振るなか自転車で帰ってきました。
また日程が合ったら絶対に行こうと心に決めた。
とか思ってたら、……来月も行けるっぽい。やったぜ!
普段CDばっか聴いてるんで、もっとライブに行かなきゃね。
いや、そもそももっと色々な場所へ行かなきゃ!



川下直広(ts)トリオ@yokohamaエアジン2010

今日の1部、ハーモニカで始まった曲がこれ。『ナポリタン』っていう曲名らしいです。




20140827 Wed
夏休みだって、海を見に行くつもり


↓桐村さんの素敵なイラスト

(復習)
放課後、海を見に行くつもり
放課後、海を見に来たけれど



↓ソントンさんの蛇足なテキスト


少し前のことを思い出してみよう。
夏休み直前。場所はいつもの旧図書準備室。

放課後、部活の無い日でも、私は部室である旧図書準備室へ行くことにしている。
今年の読書感想文はなににしようか。せっかくだし、少し難しそうな本に挑戦してみよう。
などと考えながら、たてつけの悪いドアを開けると、
先輩が、扇風機の風を独り占めしていた。
スカートの前をめくり上げて。
見事なまでの痴女プレイだ。まあ、相手は扇風機なんだけど。
私が来たことに気付いても堂々と続行される痴女プレイ。

「おっすー。……ん、なにその冷たい目」
「今年の夏、一番バカな生き物を見た気がします」
「えっどこどこどこどこにいるの?」

残念ながら、バカには日本語の微妙なニュアンスが伝わらなかった。
先輩はそのまま自分以外の何者かを探そうとキョロキョロしながら、
スカートからシャツを引っ張り出し、裾を持ってパタパタと扇風機の風を入れはじめた。
横目でそれを盗み見ながら、来世は絶対に扇風機に生まれようと固く心に刻む私。

このまま見ていても目のやり場に困るだけなので、
棚から本を選ぼうと試みるが、視線は背表紙の上をつるつる滑っていく。
ストリップの続きが気になるという理由ももちろんあるが、
なにせ暑い。暑すぎてほとんど集中できない。
先輩が扇風機に色仕掛けを試みるのも分からないでもないのだ。
旧図書準備室は校舎のはずれにあり、校内でも一・二を争う古い部屋である。
クーラーなんていう文明の利器は当然ないし、おそらく壁や天井に断熱材すら入っていない。
この部屋で心地よく過ごせるのは年に2ヶ月ほどのことで、あとは暑いか寒いかのどちらか。
特に夏冬のピークには地獄と化す。いまがまさにその時期で。
室内に陽炎が立った、逃げ水が見えた、サボテンが爆発した、
コップ一杯の水が一瞬で蒸発した、窓のサッシで目玉焼きが焼けた、
などなど、伝説には事欠かない。
天井を赤ん坊が歩いていたという怪談も伝わっているが、
暑さのあまりの幻覚が原因だろうと、部員の意見は一致している。


ジャンワンワンワワワー ジャンワンワンワワワー

窓から見えるケヤキの大木。
木陰が涼しそうではあるが、あの下に行ったら10秒で逃げ出したくなるような音量で、
セミが大合唱している。高音がキツめのノイズギターのようだ。拷問に使えそう。
暑いしうるさいしで集中できず、読んでいた文庫本をついに机に放り出し、
窓際のソファで世界一だらしない格好を晒している先輩に声をかけた。

「先輩、いつまで扇風機独り占めしてるんですか、首振りにしてくださいよ」
「はいはいわかったよ、ポチッとな」

   カチ カチ カチ カチ   カチ カチ カチ カチ

「カチカチうるせえ! 首振りにしてもあんたが両サイドから押さえつけてたら意味ないんですよ!」
「え? じゃあ、こう?」
「持ち上げるな持ち上げるな! 台の部分がめっちゃスローテンポでツイストしてるみたいになってるじゃないですか!」
「なにじゃあどうすればいいっていうの!?」
「普通に置いて、こっちにも風を回してくれればいいんですよ」
「あんたさ、無理矢理首振らされてる扇風機の気持ち考えたことあんの!?」
「扇風機に気持ちなんてねえんだよ! いいから振ってください」
「快晴の日とかけまして」
「はい、快晴の日とかけて」
「性格の良いイケメンとときます」
「性格の良いイケメンととくそのこころは」
「どちらも、ふられることはない、でしょう」
「うまい! 山田くーん、シロさんに座布団1枚ってなんで謎掛けはじまったんですかー!!」

暑い中、いつもの調子でボケツッコミをするとバテるという単純な事実に、
3分後の我々は、バテてから気付いた。結局、二人ともバカだった。
沈黙を蝉の大合唱が埋めていく。
私はパイプ椅子で、先輩はソファで。
蝉の抜け殻を表現する競技があったならかなり良い線いくんじゃないかという魂の抜けっぷり。
三年寝太郎も土下座で謝る勢いでダラダラしていた先輩がめんどくさそうに口を開いた。

「そういえばさー、お盆ってひま?」
「何が、そういえばさー、なのか分かりませんがお盆ですか」
「そう、ひま?」

頭の中のスケジュール帳をパラパラとめくる。
私が所属する文芸部は毎年、秋の文化祭に部誌を出すことになっている。
そのため夏休み中には、文章を書くことはもちろん、それ以前の編集会議もしなければならない。
夏休み前半は週に一回で集まり、テーマやページ割り振りを決めて、
後半になるにつれて責任の擦り付けあいになり、最後には逃げだす者までいるので、
早く書き終えた者が泣きながらページの水増しを担当する、というところまでが毎年の恒例行事だ。悪しき。
私はどちらかというと水増し担当なので、時間が足りないことはあっても余ることはない。
そんな部活のほかにも、学校で行われる補講や塾の夏期講習、両親の田舎への帰省もあるだろうし。
学生という暇な身分であっても、夏はなんだかんだ色々あるのだ。
そういうわけで、いくら先輩の頼みといえども内容によっては断ろうと考えた。

「なんか用事ですか?」
「海の近くの親戚んちに何泊かするんだけどさ、よかったらミトもいっし」
「行きます」
「へ?」
「是が非でも行きます」
「いや、日程とか聞かなくてもいいの?」
「何言ってんですか空いてますよ。こじ空けますよ」
「あ、うん、だったらいいんだけど」

部誌? 補講? 夏期講習? 帰省?
ははは、笑わせてくれるわ。そんなもん枝葉末節些事些細である。
断言しよう。先輩との旅行のほかに大切なものなど何があろうかいやない。
頭の中のスケジュール帳は全力で閉じた。そして破り捨てた。
文芸部秘技 <見ないふり>!!

「で、日程なんだけどさ」
「いつでもどれだけでも大丈夫です」
「……あの、もしかしてミトって寂しい人なの?」
「哀れむような目で見ないでください」
「でもありがとう、助かるよ」
「助かる?」
「あいや、こっちの話、うん」
「ところで、海、って言いましたよね?」
「うん。水着も用意しとけよー」
「はいっっっしゃあああっ!」
「おぉ、なんだか元気良いなぁー」

ニシシと笑う先輩はいまだソファの上でダルダルしているが、
今すぐに机の上に立ち上がって『あの鐘を鳴らすのはあなた』を
物真似つきフルコーラスで歌いだしてしまいそうなほど私のテンションはぶち上がっていた。
しかしさすがに女子高生が素面でそんな真似をするわけにはいかないので、
心の中のお立ち台で大勢のジュリアナギャルを踊らせておくにとどめる。

夏。旅行。お泊まり。海。水着。

これはもう、フラグが立っちゃったと了解してしまってもいいのではないでしょうか。
私の中のジュリアナギャルたちは全員アルタスタジオで「いいともー!」と絶叫している。
しかしジュリアナギャルは大勢いるが、残念ながら私は1人だ。
お盆周りのスケジュールを空けるため、全精力を注いで課題と部誌制作に取り掛かろう。
暑いなんて言ってる場合じゃない。早速他の部員たちと日程を合わせて会議を行なおう。
いや、今すぐやろう。めんどくさいなんて言ってられない、私が仕切る。
ああっ、魔方陣が書けたら! 魔方陣を書いて今すぐここに部員たちを召還できたら!
いやいや、いっそ私だけでやってやろうか。A4で400ページ、私だけで埋めてやろうか。
そうかそうか、そうすれば良かったんだ。あとはあれだな。徹夜だな。
まだ若いし、カフェイン入れて、なんだったら今話題の危険ドラッ

「っていうかさ、扇風機、首振ったところでさあ」

上がりすぎたテンションが迷走を始めたところでやんわり止めてくれる先輩。さすがだ。
先輩の両手からようやく開放された扇風機は、ゆっくりと首を回しはじめ、
私の腿のはじっこあたりに当たるか当たらないかの微かな風を送るところで止まり、
そしてまたゆっくりと先輩の方へと戻って行った。

「と゛ーど゛ーか゛ーな゛ーい゛ーよ゛ー」

愛しの扇風機を再び両手で挟み込む先輩。ほんとうらやましいな扇風機お前。
しかし言われてみればそうだ。いつも先輩が独占するままになっていたので今の今まで気付かなかった。
180度近くも扇風機の首が回るわけない。
ジャンワンワンワワワー。
馬鹿にするような蝉の声が部屋中に響いた。ちょっと落ち着いた。
そうか、私を差し置いて先輩は扇風機とべったりか。
いいよ今は君に先輩を譲ってあげるよ。
そのかわり、私は旅行先で先輩とべったりするけどな!
とかなんとか邪なことを考えていると、

「ミトがこっちくればいいじゃん」
「はい?」
「ほれ」

たれぱんだ女子高生版の姿勢から座りなおして、ぽんぽんとソファの隣を叩く先輩。
なんだ、これは。罠か? 暑さのあまりの幻覚か?
そうだろう、夏のこの部屋は赤ん坊が天井を歩くくらいなんだから。
茶色の革張りソファは、今まで先輩が寝ていたからか、
ほんの少し、あたたかかった。

「いらっしゃーい」

顔は見えないけど、隣で先輩が楽しそうに笑っているのが分かった。
肩が触れている。ソファの座面がくぼみ落ちるから、離れることが出来ない。
気付けば、変な皺がつくくくらい、スカートを握り締めていた。
なんとなく、机の上に放り出したままになった文庫本を見ていた。
扇風機の羽は回っていたけど、風は全然感じなかった。
けれど、すごく暑いなんてこと、もうどうでも良かった。

それは今より少し前のこと。夏休み直前のことだった。


YASUKO - 9月の海はクラゲの海

(Original by ムーンライダーズ)




20140822 Fri
ブログ更新が少なくなるターン


少し前にライトノベルの『狼と香辛料』を全17巻ひたすら読むって時期があったんですが、
(ただただ、読んだ、っていう報告ばっかりで感想すら書かなかった時期ともいう)
もうひとつ、完結してるのに途中までしか読んでないラノベがあったのを思い出しまして。

西尾維新『刀語』シリーズ


読み始めました。読み始めてしまいました。
いま手元に3巻まであります。
全12巻、一気に行きます。
とりあえず1巻は読みました。
1巻はまだまだエンジンかかってない感じです。
西尾節もそんなに吹かされてません。
もう少し進むと、ヒロイン・とがめ萌えが加速していきます。
(以前、たしか6巻くらいまでは読んだのです)
最終巻のオチは全然知らないんですけど、
僕は、西尾さんは戯言シリーズから入ったクチですので、
たぶんラストで、とがめ、死ぬなこれ
と思ってます。
(戯言シリーズにおける萌えキャラ殺しはスゴイ)
アニメも観てみたいです。余力があったら。


音楽では最近ジョン・コルトレーンをひたすら聴いています。
ジャズに興味が出始めた高校の頃、
某本でオススメされてた『バラード』から入って、
「……よく分からん」と思って以来、ずっと敬遠してました。


