20141022 Wed
喫茶 方向音痴


 低血圧の朝は辛い。低血圧で低気圧の朝はもっと辛い。
 今日は大事な約束があった。朝から雨。ほんと僕って雨男だよなぁ、としみじみ思う。起きなきゃなー、用意しなきゃなー、と思いながら二度寝。昨晩は緊張につきよく眠れなかった。昼前までウニャウニャゴロゴロして、シャワー浴びて、トースト食べて、服をさんざ迷って劇場版のドラえもんのごとく部屋をとっ散らかし、つまるところ寝癖さえついてなきゃ大丈夫なんだよ多分、と結局ギリギリに家を出た。

 もしかすると待ち合わせ場所周辺は晴れてるかも知らん、お頼み申したぞ道真公! と小学生のような望みをかけたものの、電車で20駅も行かない場所で気圧配置が変わるはずもなく。待ち合わせ時間少し前には駅へ辿りついた。そぼ降る雨に濡れて肩をすぼめながら歩くこと百メートル。僕が喫茶店に来るときは大抵雨が降っているような気がする。
 毎度、この喫茶店を待ち合わせに指定されるので、分かってはいたはずなんだけれど、やはり階段の前でしばし躊躇した。とりあえず傘をたたんでみる。目の前にはたしかに階段がある。これをのぼれば喫茶店には着く。単純なことだ。小学生にも分かる理屈。
 そんな理屈を屁理屈に捻じ曲げてしまっているのは、階段が15階までひたすら続いているという現実だ。
 いやさ、小学生なら一気に上れるだろうけどさ、三十路前の男にゃただただキツイだけだぞ、っていうかさ、バリアフリーとかさ!!! といつものように気合を入れて、階段を駆け上った。まぁ、威勢が良かったのは4階あたりまでだったのは言うまでもない。

 息も絶え絶えに15Fに辿りつく。残念ながら、勝負はまだ始まっていないのだ。鉄球を付けたように重い足を引きずり、建てつけの良いスイングドアを開けた。湿った木の匂いがまとわりつく。
「いらっしゃいませ」
いつもの店員さんがゆったりとした口調で迎えてくれた。名札が無いためにいまだに名前は知らない。目の下あたりで真っ直ぐに切りそろえられた黒髪、クラシックなメイド服にも見える制服。なによりその肌の色。人形よりも血の通って無さそうな、白。
「あの、待ち合わせなんですけど」
「はい、承知しております、お連れ様は」
 頼む、今日くらい、優しくしてくれても
「一番奥のお席でお待ちです」
 やっぱり非情なのな。

 最低限の言葉だけで歓迎は終わり。店員は、レジカウンターの横に置いてあったカンテラを持ち、ついと先を歩き始めた。ミシと床が鳴る。あわてて後を追った。店の奥へと進む。下りの階段がある。降りたところで左右に通路があるのが見える。道幅も天井も狭い。周囲は木の板が打たれている。薄い板だ。踏むたびにきしむ音がする。キイキイ。店員が左に曲がる。それに続く。上りの階段。ミシリミシリ。通路に、窓は無い。灯りも無い。階段の先は闇である。どこまで続いているのか、まったく分からない。階段を少し上ったところで店員がカンテラに火を入れる。ちょうど二人分を包む暖かな光。階段を上り終わったところで、左右に道が分かれている。右へと進む。下りのスロープになっている。大回りに左に曲がりながらゆるやかに道は下っている。いや、いつのまにか体が自然と前のめりになっている自分に気付く。とすると、これは上りか。やや右に体が傾いた気がして、壁に手を付く。前を行く店員の姿勢はまったく崩れていない。自分だけの錯覚なのか、しかし重心が右に寄っていく感覚はどこまでもどこまでも続く。道が捩れているようだ。どんどんと捩れはひどくなる。狭い通路。景色はまったく変わらない。三半規管が変になりそうだ。いよいよ右手に力をこめなければならなくなったとき、通路の先に再び分かれ道が現れる。右へと行く上りの階段。左斜め下へと行く下りの階段。どこまで続くのか、真っ直ぐの上り階段。ギシギシ。店員はそのまま真っ直ぐに進む。真っ直ぐ、ただ真っ直ぐ。あとを追う。なんだか体が後ろに傾いていく気がする。はたしてこの階段は真っ直ぐに上っているのか、前を行く店員を見る。店員の姿勢は一向に変わらず淡々と前へ上り続けている。後ろを振り返った。さきほど分かれた道が、45度ほどに傾いて見える。やはり、この階段は反っている。このまま行けば重力にしたがってどこかで頭から落ちてしまう。はずだが。再び前を向く。やはり店員の姿勢はまったく変わっていない。淡々と前へ進む。
 はじめてこの店に来たときに教えてもらったおまじないを、また今回も使わなければいけないようだ。目をつぶった。自分がどこにいて、どの方向へ向かっているのか、まったく分からなくなったときのおまじない。目をつぶったまま、3つ数え、開ける。店員がさきほどより少し進んだ場所を歩いている。その背中だけを見て、進む。体が後ろに傾いた感覚は、もう無くなっていた。木製の螺旋階段が現れた。上下どちらへも行ける。どこまで上るのか、どこまで下るのか。はたしてそれは、外界でいうところの上なのか下なのか、もはや僕には分からなくなっていた。
 何本の分かれ道を通ったのか。どれくらい階段を上り下りしたのか。この右はあの右なのか、この左は例の左なのか。三次元座標での現在地を完璧に見失った頃、ようやく通路の先の小部屋に、別の灯りが見えた。店員は入り口で脇に寄って、僕を先に通してくれる。僕を導いてくれたカンテラは、部屋の入り口近く、邪魔にならないところに置かれた。
 先にテーブルの上に置かれていたカンテラが、待ち合わせ相手の顔を照らす。改めて見ても小憎らしいくらい整った顔立ち。読んでいた本をテーブルの上に置き、メガネを取る。ふー、と、タバコの煙を吐くように、細い長いため息をひとつ。黒目の大きな瞳が、こちらを向いた。いつも少しだけ不機嫌そうに見える表情からは、何を考えているのかまったく窺い知ることが出来ない。女性にしては低めの、冬毛キツネの前脚のような感触の声が、抑えたボリュームでこぼれた。