けど、図書館のジャズCDを片っ端から借りて聴いていくなかで、
同じくオススメに取り上げられることの多い『至上の愛』を聴き、
何これ、めっちゃカッコエエやん!! と衝撃を受けました。


『バラード』に比べると、『至上の愛』は尖ってる印象で。
『バラード』を聴いた頃に比べれば僕も音楽を聴いた量が多くなって、
許容範囲が増えたってだけかもしれないけですけど、
『至上の愛』1曲目がスピーカーから流れてきた瞬間、「うおっ!」って反応しちゃいまして。
これはいよいよコルトレーンを聴かんといかんぞ、と。

で、色々とコルトレーンを聴いていってるなかで、今のところ一番好きなのが、
オラトゥンジ・コンサート

これ、ホント、最高です!!
コルトレーンが亡くなるおよそ2ヶ月前の録音。
個人的にサックスは荒々しい音が好きなんですが、
このCDで聴けるテナー(ファラオ・サンダース)は、
歪みエフェクター通してんじゃねえのか、って思うくらい荒々しいです。
もち、コルトレーンも凄まじい。っていうか、バンドのテンションが爆発しちゃってます。
スピーカーが「ドッカーン」って言いましたから。
ちょっとこのCDは格が違うぞ、と思いました。
あまり取り上げられることがないので、ここでオススメさせて頂こうと。

余談ですが、どれかのCDの日本版ライナーノーツに、藤岡靖洋って方が文章を寄せてて、
プロフィールに“ジョン・コルトレーン研究家”って書いてありました。
おいおいそれはちょっと言いすぎだろぷーくすくす、って思ってネットで検索してみると、
すげえレベルでコルトレーン研究家でした。
疑ってかかってすみませんでした。



John Coltrane Ogunde 前半

音量注意。1曲28分あります→後半へ続く




20140821 Thu
終わりはくるもの


たしか先週くらいに知ったんですけど、
シルヴィ・ギエムが2015年で引退するぜ、と。
http://www.vogue.co.jp/lifestyle/news/2014-08/19/nbs
とか言って、観たことないんですけどね。

来週、東京バレエ団の50周年に出るみたいなんですが、
そんな急に言われましても、ってな感じで、
さすがに行けない。行きたいけどさー!

東京バレエ団、今回はなんと、三重も回るらしいですね。
いつの間にかすげえな、三重。
今年は甲子園も三重高ベスト8だし。
頑張れ三重。負けるな三重。え、何に負けたんだ?

東京は色々な物が多すぎて、クラクラします。
閉館になるっていう名画座やら、今週で終わりっていう展示やら。
けど、終わるから、っていうのだけを理由に行くのは、なんか寂しいし、申し訳ない。
俺みたいなミーハーが行って、本当に行きたいって人が行けないのは違うだろうし。

じゃあ俺は、何が終わるときだったら飛んで行けるんだろう。
新宿のジュンク堂が閉まるときは飛んでいったなぁ。
神戸の海文堂書店が閉まるときも飛んでいったなぁ。
あ、なんだ、そういうことか。


Sylvie Guillem - Boléro

かと言って、なんにもしないのも悔しいので、YouTubeウォッチング。
人の体って、信じられないくらい、動くのね。




20140820 Wed
花を


↓桐村さんの美しいイラスト


↓怒られるまでやってやるっての


今日も、目が覚めた。
目覚まし時計に頼らず起きられるようになったのはいつのことだったろう。
ゆっくりと起き上がると、背を伸ばした。
体中からミシミシと嫌な音が響く。
長く吐いた息は、深呼吸だったのか溜息だったのか、自分でも分からなかった。

カーテンを開ける。外はまだ暗い。
見上げるともう月は無く、空はカラスの目のような色だ。
早起きの鳥が鳴くのが聞こえた。
今日も天気は良さそうだ。昼にはきっと暑くなるだろう。

僕は早朝の時間が一番好きだ。
空が黒からだんだんと淡く青くなっていく。やがて太陽がまた昇るだろう。
代わり映えしない一日が始まると知っていても、それは神秘だ。
レースカーテンだけを再び閉める。
サイドテーブルに置いたメガネを手に取り、洗面所へと向かった。



寝巻きと見分けのつかないような普段着に着替え、階段をのぼる。
手すりを掴んで一歩一歩ゆっくりと。
それでも少し息があがってしまった。
自分の体のままならなさに思わず苦笑いだ。
左手には、切花を持っている。折れてしまわぬように、そっと。
僕は花の名には詳しくない。白い、可愛らしい花だ。
2階のカーテンの隙間から差し込む朝日に、
舞い立ったホコリがキラキラと輝いている。

ずいぶん昔に行った映画館を思い出した。
かかっていた映画は、貧乏な若い男が二人、
田舎へと休暇を楽しみに行くのだが、
結局散々な目に会うという、どん詰まりな内容だった。
何においてもデジタル化が進んでいたあの頃、
その映画館は頑なにフィルムで上映することを旨としていて、
昔気質の映画ファンには人気の映画館だった。
しかし、入居していた駅ビルの取り壊しと同時に閉館。
あの映画館に入り浸っていた、落ちぶれた、という形容がぴったりの男たち。
再開発ですっかり綺麗になった駅の周りには、もう見当たらなかった。

ようやく2階にたどり着き、カーテンと、ついでに窓も開けた。
朝の涼しい風に、幻想の映画館は吹かれて消えた。

2階の端、もとは物置だった部屋。
カーテンを閉めておけば、夏でも涼しく薄暗い部屋の角に、
彼女は居る。

白いブラウスに芝生色のカーディガン。
小さい花柄が散りばめられた紺のロングスカート。
まるで昔の映画に出てくる、田舎娘のような格好だ。
しかし、大きめの一人掛けソファに深く座り、
少し上を向いた顔は、この世のものとは思えない美しさ。
どんな女優だって敵わないだろう。
軽く閉じられた目。意志の強そうな少し太い眉。
長い黒髪は綺麗にあげられて、すらり白いうなじがのぞく。

その首には太いコードが接続されていて、
アームレストに置かれた左手からも細いコードが何本か生えている。
コードはそれぞれ、壁のコンセントや、傍らのパソコンに繋がっている。
パソコンをスリープモードから立ち上げた。

<Enter your ID and PASS>

促されるままキーボードへ、すっかり覚えたそれぞれ12桁の英数字を入力する。
いくつかの小さな電子音。HDと冷却ファンが回り始める。
1分ほどして、彼女の目が開いた。
大きく黒い目が、僕を見る。

「……はじめまして、ご主人様」
「おはよう、アムリタ」
「アムリタ?」
「君の名前だよ」
「かしこまりました」

いつもと同じ挨拶を済ませながら、コードを外していく。
彼女のバックアップが上手く保存されなくなったのはいつのことだったろう。
サポートセンターはおろか、彼女を制作していた会社すら、とっくの前になくなってしまった。
考えたくもないが、いつか老朽化によって、これ以上のトラブルが起こるだろう。
起動させずに置いておくのが一番だろうが、それももう無理な話だ。
彼女がなくては、僕はまともに生活がおくれない。

動作が安定し、やがてソファから立ち上がった彼女の髪に、そっと花を差した。

「どうなさいましたか」
「似合うかと思って」
「ありがとうございます」

柔らかい笑顔。殺風景なこの部屋が一瞬明るくなったように思うほどの。
そんな君の髪に、皺だらけの僕の手は似つかわしくないような気がして、
さっさと手を引っ込めた。

「なにか御用はございますか」
「朝ごはんにしよう」
「かしこまりました」

プログラムされたとおりに、君は僕の少し前に立ち、待つ。
その細い肩に手をかけると、機械らしい精密な動きで、
部屋の外へ、階段へ、階下へと導かれていく。
僕が咳をすれば止まり、こちらの呼吸や心拍数に合わせ、歩くペースを変えてくれる。

アムリタ、君はいつまでも変わりなく美しいままで。
僕はすっかりおじいさんになってしまったね。

今日もまた代わり映えしない一日が始まる。
朝ごはんはトーストにゆでたまごとサラダだろう。
片付けが終わったら洗濯と布団を干すのをお願いしよう。
昼ごはんは食べられない。もうお腹が空かないのだ。
掃除を終わらせたアムリタに、また話を聞いてもらおう。

読んだ本のこと。観た映画のこと。行った場所のこと。
君を家に迎えた日のこと。
始まってしまった戦争のこと。
死んでしまった妻のこと。
いつもの話だ。けれど全部、まだ君の知らない話だ。

いつもの話をしようアムリタ。君がいなくなってしまう前に。
いつもの話をしようアムリタ。世界が終わる5分前に。



Gregory and the Hawk - Doubtful




20140819 Tue
珍物食 加賀屋 @新橋


以前、メンバー募集してましたが、ついに、
新橋最凶の居酒屋「加賀屋」へと足を踏み入れてしまいました。
http://www1.ocn.ne.jp/~kagayayy/main.html
BvaPuRBCQAA2_Jn.jpg

他の有名どころのレポート↓
東京でもっとも狂気にみちた居酒屋「かがや」【新橋】」 (東京別視点ガイドより)
新橋の異常な居酒屋「加賀屋」へ突入」 (デイリーポータルZより)


以下、俺の見たもの。

「ヤッホー茶漬け」「軍国酒場」などと、
今年の夏はやけに珍物食づいてる僕。
しかも、食べ物がゲテモノっていうパターンではなく、
店が変わってるっていう方のやつ。
今回の加賀屋もまさにその筆頭。
東京では間違いなく最強かつ最凶かつ最狂。
ネズミーランドが束になっても勝てないかもしれない、
っていうくらいの破壊力をもつ、居酒屋、
いや、あれはもはやテーマパークでした。

火曜夜、新橋駅に集合した精鋭たち。
前回のウーパールーパー会から連続の人もいれば、
今回がはじめましてという方まで。
とにかく、とてもイイ顔した人たちでした(根本敬的用法ではなく)。
みんな目がキラッキラしてた。……変だよ、みんな。

駅から徒歩3分くらいで加賀屋着。
上に載せた画像が僕らを地下へと導きます。
奥のテーブルには他の団体さんが。
その横にドッシリと立つ名物マスターと、
奥の厨房からフロア内の様子を、スナイパーの如く見張る謎の女性。
インターネットで集めた事前知識もあり、
今回はなんと加賀屋経験者(今回で4回目)という心強いメンバーを共にしていた我々だったが、
やはり本物から立ち上るオーラを前にたじろいでしまったことは否めない。
何も始まってないのにニヤニヤが止まらなかった。

まずはオシボリの儀である。
「それじゃはじめさせてもらいますー」というマスターの声で、
人数分のオシボリを頭の上に載せた、アンパンマンが動き出した。
もう、何を言ってるか分からない人もいると思う。
だって俺ももう何を言ってるか分からないもん。
ありのまま起こったことを言ってるだけだもん。
「なんのためーにうーまれてー」
とマスター満面の笑みで全力で手拍子、アンパンマンのオープニングを歌いながら、
突然、
「キミのことだよー!」
といきなり客に絡む。
「キミもだよー!」
と、向こうでゆっくり飲んでいた別グループのお客さんにも絡む。
マスターの接客はとても公平だ。
そして歌は後半なぜか『大地讃頌』に変わっていた。
ちなみにこの時点で笑いすぎて、我々のHPの3分の1は減っていた。

オシボリを配り終わったあと奥へ飛んで帰って行ったアンパンマンの代わりに、
食べ物と飲み物のメニューが供された。
メニューとは言っても、ジャポニカ学習帳に、クレヨンで手書きしたものである。
“気持ちを込めてメニューを読まないとオーダーが通らない”というシステムというのは知っていたため、
とりあえず、じゃんけんで負けた代表者に、辱めを受けてもらうことにした。

「マスター! やっと仕事終わったー。おなかペコペコなんだ、おいしいもんたくさんたべさせてよ、お願い」
(※注:食べ物のコース名です)

……ダメ、ぜんぜん伝わってこない

やっぱりかー、と苦笑いで肩を落とす我々。
そんな我々を見て、マスターは厨房の奥までスタスタと入っていき、

「ダメだよ、まずもっと声張らないとさ、ほら、ここまで届くように、もう一回」

なんかこれ役者やってたときに見たことあるー!
とりあえず、トライアゲイン。

「マスター!」
「おっ、何、どうした?」

急にフレンドリーな態度になり、近寄ってくるマスター。

「やっと仕事終わったー」
「お疲れ!」
「おなかペコペコなんだ」
「そうなんだー」
「おいしいもんたくさんたべさせてよ、お願い!」
「んー、オッケー分かった!」

オーダー通ったー!!