「……遅いよ」
「アホか! そりゃ遅れるわ! 毎度毎度一番奥の席ってなんの嫌がらせなんスか!!」
「だって寝癖さんの嫌がる顔、見たいんだもん」

シンプルなわがままは正論をぶっ倒す。
丁目 伎梨(ひのとめ あやり)のやり方はいつだってそうだ。

「じゃあ!じゃあ!すみません、とんこつラーメンにんにく増し増しをください!
 この小部屋を肉と脂の匂いで一杯にしてやりますよ! ぐはははは!」
「嫌がらせの相手を間違うことほどバカなことは無いよ」
「じゃあーあー!……すみません、ホットコーヒーで」
店員が小さく「かしこまりました」とだけ言って下がる。さすがに歩き疲れていたので、くたりと椅子に座り込んだ。ボロボロの僕の様子を見て伎梨さんが不機嫌そうな顔をしまい、実に楽しそうにニッコリと笑った。
「ごめん、ちょっと走って喉渇いたので、水をもらってもいいですか?」
「はい、どうぞ」
もちろん芋焼酎のロックだった。盛大に吹き散らかした。
「きたねーな!」
「子どもなら急性アル中で死んでるぞ! 水をくださいって言ったでしょうが!」
「これが、私にとっての、水なんだよ」
ほぼほぼ連日酒宴を行なう伎梨さんがそうと言うなら、そうなのだった。
 どこをどう通ってきたのか、あっという間に運ばれてきたホットコーヒーと、水のしたたる焼酎グラスで乾杯。何かが間違っている気がするが、この場ではあくまで僕の気のせいなのである。
「で、今日は何の用事ですか?」
「寝癖さん、最近なんか面白いことあった?」
「え?」
「うん?」
「それ用事?」
「うん」
「それだけ?」
「うん、悪い?」
迫っている締め切りがいくつかあるんだけど、と僕の口が良いかけたのをあわててつぐんだ。とにかく伎梨さんとの待ち合わせは常に大事な約束なのだ。もうこれは絶対。伎梨さんはこの世の真理を司る神のような人なのだ。と、僕は信じ込んでいる。周りはどうあれ信仰とはそのようなものなのである。と、無神論者の僕は思う。椅子に思い切りもたれかかって、これまで浮かべたことの無いような嫌そうな顔をして。
 「いやー、寝癖さんの嫌がる顔って、やっぱ良いよねー」
うなづきながら、まったく小憎らしいくらいに整った顔で、楽しそうに伎梨さんが笑う。うん、まあ、この顔をまた見られたというだけで良かったのだよ。ほんとに。
 伎梨さんの笑い声の隙間、どこかで木の板を踏む音が聞こえた、気がした。




20141021 Tue
舞台 青年団 『暗愚小傳』 を観ました


青年団 『暗愚小傳』@吉祥寺シアター を観ました。

高村光太郎と智恵子の生活を素材に、変わりえぬ日常を縦軸に、文学者の戦争協力の問題を横軸に、詩人の守ろうとしたものを独特の作劇で淡々と描く・・・。
平田オリザ90年代初期の名作、10年ぶり、三回目の再演。
青年団ホームページより)


 10年前に小劇場にはじめて足を運んで衝撃を受け、以来、年に10~30本くらいは舞台を観てると思います。最近は特にそうなんですけど、知り合いが出演している舞台を観に行くことが多いので、有名どころにはあまり足を運ぶ機会がありませんでした。柿喰う客を観に行ったのもごく最近の1回きりですし。青年団も今回が初めてでした。
自分の知識と理解(+Wikipedia)なんで間違ってる部分もあるかと思いますが、青年団は1983年に旗揚げして以来、ずっと途切れることなく活動している劇団です。夢の遊眠社や第三舞台など、動きや声量が大きく派手なものが人気であった80年代の小劇場舞台のなかで、青年団は“静かな演劇”を標榜し、現代口語演劇と呼ばれる方法で舞台を作りました。代表は平田オリザさん。アルバイト書店員といたしましては、小説『幕があがる』や新書『わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か』が話題になったことも記憶に新しいです。
と、僕がつらつら書くまでもなく、平田さんや青年団の活動については、想田和弘監督のドキュメンタリー映画『演劇1・2』を観れば、大体分かって頂けると思うので、ぜひご覧下さい。面白い映画です。1は舞台(特に青年団に関して)の本番がどういう風に出来上がっていくか分かりますし、2の方では平田さんの超人的な活動が垣間見れます。ほんと、人畜無害で温厚そうに見えて、すごい熱量を持った人です。

 舞台の感想を簡単に。「現代口語演劇はややこしいよ」ってよく聞いてたんですけど、これまでいくつかややこしい演劇を観てきたので、そうでも無かったです。現代口語演劇といえば“同時にいくつかのセリフが飛び交う場面”ですが、ジエン社の方がもっと訳分からんかったし。背中を向けたままでセリフを言うとか、今じゃよくあるし。リアルに近い演劇、とは言うけど、あくまで演劇なんで、演技のお約束っていうのはやっぱりありますし。僕が前評判とか伝説とか聞いて身構えてたこともありますが、観づらいなんてことは全く無かったです。
 ストーリーはあらすじにあるとおり、高村光太郎を主人公として、智恵子が亡くなる前後を描いたものです。日常で起こったちょっとしたドタバタを切り取った、という感じ。舞台は光太郎宅のダイニング(のような場所)のみ。そこに次々出入りをする人たちの会話が続いていきます。
 恥ずかしながら、高村光太郎の著作はひとつも読んだことがありません(青空文庫にも入っているのに……)。彫刻作品の『手』を観たことがあるくらいです。なので今回の舞台を観ただけで言うんですけど、すごく温かな、だけど芯のところでは頑固というか偏屈というか、そういった印象のある人だと思いました。
 特に感動したのは、ラストのシーンです。ネタバレですみませんが、死んだはずの智恵子と、そしてこれも生前に親交のあった宮沢賢治が、光太郎のいる部屋へとごく自然に入ってくるんですね。特に智恵子は死ぬ直前の頃に、光太郎に「旅行に行きたい。馬の居るところがいいな」というようなことを言っており、そのときは室内で馬の格好(四つんばい)をさせた光太郎にまたがってグルグル回る、といった遊びをやったのですが、ラストシーンの幻想のなかでは、光太郎みずから四つんばいになって智恵子を誘い、智恵子もただまたがるだけではなく、しがみつくように光太郎の背中に乗ります。その二人の、いまや夢の中でしか出来ない親密さ、にグッときました。

 普段の青年団がどういう感じなのかは知らないんですが、今作では笑える仕草・セリフが多くて、観てて全く退屈しませんでした。っていうか、もっと早く観に行っていれば良かったなー、と思ったくらいでした。またぜひ観に行こうと思います。光太郎の著作も読みたいと思います。