拍手喝さいである。
まだ何も始まっても無いのに拍手喝さいである。
この時点で、そうだな、体力ゲージは真っ赤になってましたね。

各自、飲み物もオーダーした。
しょっぱなから加賀屋のオリジナルドリンクである地底人を頼もうとしたツワモノもいたが、
2杯目以降でないとオリジナルドリンクは無理とのことだった。
ローカルルールだ。覚えておけ。

「ではドリンクの持ってきかたも決めてください」

マスターにそう言われ我々はどよめいた。
そう、加賀屋はテーマパーク。
飲み物が普通に出てくるわけがない
ドリンクメニューの隅には、
<日本・アメリカ・中国・フランス……>
など、国名が書いてあり、各国のスタイルで飲み物を持ってきてもらえるのだ。
全員で慎重に討議した結果、

「では、ブラジル、でお願いします。」
「はいー」

談笑すること5分くらいだったろうか。
厨房カウンターの隅に置かれたコンポ、
何に使うんだろうかと、入店時から気にはなっていたのだが、
そのコンポから突然、爆音でサンバが流れ始めた。

そして頭に、赤いタコのぬいぐるみみたいなのを乗せたマスターが、
完全にドラッグを決めたとしか思えないテンションで登場し、

「あ゛ーーーーーっ!! あ゛ーーーーーっ!!」

と奇声を発しつつ、
お祭りの夜店で売ってるような、紙の伸びるオモチャで、
なんと、我々を攻撃し始めたではないか!
オデコに、頬に、当たりまくる伸びるやつ。
その攻撃を爆笑しながら甘んじて受ける我々。
おかしい。絶対何かが間違っている。

っていうか、あんなブラジル人、いねーよ!

そんなこんなのアトラクションを楽しみつつ、無事にドリンクは到着。
とりあえず乾杯をしていると、マスターがトレイを持ってきた。
トレイの上にはキン消し(知らない人はお父さんに聞いてね)のような、
ちっちゃいフィギュアがたくさん並んでいる。
「どれでも好きなの選んでください」
というマスターの声で、それぞれお気に入りのものを選び手元に置く。

そうこのフィギュアが、箸置き(加賀屋スタイル)なのである。

ただ、これだけで終わる加賀屋じゃない。
「はい、じゃあ置きますね」
というマスターの一言とともに、人数分の小芝居が始まるのである。

・お弁当箱の形をした消しゴム
ご飯に乗っている梅干を取り、本体の弁当箱ではなく、そっちに箸を置く。
我々「そっち!? 本体は!?」

・カエル
目に突き刺さるように置く
我々「痛い痛い!」

・クリリン
「クリリーン、大丈夫か!? クリリン! クリリーン!
 くそっ、かーめーはーめー波ーーー!!」
なぜかクリリンが倒れる
我々「クリリン死んじゃった!」
そしてカエルも倒れる
我々「影響!!」

爆笑の間にいちいちツッコミをいれるので、もはや酸欠に近い状態になってきた。
笑いすぎで頬と腹筋に痛みを感じたのは久々だった。

途中の何体かは割愛して、
最後の箸置きはポケモンのゼニガメだった。

・ゼニガメ
「ガメッ!ガメッ!……ガメェ~」
ヘロヘロと倒れ込むゼニガメ
「ゼニガメッ!大丈夫か!」
我々「誰だ誰だ(ざわざわ)」
「ガメェ~サトシ~」
我々「サトシだ!」
「くそっ、むむむ、きえーい! ビビビビビ!」
と怪鳥音をあげて、フリーザが指から気功波を打つ仕草をするマスター。
そしてそのレーザーが当たるゼニガメ。ゼニガメ震え出す。
ビシュウィン! という効果音とともにマスターが懐から何かを取り出した。
そして我々の目の前では、

ゼニガメが、カメックスに進化していた。

「進化した! 進化したー!」
「サトシ、なんかキャラ違くね!?」
「指から変なの出てたし!」
「カメール素っ飛ばしてカメックス!」

など、もはやツッコミの大渋滞が起こる中、無の顔で厨房へと戻るマスター。
あれが真のエンターテイナーってやつか。

料理は待つことなくすぐに出てきた。
いかにも“家庭料理”と言った感じで量もたくさん。
メンバーからは、
「美味い。実家だ」
「うん、実家だ」
という感想が自然とこぼれた。


飲み物もなくなり、第二オーダーである。
ここで思い出して頂きたい。
マスターのオーラに押されっぱなしではあるが、
我々は珍しい物を食べる会、である。

「じゃあ、宇宙人」 (一億円のオリジナルドリンク)
「地底人」 (時価)
「埼玉県人を」 (マズイ)

よりによって、そこ行くか。
一応、マスターからも確認された。

「埼玉県人はホントにマズイですけど、大丈夫ですか?」
「大丈夫です!」

ちなみに埼玉県人を頼んだバカはもちろん、俺である。
1億円のドリンクを頼んだメンバーはしれっと、

「たぶん、誰かを置いていけばOKです」

と言ったので、オーダーでも辱めを受けたメンバーを、
「キミには一億円の価値があるんだ」
と説き伏せ、いざとなったら人身御供としておいていくことにした。

・地底人
オモチャの樽型ジョッキに注がれた謎のドリンク。
持ち上げるとセンサーが反応して、
「イエイ!イエイ!」と一気コールが始まり、とにかくうるさいことこの上なし。
色が見えないのでよく分からなかったが、
味は、メンバーの1人が言った、
「トイレの芳香剤じゃね?」
というのが的確だった気がする。
ケミカルな青リンゴっぽかった。

・宇宙人
Dakaraの小便小僧のサーバーに入った謎のドリンク。
僕は飲み忘れてしまったため、味は分からない。
が、色は完全に尿色だった。
最後の方は出が悪くなるのもまたシュールで良かった。
1億円だけあって、4・5杯分はあったように思う。

・埼玉県人
大きめのショットグラスに入った謎のドリンク。
ホントにマズかった。頼んだことを後悔した。
おそらく安い焼酎に、唐辛子と、醤油か、なにかのタレを入れたものだと思う。
まず辛さが来て、次に薄まったタレ独特の不味さが来る、というダブルパンチ。
氷が解けるのを待ち、充分薄まったところで飲みきった。

ちなみに、これらのドリンクの持って来かたは、日本、でお願いした。
再びコンポからは爆音で、和モノな曲が流れて、

マスターがあまりに完璧な日本舞踊を披露してくれた。

本当に完璧だったので、いよいよこの人が何者か分からなくなってしまった。

今回のメンバーには生物の研究をしている人や、
動物の骨を使った作品をつくっている人、
変な店巡り・ゲテモノ食・昆虫食をしている人などが集まったため、
話題も自然とそっちの方向に転がっていき、

最終的に渡された伝票には、



s_kagaya.jpg

はい、虫が好物です。
黒ゴキブリとか、うじとか、ダニとか、
はい、もちろん、エボラ出血熱の
感染源は私ですよ…
はやっちゃてますねー。
¥1億22628

と書いてあった。
話、盗み聞かれてるー!!
(エボラのくだりは、コウモリを食べると危ないって話のときに出た)

ってか、マジで1億請求されてるー!!

どうする!? やっぱ人身御供を置いて、あとは逃げるか!?
とドヨドヨしていると、加賀屋経験者のメンバーが、

「じゃ、1人3500円でお願いしますー」

と、1億円完全無視で割り勘
本当に経験者がいてくれて良かった、と心から思った。
とりあえず22628円を払うと、

「あれ? あと1億円は?」

とマスター。

「え? 払えない? 払えないって言われてもさー、こっちも商売なんだから、困るよ」
「すみません、この人、置いてきますんで」
「あ、そう? この子? じゃ、まあ、しょうがないな。
 いいよ、他の人は帰ってもらって。
 じゃあキミは、閉店したらゆっくり、ね、色んなプレイを、ね」

1億円を盾にセクハラを迫られるメンバーを置き去りに、
そそくさと退店する我々。
置いていかれまいと、なんとかついてこようとしたメンバーにマスターが、

「あっ! ちょっと! 食い逃げだよ! 待て! もしもし!?無銭飲食です!

って言ってるのが、下から聞こえてきて、
ついに僕の腹筋は崩壊しました。


いやぁ、あそこまでお客さんを楽しませること(好き嫌いは別として)に
特化した店ってのは、他になかなかないと思います。
マスターに一切、照れも迷いもないところが、プロだな、と思いました。
なんのプロなのかは知りません。

加賀屋、また是非行きたいです。
何も知らない犠牲者を連れて。

ごちそうさまでした!



赤犬 - 全裸ブギ




20140818 Mon
思い出より、物


鹿児島へはリュックひとつで行った。

パンツ・シャツ・タオル・靴下(各2)、
タンクトップ・タイパンツ(寝巻きセット)、
歯ブラシ、ボディソープ、ヒゲソリ、
虫除け、汗拭き、制汗剤、
『本屋図鑑』、文庫本、テリー、充電器、イヤフォン、
財布、iphone、水、メモ帳、筆記具

こんなものだろうか。夏は荷物が少なくて良い。
目下、歩いても疲れないサンダルが一番欲しい。
ちなみに虫除けは、古本屋に入る前にかけます。
森なんかよりも古本屋の方が蚊が多い気がする。


どこかへ遠出するときは、大体このリュックに荷物を詰め込んで行く。
ボストンバッグも持ってるんだけど、実家に行くときなど、
荷物を置いておけるときにしか使わない。
それ以外の場所では、旅先でも遠慮なく増える本のせいで
重くなったリュックを背負い、ゼエゼエ言いながら歩いている。

周りがポーターだのグレゴリーだのノースフェイスだの持ってる中、
俺はかたくなにG.T.ホーキンスを使っている。
ダサいと思っていたロゴももはや一周してカッコよく思えてきた。

かたくなに、というのも、このリュック実は、高校入学のときに買ってもらったものなのだ。
たしか、三重のデパートで選んだものなので、
そもそもそんなに格好の良いものなんて無かったし、
そもそも俺にブランドの知識なんて欠落していたし、
っていうか校則指定のものなので、圧倒的に地味。

なんだかんだで、かれこれ14年くらい使い続けていることになる。
大学入学で九州へ渡るときにキャリーケースを買ってもらったのだけれど、
あまりに使いづらく、かつ当時は本当に大量の荷物をブチこんでいたので、
重さに耐え切れず車輪が砕け散るという事故が起こり、
それ以降はホーキンス一本槍できた。ホーキンス最強。

なぜ今、東京にこのリュックがあるかといえば、
九州から上京するときに荷物をブチ込んできたのが、このリュックだからである。
いまもむかしも、鈍行電車では足置き代わりに、路上で寝るときは枕代わりに。
疲れたときの俺を支えてくれるナイスガイだ。


よく見れば分かるのだけれど、このリュック、
余ったひもが変なところで玉結びになっていたり、
ジョイント(というのだろうか?)が変なところに刺さってたりする。

これらは全部、高校の同級生、
吹奏楽部でサックスを吹いていた友達がやったもので。
なんと14年のときを越えて、いまだにイタズラが真空パックで保存されているのだ。

やった本人は絶対に覚えてないと思う。
そもそも卒業するまですら覚えてなかったと思う。
やった直後は「早く戻しなよー」みたいに言ってた覚えもあるけど、
その後は何も言われなくなったもの。うん。

めんどくさかったから、という理由で戻さなかっただけなのだけれど、
この変な結び目を見るたびに、
部室を入ってすぐの場所に、無造作に投げられてペシャリとなっていたこのリュックや。
練習をやめて部室の電気を消し、津新町駅まで歩く道、
馬鹿な話から真面目な話まで皆で色々しゃべったこと。
他諸々の思い出が芋づる式にずるずると思い出され、
なんだか気まずく、にへへ、と笑ったりしている14年後の俺。

夏は部活と夏期講習ばっかで、あまり遊んだって記憶がないけど、
なんだかんだ、楽しかった、ような気がする。
あーしときゃよかった、こーしときゃよかった、ってのはもちろんあるけど。

しかし、14年前から俺って全然変わってないなぁと、改めて思う。
高校の頃には、大人になったらしっかりするぜ、みたいな幻想はあまりなくなってて、
たぶん一生どうしようもないままだな、ってのは頭の片隅にあったと思う。
とは言っても、大学やめるとまでは思ってもなかったけどね。

数年前のことだとまだ近くて誤差が大きいから、
もう記憶もハッキリしなくなった昔のことを都合よく、
物によって思い出して、自己連続性の確認をする。
だなんてセンチメンタルね!