20141016 Thu
「本を読まなくなったへそくんに 本をススメてみる人たち」に参加しました


横浜の喫茶へそまがりにて行なわれたイベント、
「本を読まなくなったへそくんに 本をススメてみる人たち」に発表者として参加しました。

今回は、要はビブリオバトルみたいなものだったんですけど、
公式ルールは適用せずに、自分達で試してルールを作りながら進行、
終始アットホームな雰囲気ですごく楽しかったです。

へそさんからリクエストされたテーマは、
 “本を読まなくなった人に薦める”
 “1日あれば読める”
 “文字の本”
ということでした。

1人2冊紹介することができ、僕がオススメしたのは、
 最相葉月『なんといふ空』
 笹井宏之『えーえんとくちから 笹井宏之作品集』
でした。

前者は、ノンフィクション作家、最相葉月さんの書いたエッセイ集。
一遍が3~4ページしかなく、サクサクと読めます。
けれど、一番初めのエッセイ「わが心の町 大阪君のこと」が、わずか1200文字程度にして、
映画『ココニイルコト』(145分)の原作になったことからも分かるように、
1作1作が、じんと沁みるように濃い。けれど、狙ってる感じはなくて、ただ見たままを書いている感じ。
僕の場合。ものすごく死にたいなぁ、と布団の上で鬱々していた日に、
たまたま手を伸ばしたらこの本が枕元にあって、読み始めたら止まらず、
一気に読み終わって、もうちょっと生きてみるか、と思わされた本です。命の恩人ですね。

後者は夭折の歌人、笹井宏之さんの歌集です。
日本SFは、伊藤計劃の登場によって新しい時代へと突入しましたが、
僕の中の現代短歌は、笹井宏之との出会いによってずいぶん幸せなものになりました。
文字数にすると十分一日で読めますが、僕はじっくり読んだり何度も読んだりで、
読了までにずいぶん時間がかかりました。
まずタイトルからの、1首目でやられます。
この本の中で僕の一番好きな歌は、
 この森で軍手を売って暮らしたい まちがえて図書館を建てたい
です。


他の皆様がオススメしていた本は、
 クラフト・エヴィング商會『クラウド・コレクター』
 筒井康隆『原始人』
 ラッタウット・ラープチャルーンサップ『観光』
 ニール・ドナルド ウォルシュ『神との対話―宇宙をみつける自分をみつける』
 南直哉『老師と少年』
 会田誠『青春と変態』
でした。どれも面白そうやったよ!
実際、『クラウド・コレクター』と『観光』は読んだことあるんですけど、げっちゃ面白いッス。
『クラウド・コレクター』を紹介された方が、
「ゲームの取説や設定資料集を読んでいる感じ」っておっしゃってて、
それー! って思いました。

へそくん賞は、会田誠『青春と変態』
お客さん賞は、筒井康隆『原始人』
でした。



千代田区のビブリオバトルでは終わってすぐに解散になってしまったけど、
今回は参加されてた方たちと、じっくりお話をすることが出来て嬉しかった。
やっぱ僕、本が好きな人のことを、好きです。

「本にコーヒーってのはもうあるし、店をやるんだったら、本の他に何を付ければ良いのか」
っていう話題には、思わずそうそうって思った。僕も最近よく考えてた。
文房具・コーヒー・音楽・アート、ってのはもうよくあるので、
本屋×プロレスっていう伝説のイベントをやった、伊野尾書店を思い出したり。


僕の、一番好きな本屋はどこですか?という質問に
「ガケ書房」っていう答えも。
そう、恵文社より、ガケなんですよね!
僕もガケの方でいっぱい買ってしまいました。

ここしばらく悩んでいた、「大きい本屋と小さい本屋では仕事はどう違うのか」
っていう疑問にも、色々と回答を頂いてスッキリした。
どこかで聞きたいと思ってたんだけど、今まで機会がなかったもんで。

皆さん、本好きなんだなーっていうのがガシガシ分かって、
出来ることならずっとずっと話していたかったー!

また近々本に関するイベントをやろうみたいな流れにもなって、すごくワクワクしたし、
まず、本好きの人たちと知り合えたのも嬉しかった。
参加して本当に良かったです!



へそまがり、ほんとに良い場所。
横浜に行ったら、中華街よりまずへそまがり。これ決まり。




20141014 Tue
「本を読まなくなったへそくんに 本をススメてみる人たち」に参加します


古本棚を置かせていただいている、横浜 喫茶へそまがりにて行なわれる、
「本を読まなくなったへそくんに 本をススメてみる人たち」というイベントに出場します。
以下、詳細をへそまがりのホームページより引用
http://toshiokake.exblog.jp/

2014/10/16(木) 19:30~
チャージ500円(持込自由 喫茶注文なし)

出場者
オンライン古本屋TweedBooks店主 さん
ヴィレッジヴァンガード 花田菜々子 さん
へそまがりゲストハウス管理人 シンジ さん
空想現実古書店 ミラーボール回ラズ 店主ソントン さん

条件
文字の本
1日あれば読める本

進行
へそくんとお話タイム(嗜好・人柄把握のため 出場者みんなで15分)
オススメ本プレゼンタイム
・出場者1人1冊 へそくんにプレゼン1分
・へそくんとお客さんから質問タイム 1〜2分
・次の出場者へ
・以上を1出場者2回ずつ

読みたくなった賞 投票&決定
祝福してゆるゆる座談会へ(20時半ごろ)(自由解散 22時閉店)
後日 ★へそくん読んでみてよかった大賞★ 発表



店主のへそさんが、Twitterで、
“「自分がお客さんだったら」という視点で、
 ベストメンバーとも言える4人の出場者さんたちを選ばせていただきました。”
という風に呟かれており、恐れ多すぎて胃が痛いです。
だって僕、へそさんの前で、『BLUE GIANT』読んで泣いたり、
ジャズ入門みたいな本読んで、コーヒー1杯で3時間ねばったり、しかしてないよ……。
そういう、唯我独尊的な自分勝手な態度が、へそさんの何かに引っかかったんだと、思いたいです。
せっかくなので、古本棚ミラーボール回ラズにも補充しようと思います。
懲りずに、エロ本を。

この前のビブリオバトルで、自分が紹介した本が勝つかどうか、っていうよりも、
他の人がどういう本を紹介するかがかなり面白い、っていうのがあるなと思いました。
今回のテーマが“本を読まなくなった人に薦める” “1日あれば読める本”ということで、
僕も最近めっきり本を読まないでいるので、もう楽しみでしかたないです。
皆さんのオススメ本をガッツリメモして、意気揚々と帰ってきたいと思います。


へそまがり、ほんとに良いお店なので、ぜひとも一度足を運んでみて下さい。
で、もし良ければ、今回のイベントにぜひ。お時間よろしければ遊びにきてください!