Cavalleria rusticana - Intermezzo

いちばんうつくしいおんがく




20140817 Sun
珍物食 軍国酒場 @鹿児島天文館


先日ブログに書いた、先輩のバレエ発表会。
古本屋が軒並み閉店だったこともあり、開演までにずいぶん時間があった。
本でも読んで時間をつぶそうと入ったカフェーでは、
女子大生7人によるガールズトークが爆裂開催されており、
己のいたたまれなさにカレーを一気にかきこんでいそいそ退散。

s_IMG_2747.jpg
桜島を拝んだり、

s_IMG_2773.jpg
鳥居が超デカイ神社にお参りしたり、
そして天文館を中心にテクテクと、散策なぞしてみた。

s_IMG_2780.jpg
すると、ものすごく趣のあるビルを発見。
あとから知ったのだが、「祇園会館ビル」という名前らしい。
1階にはほぼ屋台といってもいいような、カウンターだけの飲み屋が2軒連なっていて、
ダメな大人たちが甲子園をツマミに昼間っから酒を飲んでいました。
飲み屋の屋根の上に雑草が生えているのとか本当に最高。

s_IMG_2782.jpg
反対側に回るとこんな感じ。
すごいレトロなカラオケ&まんが喫茶だなー、と思い、
どうせ時間あるから覗いて行こうかなと、
ビルの入り口に足を踏み入れると、

s_IMG_2783.jpg

天文館で50年
 国道10号線 隼人で30年
 今だ現役人の力なり

 天文館軍国酒場 4階

な、なんか見つけてしまったー!!

慌ててiphoneで“軍国酒場”と検索。
営業は19:00~24:00ということが分かった。
ああ、俺、こういう星の下に生まれることが出来て幸せだ。

よし、行こう、と。

バレエの発表会がメインのイベントならば、
軍国酒場はボーナストラックか。

ちなみに、他に軍国酒場を紹介しているサイトは
ロケットニュース24
新日本DEEP案内
TundieBlog
などがありますゆえ。
店の内装やママさんのお顔などは、
上記リンク先を参照して頂くとして、
以下、俺の体験記を。

バレエの会場を出て、再び天文館へ。
夜になると一層廃墟にしか見えない祇園ビル。
お盆ということもあり、周りの店がほとんど閉まっているなか、
軍国酒場、絶賛営業中のようです。
なにせ、周囲に響きわたる爆音の軍歌。
まるで洞穴の奥から聞こえる怨霊の声のようだ。
軍国酒場まで上がる階段にはまったく電気が点いておらず、
特に2・3階は本当に暗い。
軍歌さえ流れてなければ、誰もこんな真っ暗な廃墟になんて入ってこないはずだ。
s_IMG_2787.jpg
(↑写真は3~4階の踊り場)
壁には
「ぜいたくは敵だ」
「欲しがりません勝つまでは」
など、墨で書かれたソリッドな言葉が貼りつけられている。
階上から漏れてくる青い光に照らされ、
まるでおばけ屋敷か見せ物小屋のような雰囲気だ。
だいたいのいちげん客はここで引き返すだろう、そんな階段を、
「ワタシ旅先では大胆になっちゃうの」
っていうシロートモノの安いAVみたいな性格をしている僕はガシガシ上っていきました。

のちほど知ったのだけれど、
僕の大好きな屋上写真で、“天文館のビル”とだけ分かっていた場所が、
どうもこの祇園ビルの屋上だったらしい。
次回行くときは、ぜひ屋上まで上ってみたい。


4階に着くと、目の前広がるはこんな光景。
s_IMG_2789.jpg

怖いよ。知ってる人しか絶対に入らないよ。
バリケード、っていう雰囲気が出まくっている。
はやる気持ちを抑えるため、一旦店の前を通り過ぎ、
少しだけ祇園ビルの奥の方へ歩を進める。
どうやら、軍国酒場以外は事務所の入るマンション?のようで。
廊下天井の蛍光灯は切れていて、軍国酒場周りの青い蛍光灯の光が、
廊下の途中までをほのかに照らしている程度。
奥からいきなりゾンビ犬とかが出てきても全然おかしくない雰囲気。
それぞれのドアには「○○事務所」「○○会」なんていうプレートが貼ってあった。
もしも鹿児島で探偵事務所を開くことになったら、絶対に祇園ビルでやろうと心に決める。


さて、いよいよ軍国酒場へ突入だ。
引き戸に手をかけると、突如
ジリリリリリリ!!
という非常ベルが鳴り響く。

 も う 逃 げ ら れ な い 。

いやいや、こちとら旅先では大胆になっちゃうシロートAV嬢である。
引き返すつもりなど毛頭ないのだ。
色々と内装がせり出していて、まさに洞窟を思わせるほど狭い入り口をくぐる。

入り口を抜けるとそこは昭和アンダーグラウンドでした。

あのとき目の前に広がった光景を、文字で表すことができるだろうか、いやできまい。
思わず息をのむような光景だった。
店内の隙間を埋め尽くすようにぎっしりと物物物。
向かって左がカウンター。
右には小さなテーブル席が3つ?だったろうか。
元はそんなに狭くはない空間なのだろうけれど、
壁に天井に、とにかく物が吊され飾られ貼りつけられ。
ふだん、ミニマルな内装のオシャレなカッフェーに慣れた人間は、
思わず奇声を挙げながら逃げ出してしまうに違いない。

しかもその大量の物々が、ほぼすべて戦時中の貴重な資料なのである。
テーブル席横の壁には当時の新聞記事雑誌記事ビラなどがズラリ貼りつけられ、
暗くてよく見えないのだが、店内奥には軍服やら何やらが飾ってある。
天井には二つに割られた竹と藤の枝がぶわーっと貼りつけられて垂れ下がって。
上空に渡された紐からは、カラオケ用のマイクが2本垂れ下がって。

耳に飛び込んでくるのはノイズが乗りまくった爆音のレコードサウンド。曲は当然軍歌だ。
おそらくは相当古いレコードなのだろう、針が飛びまくるために、
奇しくもサンプラー音源のようなざく切りカットで曲が進み、えも言われぬ効果を生みだしている。

「異空間」とは、まさにあのような部屋のことを言うのだろう。
そんじょそこらのアトラクション居酒屋じゃ絶対にかなわない。
建物は尋常じゃなくボロく、展示物は戦時中のマジ物、のはずなのに、
なぜだかサイバーパンクな雰囲気がありました。
(「ロケットニュース24」の画像1枚目、
 ママさんが敬礼してるやつを見て頂ければお分かり頂けると思います。
 こんなん大友克洋のマンガでしか見たことないわ!)

「1名入隊ー!」

やけに通りの良いママさんの声で我に返った。
おぼろげな記憶だけれど、たしかカランカラン!と鐘のような音も鳴った気がする。
お邪魔しまーす、と言いながら席を探す。
カウンターには20代前半と思われる女性と、40代後半のおじさんが、
あいだに席を一つ空けた距離で座っている。
どういう間柄なのだろうか。
僕もカウンターに座りたかったのだが、少し前まで他のお客さんがいたのだろう、
灰皿やコップなどが片づけられておらず、
「お好きな席へどうぞ」とママさんに促されるまま、
真ん中のテーブル席へと腰を下ろした。
すぐにカウンターに座った男性に声をかけられた。

「お兄さん、どうして来たん?」

当然の疑問である。

「あ、下で看板見て、面白そうだなと思いまして」
「あれ、軍歌の人?」
「いえ全然知りません」
「じゃあ自衛隊さん?」
「いえ一般人です」
「どうして来たん!?」

至極当然の疑問である。

「いや、なんか面白そうな店だと思って」
「変わった人だねー。ママ、このお兄さん、たまたま見つけて来たんだって!」
「お飲物は何になさいますか?」

ママさんは基本的にマイペースだった。
メニューなんて無粋なものは当然置いてないので、
とりあえず間違いのないビールをお願いすることにした。

「あ、じゃあ、ビールお願いします」
「はい! 魚雷発射ー!」

……なんですと? いま、なんですと?

どうやら軍国酒場の飲み物は2種類だけで、
ビール=魚雷
焼酎=爆弾
という呼び方らしい。
少しまえに行った、志な野のヤッホー茶漬けを思い出したりした。

飲み屋あるあるだと思うのだけれど、
客が自然と店の手伝いをする店は、とてもいいと思う。
僕も新宿の朝起では2階までオーダーを運んだりした。

というわけで、お父さんにビールをお酌して頂き、乾杯。

「いやあ、たまたま入ってくるなんてホントに珍しいね。
 この店は、常連か、軍歌マニアか、ほら、そこのお姉さんみたいな、」

気になっていた男女関係を、図らずもお父さんご自身の口から直接聞けるとあり、
思わず身を乗り出した。

「自衛隊の人しか来ないよ」

なんですとー!?

話によると、お姉さん(つっても僕より全然若いんだけど)は、
防衛大学の学生さんで、夏休みの帰省中とのこと。
ネットで軍国酒場のことを知り、わざわざ足を運んだらしい。
めちゃめちゃ笑顔でエンジョイしてらっしゃっいました。

「配給ー!」

ここでママさんの鶴の一声があり、僕に配給(お通し)が渡ってきた。
・落花生
・カンパンとコンペイトウ
・ゆでたまご
それぞれが昔懐かしい感じの皿に乗ってやってきた。

「ゆでたまごおいしいから! はやく食べて!」

お父さんに言われ、
ゆでたまごにそこまで美味い不味いってあったっけ?
という素朴な疑問を胸に秘めつつ、いそいそと殻をむく。
塩を振り、一口。ビールで流し込む。
お腹が減ってることもあり美味。
すると、ママさんが、

「カラオケ何にしますか?」
「じゃあね、○○○で」

当方、音楽はよく聴くほうだと思うが、
軍歌は完全にフィールド外のジャンル。
あわあわしているうちに、
カウンター端に置かれた妙に大きい液晶テレビにカラオケが映し出された。
緊張のあまり、1曲目にかかったタイトルもよく覚えておりません。
まずはお父さんが歌い、
次の曲は、お姉さんが自らリクエスト。
さすがは防衛大学生やー! と唸ってしまうほど、
完璧なメロディ節回しで歌いきってらっしゃいました。
ちなみにこの2曲の間、私は負けじと必死に手拍子で喰らい付く。
曲も終わったところで、置いておいたゆでたまごに喰らい付こうとしたところ。

「お兄さん、ゆでたまごなんて食ってる場合じゃないよ!
 ほ・ら! (と言ってマイクをビャッと差し出す)」

お父さんさっきと言ってることちょっと違ってはる!

しかしこんなところで負けてはいられません。
楽譜の初見演奏には定評のあったナカイデ(元・吹奏楽部チューバ担当)、
いくしかねえ! とビールを一気。マイクを握り締めました。
お父さんのガイドメロディーとアイコンタクトもあり、なんとか完唱。

「お兄さん、ほんとに知らないの?」
「はい!すんません!ぜんっぜん知らないです!」
「そのわりには上手いねー! ママ、何点?」
「90点!」

俺、思わぬ高得点叩き出したー!!

「いーや、まだまだだね、75点だね」
「それでも、そこそこ高いですよね」

その後もそれぞれ1曲ずつくらい歌い、
最後には3人で『父よあなたは強かった』をマイクリレー
いやー、めっちゃ楽しかったです。

終電なので、というお姉さんが、
記念にお願いします! と言って、ママさんと一緒に記念撮影。
(お二人の敬礼がめっちゃカッコ良かった)
先に店を出て行かれました。

「いやぁ……、ね」
「はい」

(このやりとりで、お父さんの手から僕のグラスに、
 焼酎が並々と注がれている絵をご想像ください)

で、詳細は割愛するけど、

その後、お父さんと1時間くらいサシで話しました。

「お兄さん上手いねー、仕事、営業?」

なんて言われちゃったよ。やったね。
心に残るすげえ良いフレーズを頂いたりで。
っていうか、お父さんがほんとにめっちゃいい人で、
飲み屋に行くたびトラブルに巻き込まれる星の下に生まれた僕としては、
久しぶりに楽しく心安らかに呑めました。
ママさんからもお店の歴史や隊長(=店長)である旦那さんの話を聞いたり。
とても充実した時間だった。

そして、あっという間に、気付けば閉店の0時。

「おっと、ママ、ごめんね長居して。
 じゃあ、お兄さんのぶんもお勘定」

ま さ か の ー !!

それこそ契約が取れた営業マン並に頭を下げてお父さんをお見送りしました。
お父さん、最後の最後まで良い飲み方をする人だった。
僕に気を使わせないようチャッと帰っちゃうところとかホントにカッコよかったー。

僕もママさんにお礼を述べて、フラフラと退散。
引き戸に手をかけたところで、元気な声でお見送りされました。

「1名満期除隊! ご健闘祈ります!」

軍国酒場、最高に良い店でした。
ごちそうさまでしたー!



銀杏BOYZ 人間  Part 1

手拍子いらねえよって思ってたら




20140815 Fri
夜ふかし



↓桐村さんのあいかわらず素晴らしいイラスト


↓私のあいかわらず安っぽい話

夏は熱帯夜。
外はまだうだってんのだろうか。
うだるような暑さってんのだろうか。
出たくない、一歩たりとも。
なんてうだうだってるうちに終電は行ってしまったよジョバンニ。

比して此岸は涼しやびばのん。
クーラーを発明した者を呼べ。褒美をやろう。
もしくは世界か雪見だいふくの半分をやろう。
代わりといってはなんですが、アイスの実をひとつ下さいチョコ味以外で。

トールグラスについた水滴を指でつつついと集めた。
人差し指にぷくり乗った水滴を見るじっと見る凝視する。寄り目で。
この僅かな水量にもきっと微生物やら何やらいて、生きてて。
食べて、祈って、恋をして、いるのかもしれない。
ちいさなちいさなせかいです。イッツスモールワールドです。
せかいーじゅーうーどこだーあってぇーわらいーあー
ぷちり。
親指でつぶした。
幾千億の命がいま、天に、のぼる。ぷしゅしゅしゅしゅしゅー。
我が名は無慈悲。残酷な神。崇め奉れよ、さもなくば、死を!!

「ねえ、あんた、また変な妄想ショウ繰り広げてるでしょ」
「ひゃい? うむ、いえ、あの。……『メン・イン・ブラック』って映画、知ってます?」
「知ってる知ってる。私のオールタイムベスト1だよ」
「あのラストで、JとKのいる世界(つまり我々の地球)もちっぽけな球にすぎない、
 ってシーンが出てくるじゃないですか」
「あ、そういえば、『メン・イン・ブラック』のゴキブリと、
 キューブリック『フルメタルジャケット』のほほえみデブって、同じ役者さんなんだよ、凄いよね」
「すみません、キューブリック観たことないんで」
「響けよー、打てばー」

やっぱ映画は結構詳しいんだ、キューブリック観なきゃな、と脳内メモする。
けどオールタイムベスト1が『メン・イン・ブラック』なんだよな。
……詳しいのか? 一週回って逆に、的なあれなのか?

「で、あんたどうやって帰んの」
「タクリマスヨ」
「ぎゃっ! なにそれ富豪!?」
「貧民なんで、いさせてくださいよー、始発まで」
「セコム相手に言い訳しきれるならいいよ寝てって。床でな」

カウンターの向こう、彼岸にいる相手に向かってふくれっ面してみせるが、
敵はそれを軽くいなし片付けを終えた。
あとは私を追い出せば閉店は完了ということか。退かぬ、退かぬぞっ!
ビールサーバーをしめる前に入れていた1杯が、私の隣にやってきた。
敵は仕事を終えた笑顔で、こちらは頬をふくらませたままで、乾杯。
席ごとに吊るされた電球の灯り。影が、付いて、離れる。

「お盆にわざわざ来てくれるのは大変ありがたいんだけどねぇ」
「じゃもっと感謝してくださいよ、それを態度で表してくださいよ」
「終電無くすようなめんどくさい客への感謝はゼロだよ」
「まだだ! まだ残高はあるはずだ!」
「ないです、むしろ赤字です」
「ドロー! 徳政令カード!」

財布から適当にドローしたどこかの店のポイントカードを、
人差し指と中指ではさんでJOJO並にビシッときめる私を無視し敵は、
生ビールを半分ほど一気に飲んで、気持ち良さそうに息を吐いた。
その仕草が色っぽかったので、ちょっと恥ずかしくなって、
こそこそとポイントカードを財布に戻した。

だって、あれでしょー? 自転車で来てるんでしょー? 近いんでしょー?
じゃ、いいじゃないですか、お部屋に連れてってくれても。
呑みなおしましょうよー、途中のコンビニ寄ってさ、
ビール2本とワイン1本、あとツマミなんかも買っちゃって、
あ、それか、「わたし何か作るよ」でも可。可っていうかそれ最高。
結局ビールは途中で飲み始めちゃって部屋着いて、
ワイン開けて改めて乾杯して、テレビつけるんだけどもう何にもやってないから、
なんかDVDでも観ようって、夜だし静かなのにしようと、
かけたシリアスな映画観はじめものの10分で私寝落ち(ワザと)。
ちょっと、寝るんだったらちゃんと寝なよ、
だいじょーぶれす、私、床で良いれすおやすみなひゃいって言うんだけど、
ダメだよほらベッドに、どっこいしょ、ってなった瞬間、
ふらついたふりして押し倒します。
なんて言えるかーい!

「どこまで妄想行った?」
「……地球は4回滅びました」

ビールはすっかり空になっていた。
代わりにタバコに火が点く。
かたや私のグラスはまだ半分くらい残っている。粘ってやんよ。

「世間様はお盆かー、あんたは何連休なの?」
「5連休です」
「いいねー、それだけ休みあったら、私なら波照間島とか行ってさ」
「わざわざそんな遠くまで行ってなにするんですか」
「なんにも。ただ浮き輪なんか浮かべて。気付いたら寝ちゃってて、
 次に目を開けたら、目の前には、星だけが、なんてね」

グラスを持ち上げて隣を見る。
チャイナブルーの向こうは青。
レモンの浮き輪に乗って。風は静かですね。
窓ガラスに映った電球、星みたい、キラキラキラ。

「海の中でタバコ吸うってのも素敵ですね」
「は? 何言ってんの? バカなの?」
「バカです」
「うん、知ってた、ふふ」

だめですよ、くわえタバコで、そんな顔で、笑ったりなんかしちゃ。
ああ、もう。


If I Were A Fish - Mum




20140813 Wed
たびのきろくをつけますか


新宿ヨドバシカメラ。
貧乏旅行者にはお馴染み長距離バスの発着場だ。
日曜21時、僕はそこにいた。
ずいぶん前に乗って、大後悔した夜行バス、

s_IMG_2679.jpg
新宿→博多

日本で一番の長距離を走る夜行バス「はかた号」に再度乗り込んだ。
隣席が寝相の良い方で助かった。ケツももげずに済んだ。
おそらく以前より貧乏旅行に慣れたのだと思う。喜んで良いのかどうか。
夜行バスに乗るときはポッドキャストなどラジオ番組を大量にiphoneへ入れていく。
聞いているうちにいつの間にか寝ている作戦。
はかた号、コンセントがあるのが素晴らしい。
休憩は2回だけだが、車内にトイレもある。

今回はまあまあ予定通り、11:30に博多着。
(前回乗ったときは大渋滞で、2時間遅れました)
一旦天神まで出て本屋図鑑後追いツアーしたのち、歩いて博多駅まで戻った。
上京してから熊本などには行ったけど、博多には寄らなかったので、実に10年ぶりの博多駅。
10年前僕はここから名古屋まで鈍行に乗って上京したのだ。
s_IMG_2681.jpg
アクロス福岡を眺めるのも10年ぶり。
ここで演奏したような気もするししなかった気もするし。

そして青春18きっぷラスト1を使う。
俺の馬鹿みたいな夏休みもこれで終わりかと思いかけるが、
皆様に比べると毎日が夏休みみたいなもんなので感慨が浅い。

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14:44 博多発
↓ 34駅
17:31 八代で第三セクターの「肥薩おれんじ鉄道」に乗り換え
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(車内で誰よりも存在感を放っていたコアラ)
↓27駅 フリーきっぷ2060円
20:35 川内で再びJRに乗り換え
↓13駅
21:45 
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今回の目的地、鹿児島着。

博多での寄り道も含めると、
東京からおよそ25時間の長旅だった。
20代最後のサマー! と無茶をしたつもりだったけど、
案外大丈夫だった。

予約しておいたゲストハウスに受付終了すこし前に滑り込み、
タコ部屋の2段ベッド上段で倒れこむように眠った。



翌12日火曜は一日鹿児島をフラフラとした。
トピックを画像とともに振り返りたい。


s_IMG_2725.jpgs_IMG_2735.jpg
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行きたかった古本屋、全部休み。
これはまぁ、お盆だししょうがない。
特にレトロフト(画像右下)の古本屋にはぜひ行きたかったので、
鹿児島再来訪を心に誓う。



s_IMG_2700.jpgs_IMG_2715.jpg
・本屋図鑑後追いツアーのためだけに指宿まで行く。
ゆびやど(←なぜか変換されない)といえば温泉地である。
駅で降りて、本屋に行って、駅に戻って。
1時間も滞在してないと思う。
金沢では城と兼六園をガン無視、指宿では温泉をガン無視。
こんな旅の内容で良いのだろうかとそろそろ疑わしくなってきた。
ちなみに指宿・枕崎線は海沿いを走るので、眺めが良かった。


他に行けた書店は、ジュンク堂とブックオフ。
お前それ東京でも行けるやないかい。
けど、ブックオフの建物がどう見ても
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元・ラブなホテル。
Twitterで画像を上げたら結構反響があって嬉しかった。


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・やたら銅像が多い。
鹿児島といえば薩摩藩。
西郷隆盛、大久保利通の銅像は当然あるし、
歴史っぽいものから、よく分からんモニュメント的なものまで、
メインの道を歩いていると、ドラクエ序盤のスライムくらいの頻度で銅像が現れる。
上に載せた3枚の画像は、特にネタがやりやすそうな銅像だ。
 ・じゃんけんでチョキ出して負けてる人
 ・アゴをくすぐられて懐く猛獣
 ・サザエさんになって誘導(顔は気合を入れて)
というネタをやりたかった。
こういうときに一人旅の限界を感じる。
まぁ誰かと一緒だったら、銅像の前でいちいちネタなんて考えてられないので、
やっぱり旅は一人が良いと思う。