20141010 Fri
ビブリオバトル@千代田図書館に参戦しました。


ビブリオバトル@千代田図書館に参戦しました。
(→参戦予告日記

バンドを辞めて、舞台を止めて、たぶん人前に立たせてもらったのはそれ以来じゃないかな、と思います。
ビブリオバトル初参加(見るのも初めて)にして初参戦、しかもトップバッターという。
前に某所でエアギターやったときもくじ引きでトップバッターだったし、こういうときのくじ運が異常です。
めっちゃ緊張しました。自分の発表はわちゃわちゃになってしまいましたけど、楽しかったですよ。
他の参加者さんも、スタッフの方も、すごく良い方ばかりで。
聞きに来てらっしゃったお客様も、ニコニコ聞いてくれて。
出てよかったです。ありがとうございました。

僕が紹介したのは、
 西園寺 マキエ『稼がない男。』
という本でした。
発売された当時、書評欄でも取り上げられたみたいで、検索すると記事がけっこうヒットします。
ただ、僕は書評欄などは見ずにこの本と出会ったんですけど、
その必殺のエピソードでも勝てませんでした。悔しい。
必殺エピソードを話してから、本の内容紹介したんだけど、構成を逆にした方が良かったかも。
やっぱ、レジュメはちゃんと作らなきゃダメですね。
もしくは、そんなもん必要ないくらいにアドリブ・トークスキルを磨くか (無理)。


気になる結果ですが (★が決勝進出本です)、

第1ゲーム
西園寺 マキエ 『稼がない男。』
ジュール ベルヌ 『神秘の島』
★宇野 浩二 『苦の世界』
今野 円助 『柳田国男随行記』

第2ゲーム
紀田 順一郎、荒俣 宏、ほか 『コンピューターの宇宙誌』
岡 潔 『春宵十話』
有川 浩 『シアター!』
谷川 俊太郎 『ことばを中心に』
★筒井 康隆 『残像に口紅を』

発表者も自分以外の人に投票します。
もう読んだことのある本が何冊かあったので、それ以外に入れました。
岡潔 『春宵十話』を発表した方のエピソードが凄まじすぎて良かった。
僕の神保町エピソードを吹き飛ばすくらい。
いや、だって、たまたま岡潔の家を見つけたからって、家に入って本人に会うとかさ、すごいッス。

いつものごとく一回きりで満足してもういいやー、ってパターンかと思いきや、
早くもビブリオバトル次回参加が決まりました。しかも来週です。
また改めてお知らせいたしますね。



以下自分用に、反省とかメモ

・今日はあれだな、本名で出たのも良くなかったな (←負け犬の遠吠え)。
人前で何か喋るとき用の役とかキャラを用意したい。
今日は中途半端なままで行ってしまった。
なんかもう、名前とか出身地とか衣装とか考えるくらいの勢いでやる。
永島寝癖、とか、本野紙魚、は出してしまったし、ナカイデソントンはもはや素に近いし。
新しいの考える。関西弁で喋る系のキャラ。もう人前に出るときはそいつに任せる。

・一人語りのぶっつけ本番はスキル的にも才能的にも無理だと思った。
次回はレジュメみたいの用意したい。
今日もメモは作ったんだけど、ちょっとおおまかすぎた。台本に近いものくらいまで書く。
当然台本は、覚えず見ずに、本番は喋ります。
僕はたぶん、頭の中で組み立てる、っていう作業が苦手or出来ないんだと思う。
実際手を動かす・やってみる、じゃないと出来ない・覚えないタイプ。ダメなコ。

・上手い書評とイマイチな書評の違い、考える。
上手いオススメの仕方とイマイチなオススメの仕方の違い、考える。
本を選ぶ決め手、っていうのは何なんだろう。

・終了後に、紹介した本を展示するのでPOPを書いたんですが、
ビブリオバトルとPOPの違いをふと考えることになった。
音楽で例えると、ビブリオバトルはライブで、POPはCDっていう感じかも。

・ビブリオバトル、多分、簡単に開催できるんで、やりたい人はガンガン勝手にやっても良いんじゃないか。
ブッキングマネージャーが本好きな人を集めて、集客するの。まるでライブ。
知ってる人同士でやっても、「あ、こいつ意外な本読んでる」とかあると思うし。
同じメンツでやってばかりじゃ飽きるってんなら、
毎回ゲスト的な知り合いを誰かがつれてくるとか、そういうのもありかも。

・今回みたいな公共のイベントだと、コミュニケーションツールっていう感じではあまりないなぁ、とも思った。
けど、来週出させてもらうのが、こじんまりした感じになりそうなので、
それだとどうなるか、今から楽しみです。

・極めたいとか、一番になりたい、っていうのがあんまりなくって、
ずっと新しいことでドキドキしていたいんだな僕って、と改めて思いました。
たぶん、ひとところで、じっとしていると死ぬんだと思います。お前はサメかと。飽きと戦う日々。



僕は、ヴィレッジヴァンガードの子どもというか、遺伝子が入ってるというか、
選びたくなる本が全部ビレバンっぽいんですよね……。
その点でも、来週はまた緊張することになりそうです。ドキドキ。いいよドキドキ感。

さて、色々書きましたが、
来週のビブリオバトルは5冊用意しなきゃいけないので、またアドリブでいきます。
人の言うことは聞きません、反省も活かしません。イッツ マイ ライフ。ノー モア マスターカード。




20141005 Sun
ソントン、ブログの更新減らすってよ


 1ヶ月ほど毎日ブログを更新してきましたけど、不定期更新に戻そうと思います。日々読んで下さってる方には感謝の雨あられを押しつけたいです。本当にありがとうございます。ブログを止めるわけではなく、8月までのように、また面白いことをやるとき・やったときに、ちょいちょい書いていきますので、読んで頂けると嬉しいです。

 先月のアクセス数の増減と記事を見てて、(そもそも一日30人も見て下さっているのというのが信じられないんですけど)、やはり、何かライブやイベントの紹介をさせてもらった日がアクセス数が多い傾向がありました。特にタイトルに具体的な名前(○○さんのライブ、○○というマンガを読みました、とか)が入ってるとアクセス数が伸びますね。検索に引っかかりやすいのもありますし、ブログを更新するとTwitterにあがるようにしてあるので、それでリツイートしてもらって閲覧数が増えるというのもありそうです。