なお、今回の旅の目的は、
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・先輩のバレエの発表会を観る。
このたった1つだったので、
古本屋が閉まってようが銅像でネタが出来なかろうが些事。
無事に発表会は観ることが出来た。良かった。
ダンスの公演はたまに観に行くことがあるけれど、
バレエは、他に発表会規模のもの(クリスマス時期の『くるみ割り人形』)を
一度観たことがあるだけなので、正直よく分からない。
今回のは教室の発表会という感じだったけど、結構大きいホールだったし、
客席も、いわゆるあたたかい感じで、観てて楽しかった。
出演者は5歳くらいのちっちゃい子から、大人の方まで。
ちっちゃい子は、見てるだけならやっぱ無条件に可愛いし、
ソロのダンスもバンバンあったりで、舞台度胸すげえなぁと素直に思った。

先輩のダンスやらガードやらのステージは何度か観たことがあるけど、
がっつりなバレエやってるのは初めて。
結構後ろの方の席に座ってしまったので、
出演者数も多いし、メイクも別人並に濃いし、
先輩がどこか分かるかなーと心配してたんだけど、
出てきて速攻で分かった。杞憂。
ってなくらい、客席から観る先輩は、
昔から知ってるとおりのすげえオーラ出してる先輩だったけど、
本番終了後にご挨拶させて頂いたときは、
あれ、こんなちっちゃかったっけ? と思うくらい縮んでらっしゃった。
いわゆる『バレエの本番があって先輩が縮んでしまった事件』だ。

こうなると、このままぐんぐん縮んでいって、
最終的には『南くんの恋人』みたいなサイズになるのだろう。
それでもやっぱり僕は先輩に頭が上がらず、
「ホントに使えんよねー」とか言われて、
あ、はあ、すみません、うへへ、なんてごまかすのだと思う。
それより先輩、ついにテリーがボロボロになってしまいましたし、
そして先輩もちょうど縮んだわけですし、
良かったら次の旅は一緒にいかがですか、と誘うものの、
速攻で「は? ふざけんなし」って言われるだろう。明白。

観に来ていらっしゃってた先輩の他のお知り合いに、
「大学の後輩で、私の雑用です」と紹介して頂き、
脊髄反射で「はい、雑用のナカイデです」と言いながら、そんなことを考えていた。


ってなところで今日はおしまい。最後に1曲お聴き下さい。

Heaven on Their Minds




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そして話は、鹿児島でもやってしまった珍物食へと続く。




20140810 Sun
じゃ、夏なんで


21世紀。
どこでもドアはまだないので、
残り少ない若さゆえの気合でなんとかしようと。

予定は未定。
作戦はオフザケ。

どこかで風になっております。


友部正人 どうして旅に出なかったんだ




20140809 Sat
【お誘い】新橋最凶の居酒屋、加賀屋で呑む会【珍物食】


珍物食のお誘いです。
8/19(火)の夜、新橋にある最凶の居酒屋、
加賀屋へ行きます。
http://www1.ocn.ne.jp/~kagayayy/main.html

一旦締め切ってましたが、同行者再募集中。
行きたいって方いらっしゃいましたら、ご一報下さい。
今のところ6人の予定。
なんか予約しないと入れないかも、みたいな書き込みがあったので、
13日で一旦締め切って、慌てて予約とろうと思います。
のでよろしくお願いしマンモス。

有名どころのレポート↓
東京でもっとも狂気にみちた居酒屋「かがや」【新橋】」 (東京別視点ガイドより)
新橋の異常な居酒屋「加賀屋」へ突入」 (デイリーポータルZより)

珍物食の人として、埼玉県人は飲もうと思います。
やー楽しみ。
もし予約取れなかったら、別のとこで許してもらえるだろうか……。


The Bad Plus - Lithium




20140805 Tue
こゆび侍『たまには純情』


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こゆび侍『たまには純情』を観ました。

こゆび侍の舞台を観るのは、『うつくしい世界』以来、2回目。
あのときは出演していたぬいぐるみハンターの猪股くんにお誘い頂いて、
今回は<哲学する小道具師>こと、辻本直樹さんのお誘いに乗っかってホイホイ出かけた。
白状すると、昼に公園で梅酒とロゼワインをやってから行った。
氷やコップを持ち運ぶためのクーラーボックスを見た辻本さんに
「え? 釣り帰り?」
と言われる。なので釣果は辻本さんにお渡しした。
井の頭線に乗ったあたりで、あ、今日楽日じゃん、って気付きました。すみません。
(豆知識:楽日(最終公演日)には、劇場から荷物を全部引き上げないといけないので、
 差し入れを渡す=荷物を増やす、ってことで失礼になるから良い子は気をつけようね☆)

というわけで、楽日も終わったので、ネタバレ気にせず淡々とストーリーや感想を書きます。
誰が得すんねん、っていうくらい長くなると思いますすみません。


まずこういうことを言ってしまうのも何なんやけど、
平凡なストーリーだったので、あんまり細部を正確には覚えてないッス。
ただ平凡なんだけど、たまをもぎ取られる、そんなストーリーでした。

開演の少し前から、バスガイド姿の役者さんが、最前列のお客さんをイジり始める。
なぜか僕は観劇のときに下手最前列に座ってしまうので、当然イジられた。
いつものごとく本を読んでいると、
「暗いですけど読めますか?」
「あ、はい、大丈夫です」
「何を読んでいらっしゃるんですか?」
「(表紙を見せる)」
「あぁ、中島らもですかー」
「(ちょっと恥ずかしい)」 
なんかもっと『黒死館殺人事件』とかオイシイ本を持っていけばよかったですすみません。

開演時間となり、そのままバスガイドさんによる諸注意のアナウンス、
運転手らしき男性が登場し、観客は物語という名のバスに乗せられて、
というふうに本編は始まった。

舞台は老朽化したアパートの一室。
白い壁には、子どもが書いたような絵が何枚も貼ってある。
ちゃぶ台がひとつ置いてあり、やがて父娘3人の食卓のシーンに。
食卓の上には写真立てがひとつ乗っている。

何気ない温かな団欒が終わると、ちゃぶ台がしまわれる。
と、父親が置くの部屋から一枚板の看板を取り出してくる。
看板には下手くそな毛筆で「蹴上道場」。
父は棒の先に金色のボールが付いたものを使って、二人の娘に蹴りを教えはじめる。
三人とも非常に慣れた様子で、この馬鹿馬鹿しい光景が常日頃行なわれているものであるのが分かる。

と、ここで再びバスガイドが登場。
自分がこの家庭の母であること、
もう死んでしまっていて、実際は居ないこと、
新人バスガイド時代に迷惑客に絡まれて、
金的、つまり、金玉を蹴り上げることでやっつけてしまったこと、
そのときに自分をかばってくれた運転手と結婚して、子どもを二人もうけたこと、
などが説明される。
残された父は、母の必殺技である金的を教えることで、
娘二人を今日も鍛えているのである。

今回の公演タイトルは、『たまには純情』である。
つまり、タマには純情、なのである。

超バカバカしい。
こういうの大好きです。

そういえば衣装にも水玉など、玉模様が取り入れられていた。
水玉は関係ないけど、次女のセーラー服のスカーフと、
履いているスニーカーの色がハッとするほど綺麗な赤だった。
照明が青と赤を合わせた色で、赤が浮いたようにギラギラと輝いていた。

ある日、仲の良い幼馴染であり同級生かつ大家の息子、
そして随分重度なレベルのオタク系男子から突然告白され、
次女は禁断の必殺技、金的を使ってしまう。
倒れて悶え苦しむ男子の顔を見て、
(ここで男子がボソッと言う「あ、これダメなやつだ」が超ツボだった)

金的の魅力に目覚めちゃう次女。

家族には内緒で、夜の街に繰り出しては闇討ち、金玉を蹴り上げまくるようになる。
愛ゆえに連れ回されるオタク男子が、それら蹴られた相手の悶絶顔を写真に収めていくシーンは、
映画『愛のむきだし』のパンツ盗撮シーンを思い出しました。

母が死んだ理由は自動車事故。
なんと、同乗した父のバスが巻き込まれた事故で死んでしまったのだ。
(そういえば、タマ突き事故では無かった気がする……)
それを苦にして父は、いまでは運転手を引退し、事務員として働いている。
事務関連の資格試験や転職活動、どれも上手くいかないまま。

そして一家のもう1人、長女はとにかく努力家。
熱血だけどちょっと情けない父と、ワガママで気まぐれなところがある次女、
そんな2人の世話を一生懸命にこなしながら勉強も頑張り、大学院まで進学。
ついには念願の研究テーマであった、<言葉の音のレシピの秘密>を探るために、
原住民がいる森への派遣隊のメンバーに合格するに至ります。

建物の老朽化により立ち退きを余儀なくされ、
母の13回忌と、引越しと、そして長女の出発と。
普通の日常を送る一家にゆるやかな変化が訪れようとしていた矢先、
近所に住む祖母によって、次女の奇行が仄めかされます。
この祖母役の役者さんがまたいい味出してて良かった。
一言で言えば、母を殺してしまったっていう父の自責の念にしつこく付きまとって、
生活費を搾り取っていくっていう、嫌なババア。
役者さんをどっかで観た事あるんだけどなぁ、って帰宅後に調べたら、
踊れ場『煙草と私たちの害について』にて、
海女コスプレで指名1位のイメクラ嬢やってた人だ、と思い出しました。
ああやって悪役をやってのけてしまう役者さんは凄いなぁと、素直に思います。
あと、冷蔵庫の冷気浴びアクションで心を鷲づかみにされました。

やがて次女が必殺技=金的を発動させまくっていた=犯罪をやっていた、ことが発覚。
金的被害者の1人にヤクザがいて、復讐のために、
なんと父が襲われ大怪我を負い、入院にまでなってしまいます。
一命は取り留めて無事に退院できた父でしたが、
後遺症が残ってしばらくはリハビリが必要な日々。
それでも引越しの日はやってきてしまいます。

そんな一家の様子を見て、長女はある一つの決断を下します。
派遣隊には行かず、この家を離れないでおこうと。
長女の決定を知ったあとの二人、特に父は猛反対します。派遣隊には行くべきだ、と。
と、追い詰められた長女の口から、ようやく本音が語られ始めます。
いわく、私は良い子でいようと思った、
お母さんが居ない分、私がお母さんの代わりになろうと思った、
お父さんはずっと逃げてばかりだ、
そんなお父さんが私に、家族を置いて派遣隊に行くという決断から逃げるな、なんて言う資格はない。

父は駆け出します。まだ痛みの残る体を引きずって家を飛び出しました。
そして突然の轟音。
窓を開けると、ブロック塀を突き破って庭先に、父の運転する大型バスが停まっていました。
「お父さんはもう逃げない! お前も逃げるな!」と叫ぶ父に対して、

長女はついに、必殺技を解禁します。

幾度も幾度も父の股間を蹴り上げる長女。
全てを振り切った長女は、笑顔でぶっ倒れた父に言います。

「運転手さん、このバス、空港まで行きますか!」

先ほども引き合いに出した『愛のむきだし』では、勃起シーンで号泣でしたが、
『たまには純情』では、連続金的シーンで感涙。なんなんでしょうかこの股間的共通項。

いつの間にか自分達で作ってしまってた殻は、自分達でぶっ壊せ。
居心地の良いぬるさからは抜け出して、
楽しかった旅はここまででおしまい。
ここからまたそれぞれの旅が始まるのさ。

友には、さらば、を。
そして家族には、いってきますといってらっしゃい、を。

たった一人もう旅も終わってどこにも行けない母は、全てを受け入れ、
大きく手を振って、愛する家族を送り出すのでした。
いってらっしゃーい、気をつけてねー。




役者さんは7人。やはり僕はこれくらいの人数の舞台が好きだなぁと改めて思う。
わざわざ言うのも失礼なんだけど、皆さんすごくよく声が出ていて、良かった。
RECレベルのレッドゾーンギリギリラインと、叫び芝居で敢えてレッドゾーンに持っていくっていう、
その狭間を皆さんがそれぞれよく分かってらっしゃる感じだった。

脚本は、こゆび侍主宰の成島秀和さんと、詩人のセリザワケイコさんによるものだ。
辻本さんによると、脚本を手がけたお二人ともに、詩のボクシングでの優勝経験がおありとのこと。
僕はふだん詩をあまり読まないのだけれど、
今回の観劇にあたって予習をしておこうと、セリザワケイコさんの詩集『音の蛹』を拝読していった。
編集後記にセリザワさんの言葉で、
“ここにある作品は、もともと朗読するために書かれたものです。
 詩を書くとき、わたしは常に音を意識しています。”
ということが記されている。音といえば、セリフだ。
やはり、常日頃、音を意識して文字を綴ってらっしゃる方による脚本は、
耳障り良く、するするとセリフが聞こえてきたような気がする。

気がする、としか言えないのは、僕が普段、
音ではなくて意味を重視して文章を書いているために、
音に対するセンスみたいなのがあまり備わってないからです。
詩や短歌はおそらく音や、文章の見え方、文字のフォルム、
そういった部分を大事にして、作られるんじゃないだろうかと思っている。
(もちろん、意味、をおろそかにするということではなく)
ぶっちゃけ僕の弱点なので、鍛えていきたいところであります。



こゆび侍『たまには純情』、とても良い舞台でした。

長々と最後までお読み頂きありがとうございました。
ってなところで今日はおしまい。最後に1曲お聴き下さい。

Quantic - You Will Return feat. Alice Russell




20140802 Sat
金沢21世紀美術館へ行ったよ


本日は珍しく、写真をメインにお送りします。
まぁ、金沢つったら、行きますわな。

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みんな大好き、金沢21世紀美術館https://www.kanazawa21.jp/



美術館の野外にも色々と展示物があったので、
とりあえず、夏場の旅のお約束。

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テリー焼き。
「アツイ!アツイ!」
ちなみにこれはただの椅子です。


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行ったときのメインの展示は
レアンドロ・エルリッヒ ーありきたりの?

21世紀美術館で一番有名な、
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このプールでお馴染みのアーティストです。

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この日は陽射しが強くて、地下は水中感が凄かった。キラッキラ。

プールは複数人で行って、写真を撮り合うのが良いと思う。
男1人で行っても、ただの盗撮野郎にしかならない。
夏だから、薄着でそんなに違和感ないけど、
冬に厚着した状態で、水の中、っていうのも面白いだろうなぁ。

夏休みということもあって、子ども連れの家族が多く、
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長い廊下の先に何かありそうだととりあえず全力で走るチビッ子が多くて楽しかったです。

他の展示も撮影OKっぽかったんやけど、
旅2日目にしていつものホームレスみたいな格好になってたので、
怪しまれないように写真は控えました。
(ほら、誘拐監禁とかあったしさ、俺みたいな変態は気を使わないと)

展示作品の詳しい画像は→「山田書店ブログ
こちらあたりをご参考ください。

僕が一番好きだったのは、『エレベーター・ピッチ』という作品。

壁にエレベーターのドアが取り付けてあって、ドアが開くと液晶画面が。
画面にはエレベーターの中の人が映されていて、
誰も乗り降りしないのにドアが開いてしまって、
ちょっと手持ち無沙汰になってる、っていう人々が映されます。

とにかく延々。

10秒開いて、閉まって10秒たって、また開く、みたいなスパンで。
どれくらいの時間見たかなぁ。
とりあえず、俺以外の人が二順するくらいはボーッと見てたと思います。
それだけ見ても、ひとつも映像の種類がカブらなかったですからね。
(さすがに何回も出ている俳優さんは居た)

まず、何もないはずの壁の向こうに、
(映像だけど)エレベーターの空間が突如現れるっていう衝撃。
現場は日本の金沢なのに、映像は外国のエレベーターっていう、この会場ならではのズレのおかしみ。
子ども役者は撮影のカメラを見ちゃってることもあって、それはそれで楽しいんだけど、
大人の役者は、(もちろんそういう指示があったんだと思うけど)カメラを無視してて、
停まった階には誰も居ず、だいたい、早くドア閉まれ、みたいな表情を浮かべる。
そのため、実際の展示室にどれだけ人が増えようとも、
フロアにはそんなに人がいない建物のエレベーターっていう、これもズレがでてて可笑しかった。

調べてみると、“エレベーター・ピッチ”という言葉は、

「起業家はエレベーターの中で投資家に会ったら、
自分のビジネスプランを30秒で的確に伝えられなければ未来はない」と言われてきました。
これがエレベーター・ピッチ(“ピッチ”は「説明する」の意味)なのです。

という意味らしいです。
http://bizmakoto.jp/bizid/articles/1008/23/news048.htmlより)

つまり、時間を無駄にしないようにガツガツといきなさい、ってのが本来の意味だと思うんだけど、
この展示で映されるのは、どう見ても完全に空虚な時間を過ごしている普通の人々。
皮肉、みたいな意図も込められてるのかもなぁと思いました。



あと『リハーサル』という、8人しか入れない室内で展示されてる作品があって、
これが何かっていうと、部屋の真ん中が大きなガラスで区切られていて、
こちら側のは全面が黒になっていて証明が暗い。
椅子が4つ置いてあり、弦楽器の弓が3つ置いてある。

で、ガラスのあちら側は、なんやらおハイソな感じの部屋になってて、
ピアノが一台、ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロが宙に浮いていて、照明は明るめ。

何が起こるかっていうと、くらいこちら側の様子が、
向こう側と合成されるようにガラス面に映る仕掛け。

つまり、何も無いこちら側の、ただの黒い箱に腰をかけて、上手くポーズを決めると、
ガラスには、まるで実際に楽器を構えている自分の姿が映っている、というわけ。

これもね、何人かで入ったら、キャイキャイ言って楽しめるんだろうけど、
1人で行っても、楽器構えながら写真撮ることも出来ず、もう4本くらい腕があればなぁ、
という無茶な願望しか湧いてこなかった。
それでもひととおり楽器構えて遊んだし、
周りの人からの「こいつは1人なんだから優しくしてやらにゃいかん」っていう、
温かな視線を感じて、楽しかったから良かった。

普段僕は写真展を観に行くことが一番多いんですけど、
こうやって、自身が作品の中に入ってしまえるくらい大きな作品の展示ってのは、
感覚が反転するというか、新鮮な感動があるなぁと思いました。



ほかの展示は、

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『中村好文 小屋においでよ!』

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美術館の中庭のようなスペースに、
中村好文さんによって設計された自給自足の小屋「Hanem Hut」が。
小屋の中に入ることは出来ないんですが、実際にデデーンと建っています。
窓から小屋の中をチラリ見することが出来るんですが、非常にオシャレでした。
本当に自給自足できるらしく、風力と太陽によって発電。
七輪によるコンロは夏場かなりキツそうだ、とも思いました。

室内の会場では、他の有名な小屋の紹介や、
(立原道造のヒヤシンスハウス、ル・コルビジュエの休暇小屋、など)
「Hanem Hut」の建築風景の上映などがありまして。

まぁ男の子なら、絶対に小屋に憧れる、っていう仕様の展示でした。
小屋、建てたい。



急にスケール感が小さくなって、

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『橋本雅也 間(あわい)なるもの』

これがすごく良かったです! 細かいものスキーは必見。
彫刻家の橋本雅也さんの作品展示。

いくつかのガラスケースの中には、白い花の彫刻が。
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(文字で説明する自信がないので、ここで遂に画像引用)
https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=17&d=1715より)

色以外は、まるで本物にしか見えないような精巧な作品です。
で、この素材が、なんと、

鹿角、鹿の骨

見、見えねええええ!!
花にしか見えねええええ!!

花の側とは逆、茎の方に敢えて骨っぽさを残してある作品もあって、それもまたすごく良かった。
派手な生け花みたいになってる作品もあって、
あれが部屋にあったら、超綺麗にするのになぁ、って思ったり。

実に作品集が欲しくなる作家さんでした。



21世紀美術館。
そっこらじゅうがガラスで出来ていて、めっちゃ明るく、
中も外もほぼ丸見えなので、高尚な感じがせずに、
気軽にアートに触れられる空間でした。
あと、館内にあるライブラリーも良かった。1時間くらい本読んでしまった。
美術館の周りの芝生も気持ちよかったし、あんな場所が近所にあったら相当楽しいだろうなぁ。
いやはや、行ってよかったッス。



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オラファー・エリアソン『カラー・アクティヴィティ・ハウス』

神さまになった気がした青に黄をまぜてみどりを創ったあの日 /麻倉遥
(穂村弘『短歌下さい』より)





20140801 Fri
珍物食 「ヤッホー茶漬け」 @志な野


ただいま。
ぼちぼち金沢のことを書いていこうと思います。

友達が春の青春18きっぷで「軍艦島まで行ってきたー良かったー」って言ってて、
めちゃくちゃ悔しかったので、俺も青春してやんよ、と思ったのが旅の発端です。
鈍行でどこかへ行くとなると結構な休みが必要だよなぁ、
けど俺、そんなに休み取れないしなぁ、と思っていると、
ある日突然会議室へ呼び出され、
「今期の決算ヤバイので、アルバイトは休みとって人件費削らせてくれ」
という絶妙なタイミングでほんのり危ないお願いが。
沈みゆく船を眺める気持ちのまま3連休を頂けることに。
先走って18きっぷを買ったものの、旅の計画なんて全く立ててない。
まぁせっかくだし、なんかアホなことに使おうと。
あ、そういえば、行きたい店があったわ、

金沢に。珍物食で。

という思いつきだけで行ってきました。


最近このブログを読み始めた、っていう奇特な方に説明させて頂くと、
僕は10年前に偶然エジプト料理店でハトの丸焼きを食べてしまって以来、
“変な物”を食べるのをなかばライフワークとしております。
自分で料理が出来ないので、どうしてもお店などで出ている物になってしまうのですが。
代表的な珍物を挙げますと、

カエルとか色々 朝起@新宿
・ダチョウの卵で作ったオムライス @友人宅
・なぜか定期的に開催される、世界一臭い缶詰「シュールストレミング」を食べる会
(僕が呼びかけさせて頂いて3回やりました。
 3回目に強力なメンバーを得て遂に完食。その後、他の方が行なわれた4回目では、
 本来捨てるはずの汁まで完食という驚異の結果が。)
昆虫料理研究会に参加させて頂き、各種昆虫を食べる。
(一部界隈では、ナカイデソントン=セミを食べた男として名が通っております。
 一番インパクトあったのは、やっぱマダガスカルゴキブリです)

他、多すぎて忘れました。

しかし今回の店は、ちと趣が違います。
出てくるものではなくて、店が変なのです。

店が変といえば、惜しくも閉店してしまった、
日本一まずいラーメン屋「彦龍」を思い出します。
まぁあそこは店だけじゃなくて、出てくる物も変だし、店主・憲彦さんも変だったし、
最強の珍スポットだったと思いますけど。
友人たちと行って、「マジで不味かったね」と言いながら出た数週間後、
なぜか1人で行って、憲彦さんの話を2時間くらい聞いたのも良い思い出。
また金髪にしたら、あの頃の行動力が戻ってくるかしら。


さて、見た目は普通の黒髪になりまして、齢を10ほど重ねましたが、
まだ落ち着くにゃ早すぎる。そんな私、ナカイデソントンが行ってまいりました。

企画「珍しい物を食べてみる 略して 珍物食

志な野@金沢
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金沢で 志な野へ行かず 何処へ行く

という小林さんぴん茶の句でご存知の方も多いのではないでしょうか。
実際僕は今回、金沢まで行っておいて、兼六園も金沢城も見ておりません。
親不孝者だというのがなんとなく分かって頂けるかしら。

さて旅の初日夜、月曜に金沢へ到着した私は、そそくさと足を志な野へ向けます。
ネットで調べたところ、志な野は22時~26時の営業で、日曜が定休。
ここでたらふく飯を食っておいてあとの食費を出来るだけ節約して過ごそうという、
作戦名:行き当たりばったりを掲げて、金沢駅から歩くこと30分弱。
繁華街である、香林坊・片町、という場所へ着きます。
飲み屋がたくさんあり、客引きっぽいお兄さん方がズラリ。
僕も昔飲み屋で働いてたことがあるので、なんだか懐かしい光景です。
アリサさんが55番、もえさんが180番、
新築ローンを3年で完済したひかるさんが3番、
(※注:僕が働いてたお店の指名数上位3人)
と呪文のように唱えながら、脇道にクネクネと入っていきます。
怪しい中華料理屋さんのある小道にさらに入ると、
そこが世にその名を轟かす、志な野、のはず。
後続のスーツ姿の4人組も、
「あの店、マジでヤッホーしか通じないからwww」
「マジッスかwww パネエwww」
と、会話の内容から察するに志な野行き。
期待に高まる胸を押さえながら、店の前に着いた瞬間、
目に飛び込んできたものは!!