 図々しいこと言うようですが、やっぱりせっかく書いているので、出来るだけ多くの人に読んでもらいたいというのが本音です。そもそもしっかりとブログを書き始めたのは、とある面白い舞台を紹介したかったんだけど現実で舞台に誘えるような友達が居ないのは言うまでもなく、さらにはネットでの僕の発言力はあまりにも弱くて、その団体を応援したくてもクソの役にも立たなかった、ということがあったからです。応援するためには、何回も見に行ったりしてお金を落とすのが一番手っとり早いのは分かっているんですが、残念ながら僕にはお金がありません! なので、せめてブログで応援したい対象のことを書こうと、思ったのが始まりでした。けれど僕は生来の目立ちたがり屋ですので、ブログにオリジナルの文章なんかも載せ始めてしまって、果たして自分が面白いと思うものを紹介したいのか、はたまた自分自身が面白くなりたいのか、よく分からなくなってきました。ぶっちゃけ言ってしまうと、両方なんですけどね。何にしても、いつまでも、二兎を追い続けたいと懲りずに思っています。

 頑張って1ヶ月ブログ更新してみようと思って、まあ途中でお知らせだけの日があったり、YouTube貼っただけのような日があったりしましたが、なんとか達成できました。ブログに慣れてる人からすれば、たった1ヶ月、って感じなんでしょうけれども。とりあえず、量の目標は達成できたので、じゃあ次はどうしようかな、と考えているところです。iPhoneでTwitterを見るのを止めたおかげでブログを更新し続けることが出来た、という部分もあるので、Twitterもブログも制限したら、もしかすると他に何か出来るかもなーと。でもそれって、いつものダラダラしてる僕と変わらないような気もするんですけどね。
 頑張ります。何かを。期待しないで待っててください。




20141004 Sat
書店員の仕事を紹介するよ!


こんにちは。アルバイト書店員のソントンです。
僕たちの普段の仕事を紹介させて頂きたいと思います。

今日は僕の先輩、マコトさんが担当している仕事を紹介します。
ちなみに“マコト”という名前は、このブログにご登場いただくときの偽名で、
マコトローズという複雑怪奇な折り紙を一瞬にして折れるというところからきています。
それほど手先の器用な方です。

ちなみに僕は普段フロアで、主に電話番をしています。
内線がなったら取る、というサルでも出来る仕事です。
あとの仕事は後輩のツンタローに全部押し付けています。
俺みたいなやつが雇われてりゃ、そりゃ人件費削れみたいな話もでるわな、とよく思います。

さて、僕が今日も日がな一日ボーッと電話の前に立って、
電話が鳴ったときだけ適当に仕事をしていると、
事務所からの内線がかかってきました。

「お疲れ様です、マコトさんってフロアにいらっしゃいますか?」
「いえ、昼休憩に出てます」
「では伝言をお願いします」
「分かりました。なんでしょうか」

「藁が届いてます」

「……は?」
「ですから、藁が届いてます、と伝言をお願いします」
「すみません、それは暗号ですか? それとも“(藁=(笑)”みたいなネットスラングのことですか?」
「いえ、本当に藁が届いてます。ではよろしくお願いします」

それだけ言うと事務の方からの電話はガチャリと切れました。
まあいいや、とりあえずマコトさんに聞いてみれば分かるだろうと、
マコトさんを待っていると、すぐにマコトさんがフロアに戻ってきました。

「すみませんマコトさん、事務所から「藁が届いた」っていう奇怪な電話があったんですけど……」

「あ、あれだな。行ってくるわ」

即答して、事務所へと向かうマコトさん。
なんなんでしょうか。また僕が知らない間に新しい用語が出来たというのでしょうか。
いい加減、心を閉ざしていないで他のアルバイトの方々と交流を深めて情弱を脱出しないと、
マジで人件費云々の問題で首チョンパになりかねないな、
と悶々としていると、マコトさんが事務所に行って帰ってきました。

藁をかついで。

「いやいやいやいや、え? ……え?
「なにかね?」
「あの、マコトさん、それって」
「藁だが」
「見りゃ分かりますよ」
「実家から送ってもらいました。店に、直送で」
「直送て、そりゃ事務所もビビりますよ。で、今度は何を作るんですか」

「鳥居と注連縄作る」


書店員の仕事 その1
<鳥居と注連縄をつくる> 

作業内容
・イメージの元になるサンプル画像を探します
・図面を引き、ダンボールを切り出し、組み立てて、鳥居を作ります
・藁を編んで、注連縄を作ります
・完成です


そしてこちら↓が、先に完成して、今バックスペースに鎮座している鳥居です。
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(画像はマコトさんのFacebookからお借りしました)

今日、マコトさんは売場の隅に座り込んで、藁を編みこんでいました。
絵的には完全に、伝統工芸の作業体験コーナーでした。
マコトさんは「やっぱ昔の人はすごいなー!」と感心しながらも、立派な注連縄を作り上げていました。
僕は心の中で何度も、ここ書店だよな?俺たち書店員だったよな?、と自問自答を繰り返しました。

マコトさんからのアドバイス
「注連縄は買うものじゃない。編め」



すげえなぁ、書店員ってのは注連縄も編めなきゃいけないんだなぁ、と、
閉店後の棚整理をしながら、不器用は転職するしかないなぁと思っていると、
一緒の遅番シフトだった黄さんが向こうからやってきました。

「マコトさん、今度は注連縄作ったみたいですね」
「そうなんですよ、書店員って注連縄作れなきゃいけないんですね」
「いやいや、そんなわけないですよ」

と、黄さんがブンブンと振った手に持っていたのはもちろん、剣の柄でした。


書店員の仕事 その2
<スチロールを削り出して、原寸大の剣の柄をつくる> 

・マンガ『七つの大罪』コーナーがすこし淋しいことに気付きます
・図面を引きます
・スチロールを削り、ヤスリで仕上げます
・完成です


ちなみに黄さんは以前、『王様達のヴァイキング』に登場する、
ノートパソコンのステッカーを全部切り出して再現するという、
僕なら絶対に気が狂ってしまいそうな細かい作業をやってのけた人です。
(詳細はこちら→ 「魔法が使える書店員? カッター1本で漫画世界をリアルに再現!」

弊店のコミックコーナーにいらっしゃったお客様が、
「このパネル、出版社が業者に依頼して作ったんだろうなー」
って思っているであろう物品はほとんど、黄さんの手作りです。

マコトさんと黄さん、手先器用ツートップの仕事、ぜひ弊店でご覧下さい。
手先不器用王の僕はもちろん転職を考えております。




20141003 Fri
10/10 「ビブリオバトルin神田古本まつり 予選会」 に参加します


10/10、千代田図書館で行なわれる、ビブリオバトルに参加します。
いや、参戦します。バトルですし。本名だって晒します。公的行事ですし。
お時間ありましたら、緊張で顔が引きつってるソントンを笑いに来てください。