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閉まっとるがなー! 月曜も閉まっとるがなー!
これだからホント男とインターネットは信頼できないのよ! あーやだやだ!

そして数十分後↓




その夜はネットカフェに泊まり、枕が無いので直接床を悔し涙でびちゃびちゃにしつつ、
僕は翌日の夜にリベンジを誓いました。
一日中歩き通してヘロヘロな体を銭湯の熱い湯で叩きなおし、
いざゆかん、志な野へ!!

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おおっ! 開いとる!! (←当然です)
最近ひよってて、実は1人珍物食はかなり久々。
緊張で震える手で、扉を開けます。

ガラガラッ 「こ、こんばんはー」

店主とおかみさん(※注:画像はイメージです)
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スッ(無言でこちらを見やり)
トントントントン(ふたたび作業へ戻る)

他のお客さん(※注:画像はイメージです)
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モグモグモグモグ
「やっほ」
「はーいやっほ!」

8席の店内はすでに満席でした。
震える声をなんとか絞り出します。

「え、えーっと、店の外で待てば良いですかね」

店主とおかみさん(※注:画像はイメージです)
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スッ(無言でこちらを)
トントントントン(無言で作業へ)

「あ、えー、じゃあ、外で待ちます」

店主とおかみさん(※注:画像はイメージです)
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スッ(無言)
トントントントン(無言)

「す、すみません失礼しました」 ガラガラッ 

一旦店を出ました。
まさかの完全無言接客です。
昼間、観光客慣れした金沢の方の接客を受けてきた身としては、
異次元に迷い込んだかのような錯覚を覚えます。

10分ほど待ったでしょうか。
先に入っていたサラリーマンらしき男性4人組が退店、
案内など何も言われませんでしたが、入れ替わりで入りました。
カウンター内側には入り口の側におかみさんが、
奥にはおやじさんが立っています。

一番入り口側端の席に座りました。
正直緊張していたのと、奥に他の団体さんが居て、
店の様子はよく見回せなかったのですが、
後ろ側の壁には、色紙に書かれたサインを縮小印刷したものがズラリと並んでいます。
ちなみに店内BGMは、延々ムード歌謡です。
突如おかみさんに声をかけられます。

「やーっほ!」
「や、やっほー」
「やっほーでいいですか?」
「はいやっほーで」
「はーい、やっほー1丁」

さて、皆さん、そろそろ何か違和感を感じはしないだろうか。
そうです。ここ、志な野では、

ほぼすべての単語が「やっほー」一言に置き換えられるのです。

これぞ珍スポットやー、と内心ビクビクしながら挑みました。
一応メニュー表はあるのだけれど、
大体自動的に「やっほー茶漬け」で押し切られる、という記事は正しかったらしい。
インターネット、たまには役立つ。
というかこっちもほとんど「やっほー」しか言えないので、
どうしたって注文は「やっほー茶漬け」にならざるを得ない、という縛り。
そして注文後わずか数分で、

「はーい、具やっほ!」
「お茶やっほ!」
「ご飯やっほ!」
「漬物やーっほ!」

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というわけで、おかみさんによってドンドンドンドーンと、「ヤッホー茶漬け」が目の前に登場。

写真ではごはんが少ないように見えますが、
茶碗がやや小さめのドンブリくらいあるので、
女性用茶碗1杯分くらいはあるかと思います。
要するに、結構な量です。
具は鮭・明太子・昆布・ジャコ・ワカメ・高菜……など。
漬物は3種類乗ってました。
ちなみに、ご飯とお茶はおかわり自由。


さて、ここで今回の金沢旅の目的を発表しよう。

それは“志な野でサインを残す”、たったこのひとつだけである。

サインとは何ぞや、と思われるかもしれない。
先ほど書いた、後ろの壁にズラーッと並べられたサイン色紙。
実は、7杯以上完食したらサインを残せるのである!!

これだけ叶えば、金沢に思い残すことは無い。
「ソントン、最近なんにもやってないじゃんかー、
 え、そんなんで生きてる意味あるの? このゴミ虫」
と言われ続けた汚名を返上するのだ。

実は私、早食いは得意なのですが、大食いは苦手。
今回は久々キツイ戦いになるに違いないと、
無理してぶっ倒れた時のためにと、一応今回は保険証も念入りに持参。
その上で事前にネットで情報を集め作戦を立てておいた。
(前日夜に、ネットの情報で騙されたことはもう忘れているチキンヘッド)

・具は味の単調さに飽きたときの非常策
・とりあえず、ご飯とお茶でいけるところまでいく
・お茶もできるだけ少なめで

我ながら完璧な作戦である。
諸葛亮孔明にも勝てるのではないだろうか。
ただ問題は、孔明だったらこんな店には絶対来ないというその一点だ。


さて実食。
「いただきますやっほー」
あ、言っちゃった、と思いながらまず1杯目。
ストレートに、ご飯にお茶だけをかけて頂く。
しゃかしゃかしゃか。

……美味い!

昼ご飯から何も食べずに腹を減らしておいたのだけど、
それでも美味いぞ、これ。
ご飯はいい感じの温度で、
お茶にはおそらく出汁が入っており、充分にこれだけでいける美味さ。
珍物食=ゲテモノ=8割くらいは味がヤバイ
という先入観があるためか、今回はすごく一気にいけた。

ドンブリを空けて、おかみさんに
「やっほー」と言いながら渡すと、
数十秒ののち、「はいやっほー」とおかわりが乗ったどんぶりが返ってくる。

ちなみにおかみさん、笑顔などという甘いものは一切無しである。
老獪な女スナイパーの目をしている。
一方、僕の注文が終わって、しばらくはやることが無くなったらしい
(具と漬物担当っぽい)おやっさんは何をやっているのかと横目で伺う。

店の奥で寝てた。

これだよ、これが珍物食だよ。
すげえハイパーな店だ。来て良かった。心から。


そのまま調子良く2杯目3杯目4杯目とかきこむ。
空腹なのもあって、楽勝である。

そしてここらで隣の団体さんが帰り始める。

「いや、おめえマジですげえな、5杯かよ」
「男の意地ッス」
「おなじ金大として」
「ウッス、負けられないッス」

と何やら体育会系の会話を交わしてらっしゃった。
僕はお腹ペコペコで来たけど、この人たちはもちろん飲み食いしたあとの締めだろう。
それで5杯と言うのはたしかに凄い。
僕も頑張らねばと「やっほー」と5杯目のやっほーコール。

さすがに味にも飽きてきたので、
とりあえず鮭を乗せてみた。塩気が効いていて美味しい。
やっぱ、これもしかして楽勝なんじゃね?

そう思った瞬間だった。
胃の中で、何かが広がる感覚が。

グッ!? ご、ご飯が、腹の中で、出汁を吸ってやがるだと……!? (心の声)

そんな感じで、5杯目後半で、すでに満腹になってしまった。
なんとかかきこみ、口の中にハムスターの如くお茶漬けを入れたまま、
6杯目のおかわりを頼む俺。退かぬ、退かぬぞぉっ!!

「や……やっほー」
「はい、やーっほ」

あれだけ一生懸命減らしたというのに、
目の前には再び元と同じ量のご飯。

走馬灯が回り始めます。
以前行った、名古屋のマウンテンで、
鍋スパ頼んだときに中盤からこんな感じだったなぁ。
友達が甘口抹茶スパゲティ頼んで、俺が鍋スパ。
img_1.jpgf3240cf2.jpg
(参考画像お借りしました→「TOKYO-Xのミニカー・グルメ・旅行なアンサンブル」様、「くいな式。」様)

ギリギリ完食できた帰り道、2人で大喧嘩したなぁ……。
「ソントンなんであんなバカみたいな量のやつ頼んだの!?」
「そっちこそ1人分も食ってねえじゃねえかよ!!」
友達、マウンテンのせいで新幹線に乗り遅れたんだもんなぁ……。
そりゃキレるわなぁ。
そう、すべては遠い日の思い出。

今は、目の前のこいつ(ヤッホー茶漬け)をやっつけなければならない。

というわけで走馬灯が回ってるうちに、6杯目を完食。
正直、めっちゃキツイです。
体が、物を飲み込むことを拒否するレベル。
目は白黒と。冷や汗はダラダラと。せっかく銭湯に入ったのに台無しです。

「やっ……おぇっぷ……」
「……」

おかわりの丼を出そうとした手が宙で止まってしまいました。
おかみさんがこの世への審判を下すかのような目で僕を見つめます。

天使が囁きました。
もうやめておきなさいソントン。あなたはよく頑張りましたわ。
今日なんて7時に起きて、美術館、カフェ、書店、古本屋3軒、と歩き詰めじゃないですか。
明日も5時の始発に乗って、本屋に2軒寄って、15時間かけて帰るのでしょう?
体に何かあるといけませんわ。ここらで、ね?

悪魔が囁きました。
なんにせよ、もう1杯頼んだ方が、……オイシイぞ?

「や、やっほー!」
「はい、やーっほ!」

よえー! 俺、オイシイって単語によえー! ってか天使よえー!

まったく進まない箸を無理矢理動かす。
一旦、漬物に逃げるという作戦をとる。
おにぎりの具では(主に、安い、という理由で)大好きな昆布を乗せてみる。
喉の入り口にすら入っていかないご飯。
今、俺の頬っぺたは、たぶんディジー・ガレスピーみたいになってると思う。
べっちゃらべっちゃらと食べる。
一杯目に比べて、かかる時間は100倍くらいになってたと思う。
それまでは店内に僕だけという孤独な時間だったのだけど、
途中でお客さんが1人入ってきた。
関西弁で、少し酔ってるのだろうかテンション高めの人だった。

「お兄さん、旅の人?」
「(虚ろな目で)あははは」
「俺も関西から来たんやけどな」
「(虚ろな目で)あははは」
「あ、おかあさん、前も来たことあるんですよ僕」
「やーっほ!」

……何ひとつ会話が成り立っていない。
おやっさんはまだ寝ているし。
駄目だ駄目だ。
僕が箸を動かして、
そしてこの夜に秩序という名の光を……もたらせねばっ!!



結果……



s_IMG_2641.jpg

というわけで、無事に7杯完食!
色紙も書いてきましたーっ!!
もう少し面白いこと書けよって感じですが、
ほんとにいっぱいいっぱいで、手は震え、冷や汗でペンは滑りと、
下手くそな字で名前を書くのが精一杯でした……。
いやほんと、食べられて良かった。まだ若いうちに行って良かった。
ごちそうさまでしたっ!!

また金沢行く際は寄りたいと思います。
そのときは今回聞けなかった、おやっさん名物
「やーーーーーーっ!」

を聞きたい。
あと、普通にゆっくり食べたい。

追伸、
しばらく、お茶漬けは、勘弁してください。



 
OFZK

山瀬まみ「ゴォ!」


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