日時 2014年10月10日(金) 19:30~21:00 19:00開場
場所 千代田図書館9階=特設イベントスペース
定員 観覧者:40名/事前申込不要・当日先着順・立見可

紹介される本のテーマは“神保町で出会った本”ということで、古書・新刊の制限はなし。
もう、ツワモノしか集まる予感がしません。怖い。
そんなツワモノの1人である、
東京図書館制覇!」という、23区の図書館をすべて紹介し続けているホームページの管理人、
竹内庸子さんが参加されると知って、腰が引けました。それでも頑張ります。
ちなみに僕の戦いは、早めに納品作業を終わらせて残業せず、
受付時間までにチャリで駆けつけるというところから始まります。
金曜は納品が吐くほど多いのです。

この前朝礼で、新刊『妖怪ウォッチダンスDVDブック』のお知らせをしたのですが、
たった30秒ほどの時間で、冷や汗が止まらず手先は震えて吐き気でゲラゲラポーでした。
ビブリオバトルの持ち時間は5分です。5分なんて永遠に近いです。
僕は最近、1分、いや、20秒以上、つづけて喋ったことがありません。
なのでビブリオバトル終了後、喋りすぎが原因で灰になるかもしれません。

去る9/13、予選の1回目が、僕のバイトしてる店で行なわれました。
在庫を取りに行ってきます、と偽ってちょっと盗み聞きしたのですが、
タイトル聞いただけでもめっちゃ頭良さそうな本が紹介されてました。
さすが神保町だと。本の虫が集う街だと。

ところで今回、私、スーパーライトなエッセイを紹介します。
頭良さそうな本なんて読んだことねえもん!
はじめの4分30秒くらいはこの本と出会ったエピソードで埋めて、
あとの30秒は奥付を読んで時間を使い切る作戦に出たいと思います。
嘘です。一生懸命やりますんでよかったら見に来てください。
終了後は、ほとんどの店が閉まった神保町に繰り出しましょうぜ。



万が一もないと思いますが、この予選会で勝ったら、
11/1の決勝戦で、本当のツワモノ達との戦いに巻き込まれることになります。
喜国雅彦、北原尚彦、小山力也(通称:古ツアさん)、玉川重機。
名前を知ってる人しかいないというレベル。怖いよ母さん。

決勝戦は今年も行なわれる神田古本まつりの一環です。
メインは11/1~3の三日間で、すずらん通りが本や食べ物の屋台で埋め尽くされます。
今年もまた、河出・筑摩・国書・早川ブースの前は黒山の人だかりができることでしょう。
一週間前からは、靖国通り沿いに古本の屋台が立ち並び、古本猛者たちが蠢きます。
ご年配の猛者の、あの体幹の強さ、フィジカルバランスの素晴らしさ、凄すぎますて。

去年買いすぎた(3日間とも出勤だった)ので、だいぶ反省はしています。
今年こそ、文藝春秋・小学生全集の『黒馬物語』がみつかりますように!!
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この三日間は、個人的に神保町で一番好きな時期です。理由は賑やかで楽しいから。
2番目は年末年始。理由は人がいないから。
おいでませ神保町。




20141002 Thu
『書店男子 ~メガネ編~』


 少し前に、『書店男子 ~メガネ編~』という本が発売になった。略して『書店メガネ』とさせて頂く。
(出版社の特設ホームページ→ http://www.libre-pub.co.jp/shoten_megane/
写真集「書店男子~メガネ編~」写真集「書店男子~メガネ編~」
(2014/09/26)
安藤青太

商品詳細を見る

 この本は書店男子シリーズ(?)の第二弾で、実は前作『書店男子』には僕も載っていたりする。お近くの書店さんでチェケラして頂けると嬉しい。献本で頂いた1冊は実家に送ってしまったので、僕の手元に現物が無いのだが、写真がかなり美肌加工されていて、自分の偽者のようで面白かった。
 前作で僕と一緒に掲載されたツン・タローさんは、その圧倒的なイケメンっぷりにより、掲載後様々なメディアに取材を受けている。ちなみに今作『書店メガネ』の表紙にデカデカと載っているのが、東のイケメン・ツンさんに対する西のイケメンこと、アニメイト大阪日本橋店の内田裕也さんである。顔も確かにかなりの美形だけれど、それ以前に名前がズルイと思う。ロッキンロールすぎるではないか。
 前作での僕の起用はどう考えても何かの間違いであったことは確かで、ツンさんのバーターという意見が多数を占めている。たとえ誰が何と言おうと、僕がそう思っている。僕の担当する棚のそばにはずっと、前作『書店男子』が15冊くらい平積みになっていて、カップルや女性2人組のお客様がサンプルを手に取り、あーだこーだと品定めをしているときは棚に近付きづらかった。品定めだけならまだしも、
「えっ、このフロアの店員さんが載ってるらしいよ!」
「あ、このイケメン、テレビで見たー!」
「どこに居るんだろうねー?」
「もう1人のほうはなんだろうね」
「無いよね」
という会話はお控え下さい、もう1人のほうここに居ます。と何度思ったことだろう。

 もちろんツンさんは今作『書店メガネ』にも続投して掲載されている。『書店メガネ』は前作に比べて写真集の要素が強くなっており、ほぼ全ページカラー。掲載人数は少なくなったものの、その分1人につき写真が多く掲載されている。ツンさんファンの方にはマストアイテムだ。ついでに良ければ当店でご購入頂けると嬉しい。その暁にはお礼にツンさんになんでもさせる。嘘だ。
 前作『書店男子』掲載時に、本を見てくれた周りの人たちから「ツンさんは王子サマ系の見た目だよね」という感想を多く頂戴した。ソントンについては「美肌加工処理がツルッツルで笑えた」という意見を多く頂戴した。この差よ!
 しかし近作『書店メガネ』を読んだところ、ツンさんの王子感が少なくなっているように思えた。なぜなんだろう、と考えていたのだけれど、今、前作『書店男子』のホームページを見て気付いた。
 ツンさんが、髪を切ったからだ、ということに。
 イケメンであることに変わりはないのだけれど、髪型で随分とイメージが違ってくるものなのだなと、慌てて尾切トカゲさん(いつもカットをお願いしている美容師さん)に予約のメールを入れた。気付けば長い間伸ばしっぱなしになっている。前回お願いしたのは夏の前だった覚えがある。自分でも髪をグシャグシャとする癖があるので、髪は今くらいの長さが楽しいのだけれど、来週とあるイベントに参加することになったので、久しぶりに身だしなみをきちんとしようと思ったのだ。とあるイベントについては、また明日にでも改めてお知らせさせて頂きたい。

 今日は、弊店で『書店メガネ』を購入されたお客様のために何か特典を制作しようと、ある作業をしたあとで、参加したメンバーでご飯を食べに行った。ほぼ全員が終電をなくすというハプニングもありつつ、自転車通勤の僕は無事に帰宅できたのも含め、とても楽しい会だった。色々なバカ話をしたのだが、紅一点だったマコトさんの放ったセリフが一番心に残っている。

「髪を切って成功だったやつなんていねーよ!」

……トカゲさん、今度よろしくお願いしますね。




20141001 Wed
弘前照子、ときめきに死す。


 弘前照子は行き遅れた。

 弘前照子の容姿は悪くない。どちらかといえば美しいほうである。芸能人とまではいかないが、好きな見た目だと言う男は多いだろう。
 性格だって問題ない。酒や博打はもちろん、ほかの悪い癖もない。優しく健気、それでいて明るく快活。妻としても、母としても、理想的な性格をしている。
 家柄。真面目な父、優しい母。絵に描いたような幸せな家庭だった。両親ともに人格者で、弘前照子を一所懸命に育てた。弘前照子には2歳上の兄がいる。兄は職場で出会った女性と結婚し、子どもを1人授かった。両親、兄夫婦、少しの喧嘩はもちろんあったが、それらを乗り越え仲睦まじくやっていた。

 幼稚園生の頃の弘前照子の夢は、およめさんになること、だった。これは当時の幼稚園の女子の間での流行でもあったのだが、弘前照子は幼いながらも真剣におよめさんに憧れていた。
 小学生の弘前照子は、人気の女子たちとも、暗めの女子のグループとも、そして男子とも、分け隔てなく仲良く遊んだ。裏表のない明るい性格の弘前照子は皆から好かれていた。かと言って、代表に祭り上げられるようなことはなく、そのような状況になったときも上手くかわした。つねに全体の様子を見ているような、冷静な目を持っていた。この時期、女子は一気に大人びていく。弘前照子もだんだん男子との付き合いに対して意識的になっていった。恋愛というものに憧れを抱いた。たとえばテレビドラマ、映画、少女マンガや、先に中学生になっていた兄の話の影響もあり、いっぱしに理想のタイプも出来上がってきた。さすがにもう口にすることはなかったがやはり、およめさんになること、芯の部分では変わらず夢見ていた。
 中学生のとき、弘前照子に初めての恋人が出来た。
 弘前照子は小学校からの友人の誘いでテニス部に入っていた。弘前照子の中学のテニス部は県内でも強豪で、練習はかなり厳しいものだった。友人がひとり、またひとりと辞めていくなか、弘前照子は持ち前の努力と根性で喰らい付いた。結果、弘前照子はメキメキと力を伸ばしていった。もともと運動神経は良かったが、天賦の才があったのだろう。1年生にして、夏の大会に異例の抜擢されたのだ。2年の先輩とダブルスを組み見事に県大会を突破、なんと全国大会まで進出することになった。慣れない環境での疲労がたたり、1回戦ストレート負けを喫することになるのだが、それでも快挙であることに間違いはなかった。
 さすがに中学生ともなると、生徒全員と仲良くやっていくというのは不可能になる。ましてや夏の大会で目立ったせいもあり、弘前照子は孤立することになってしまった。元々一歩引いた場所に身を置いていたし、明確にイジメの標的になるような人間ではなかったので、そこまで酷いものではなかったが、もちろん居心地は悪かった。特に部活には居づらくなり、顧問の説得を振り切って退部した。部活を辞めても、一度離れていった友人たちが戻ってくることはなかった。
 家に篭りがちになった弘前照子のことを、妹思いの兄が心配するのは当然だった。兄は自分の友人を紹介することで、弘前照子のことを元気付けようとした。弘前照子の兄は吹奏楽部に所属していたため、文化系の友人が多かった。皆とても優しい人ばかりだったが、なかでも弘前照子に良くしてくれたのは、文芸部で部長を務めていた先輩だった。小説の知識が豊富なのはもちろん、先輩には姉と妹がいて、弘前照子の好きな少女マンガについてもずいぶん詳しく、話が盛り上がることが多かった。しかし知識を鼻にかけることもなく、どちらかというと弘前照子の話の聞き手に回ってくれるような、謙虚で物静かな性格だった。理想のタイプとは少し違ったが、弘前照子は徐々に先輩に惹かれていった。
 弘前照子と先輩が深い仲になるのは時間の問題だった。とは言ってもそこは中学生、付き合い始めてもやることは今までと変わらずお喋りくらいで、恋人らしいことといえば探り探りでキスをしただけだった。そのときのことを弘前照子ははっきり覚えている。夕日の射す部屋でも分かるくらい、弘前照子の頬は果実のように赤く染まっていた。先輩が兄とは別の高校に進学すると、やがて会う回数も少なくなり、いつの間にか恋は自然消滅してしまった。若い勢いと言われればそうかもしれないが、弘前照子は先輩との思い出を今でも大切にしている。
 高校では先輩への想いを引きずって文芸部に入部した。運動部と違ってそれぞれがマイペースに活動できる自由さは、弘前照子にとって心地良いものだった。3年間通じて文芸部に在籍し、主に詩を書いた。充実した楽しい部活だった。どこかで先輩とまた会えることを願っていたが、叶わなかった。中学の反省から、クラスでは目立たず沈まず、ちょうど良い場所に収まっているように努めた。おかげで何事もなく卒業まで過ごすことが出来た。容姿の悪くない弘前照子は黙っていても男子生徒に告白されることが何度かあったが、先輩への想いを断ち切れず、その全てを断った。
 弘前照子は隣県の国立大学の文学部に合格した。それを機に1人暮らしを始め、キャンパスライフを謳歌した。新しい生活のなかで、先輩のことはいつの間にか吹っ切れていた。引き続き文芸サークルに所属し、積極的に同人誌などに投稿もした。何人かの男性と恋愛関係になったが、どの男性も弘前照子の結婚願望を叶えてはくれなかった。卒業後は見事に大手の出版社に就職。女性にしては昇進したし、人間関係でトラブルも無く、順調に過ごしてこられた。やがて小出版社を立ち上げてなんとか運営を軌道に乗せた。業界ではかなり名の通った存在となり、編集の若い女性には弘前照子に憧れる者が多かった。ただ多忙を極めたせいもあり、結婚だけが出来なかった。
 
 なぜ、弘前照子は行き遅れたのか。結婚相手に望む条件が悪かったのだ。
 多くは望まなかった。むしろ弘前照子が相手に望んだことは、たったひとつ。
 ひとつ以外はどうでも良かった。しかしそれゆえに、たったひとつを譲ることも折ることもできなかった。

 弘前照子が結婚相手に求めることは、「片手で軽くリンゴを潰せる男性」、この1点だけだった。

 どうも結婚条件が人とちょっと違うせいで、私は行き遅れてしまったようだわ。
 そう気付いたとき、弘前照子は90歳だった。
 行き遅れるにしても遅れすぎた。周回遅れどころか、一位の選手がゴールテープを切った瞬間に家で歯を磨いているくらい遅れていた。
 弘前照子は高級老人ホームの中庭で車椅子に座って日光浴、青い空をだまって見ていた。結婚を現実的に意識するようになってから、これと思った相手に試験として渡すために、肌身離したことのないリンゴを膝の上において。自然と撫でてしまう癖があるので、リンゴはすっかりツルッツルになっている。弘前照子はすでに時間の感覚が希薄である。朝ごはんとして出されたおかゆをすするのが難儀で永遠のように口に運んでいて、気付いたら、日光浴をしていた。さっきまでもまた、時間が突然逆さに進んでずいぶんと昔まで戻り、また一気に今に戻ったような気がした。弘前照子にとって昨日は今日であり明日だ。もしも次に変化があるとすればそれは、と考えていると昼の休憩時間が終わったらしく、職員が迎えに来て車椅子を押してくれた。目を閉じて開けると、広間にいた。寝てしまっていたのか、はたまた時間が飛び去ったのか、弘前照子には分からないし、どうでもいいことだ。今日はどんなレクリエーションなのだろう。ボール回しならこれまで8万回はやったし、『ふるさと』なんて1兆回は歌った。弘前照子はこの老人ホームの最古参になっていた。車椅子を止める場所もすっかり定位置。弘前照子は今でも全体が見えるように一歩引いた場所が好きだ。霞がかった遥か前方に老人ホームの所長が立ったらしい。真綿で栓をしたように聴こえの悪い弘前照子の耳に、所長の声がモワモワとおぼろげに聞こえる。

「今日からひとり新しい職員が増えます。平川世界一くんです」

 所長に紹介され、弘前照子ら老人たちの前に現れた男性は、身長2メートル弱、『ターミネーター2』の頃のアーノルド・シュワルツェネッガーばりの肉体を持った、新人ヘルパーだった。
 瞬間。弘前照子は吸い込まれるように平川世界一の目を見た。視力はすでにゼロ近似値ほどに衰えていたが、相当の力を眉間に集め、こめかみがギシギシと痛むくらい、見つめた。通常脳に送られる血液のうち何パーセントかを眼球に輸送してまで、見入った。
 平川世界一が弘前照子を見たのが分かった。そして、優しく微笑んだ。
弘前照子は急にツクンと痛んだ胸を押さえた。一瞬不整脈かと思ったそれは、ひさしく忘れていた感情だった。前かがみになった弘前照子は膝に乗せたリンゴを取り落としてしまった。リンゴはころころと前へ転がっていく。しかし弘前照子はリンゴを目で追うことをしなかった。自分の中に再び生まれた感情の名前に気がついたのだ。

 恋、しちゃったみたい。

「はじめまして、平川世界一です。特技は」

 平川世界一は弘前照子の落としたリンゴをすいっと拾い上げた。まさか、と弘前照子が思う間もなく、まず膨れた三角筋。上腕二頭筋が小山のように盛り上がり、それを支える三頭筋も含めると縄文杉のよう。皮膚を破らんばかりに存在を主張する腕橈骨筋・尺側手根屈筋・橈側手根屈筋はまるで、飛騨・木曽・赤石の日本アルプス。とどめの総指伸筋によって引き締められた五指全ての力が余すことなくリンゴへと伝わった結果、

ぐしゅわぁっ!

「素手でリンゴを潰すことです」

平川世界一は真っ白い歯で輝くような笑顔を浮かべた。実際、びしゃびしゃに飛び散った果汁が輝いていた。弘前照子の脊髄を雷がつらぬいた。70歳の頃にすっかり曲がってしまった背筋がビシーンと伸びた。同時に腰はふにゃりと力が抜け、腑の奥から吐息が漏れた。下半身がじんわり熱くなった。はじめて味わう本物の絶頂だった。若い頃に比べると刺激は劣るだろうが、老いた肉体にはむしろ温泉のようで心地よかった。老人用オムツを当てていなければ小水を漏らしたことに気付かれただろう。あまりの衝撃にガクガク震え始める全身。齢90の弘前照子の肉体は既に砂上の楼閣だった。恋は猛毒。弘前照子は、車椅子から崩れ落ちてしまった。

「だーめーだーよー平川君! お年寄りにショックを与えちゃあ!」

どたばた慌てている所長よりも速く、平川世界一は弘前照子のところへ駆け寄り抱き起こす。体に力の入らない弘前照子はされるがまま、平川世界一にしなだれかかる。ああ愛しい人。平川世界一の胸の中はリンゴの香りがした。まるで森の中にいるようだった。弘前照子の頭の中では、そよ風に吹かれた枝がチラチラと陽射しを遮っていたが、実際には蛍光灯の明かりでできた平川世界一の体の影に出たり入ったりしているだけだった。風を感じたのは、平川世界一がブンブンと弘前照子の体を振り回していたからである。

「大丈夫ですかー! しっかりしてくださーい!」
「だーめーだーよー平川君! お年寄りの肩ひっ掴んで全力で振り回しちゃあ!」

平川世界一のグローブのような両手に掴まれた肩。そこから熱を注ぎこまれているようで、弘前照子は体が熱くてたまらなかった。いますぐ服を脱ぎ捨てたかった。素肌で平川世界一の力強い筋肉を感じたかった。しかし声を出そうとしても喉が奥からふさがっていて、口の端から出るのはあぶくとなった唾液ばかりだ。

「聞こえますかー! 1×5はいくつかわかりますかー!?」
「だーめーだーよー平川君! お年寄りの耳元で野球応援ばりの大声出しちゃあ!」

周りが騒然としているのが何となく分かったが、平川世界一の硬い筋肉に包まれて弘前照子は陶然としていた。そのまま呆然と、音も景色もそして意識も、なぜだか全てが白く遠のいていくなか、平川世界一の声だけはいつまでもはっきりと聞こえた。弘前照子は声ならぬ声でそれに応えた。

いち かける ご ですって? えーっとね、 いんごが、  んごが、  んごっ……


 弘前照子、享年91歳。 死因、ときめき。


 弘前照子は行き遅れたまま逝った。しかしこの世の最後に感じたのはたしかに、幸せだった。色々あったが、幸せな一生だった。



------------
お題
りんご 三人称 5000字以内



 
OFZK

The Jon Spencer Blues Explosion「Bellbottoms」


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