20160327 Sun
名松線で行こう


昨日は父と弟と一緒に映画『バットマン vs. スーパーマン』を観てきました。
僕は観る前に、クレヨンしんちゃんの野原ひろしが言った名言、
「正義の反対は悪じゃない、また別の正義なんだ」
的なものが描かれるのかと思っていたのですが、ちょっと違う話でした。
そもそも『マン・オブ・スティール』の続編でもあるらしく、
申し訳ないことにそちらは未見なので、ついていけないところもありました。
けど、アメコミ好きなら、楽しめると思います。派手で良いです。
予告編では『タートルズ』『デッドプール』などが流れていました。
個人的には『スーサイド・スワアッド』が面白そうだな、と思いました。
ハーレイ・クインというキャラが、女の子ヒーロー(『キックアス』のヒット・ガールみたいな)として、
人気が出そうな予感がします。


僕は映画の前に1人で、JR名松線へ乗りにいきました。
6年間、台風の被害で一部区間が運行休止になっていて、
一旦は廃線も検討されたらしいんですが、
「名松線を守る会」の皆さんをはじめ、地元の方々熱心にはたらきかけて、
無事に昨日、全線復旧となった、とのことです。
いつも名松線は1両運行で、しかもガラガラなのですが、
なんと今回は特別に2両編成で運行。
しかし、僕が駅に到着した時点で、2両ともすでに超満員。
なんとか隙間に入れてもらいました。
途中駅では満員のために乗車を断るアナウンスもあり。
名松線があんなに賑わってるのを、生まれて初めて見ました。
ギュウ詰めで立ちっぱなしだったので、あまりゆっくりとは見られなかったのですが、
それでも充分に車窓からの景色がきれいだというのは分かりました。
落ち着いたらまたゆっくりと行ってみたいと思います。
あなたも良かったら乗りに来て下さいね。
2時間に1本しかありませんので、スケジュールを立ててからどうぞ。

終点の伊勢奥津駅では、記念のイベントが行われていました。
到着を迎えてくれたのは、チンドン屋の方々。久々に聴きましたチンドン。
ちょうど『高校三年生』を演奏されていました。
めっちゃ良いなあ。もっとゆっくり聴かせてもらえば良かったです。
ステージでは、ビッグバンドによるジャズの演奏が。
曲は『A列車で行こう』『茶色の小瓶』『アンパンマンのマーチ』。
なにより楽しそうに演奏されているのがすごく良かったです。


ナンシー関『聞いて極楽』(朝日文庫)を読みました。
ナンシーの文はいま読んでも上手いなと思います。
ビッグバンドジャズもモダンジャズもナンシーも、
もう昔のものなんですが、それでもやっぱり良いと、僕は感じます。


Take The "A" Train - Jonny Hepbir Quartet




20160325 Fri
ジャズはお好きですか


この前、志摩にあるジャズ喫茶SWINGへ行きました。
そして今日は、松阪のジャズ喫茶ボガードへ行きました。
どちらも主に50~60年代の、モダンジャズが流れているお店です。

SWINGの方は、マスターがどんどん盤を変えてくださって、
クリフォード・ブラウン、ケニー・バレル、マイルズ・デイヴィス、ホレス・シルヴァー、マックス・ローチ、ジミー・スミス、レッド・ガーランド、ジョン・コルトレーン……などなど、
ジャズジャイアンツたちのキラ星のごとき演奏を次々と、
JBLの巨大なスピーカーから爆音で聴かせて頂きました。
ほぼ全席がスピーカーを向いていて、
お喋りとか読書というよりは、まさにレコードを聴きに行くための店です。
渋谷にあるクラシック喫茶ライオンを思い出しました。
マスターが明るくて、とにかく良い人という印象です。
レコードが変わるたびに、ご丁寧に、僕の前までジャケットを持ってきてくださり、
僕は僕で英語が読めないのに、ジャケット裏のライナーノーツを読むふりをしました。
いや、一応、バンドメンバーの確認などをですね……一応……はい。
聴くことに集中できる環境ですし、マスターの選曲がものすごく良い。
ケニー・バレルのレコードに、あんな激熱なドラム+コンガの演奏が入ってるなんて知らなかった!
僕の反応を見て、きっとテンション高めの曲で攻めて下さったのだろうと思います。
ずっとノリノリで聴いてました。またぜひお邪魔したいと思います。

ボガードの方はもうちょっと気軽な店で、
内装がお洒落ですし、デートにも使えそうなお店です。
けど、女の子よりは、男の子が喜びそうな感じでしょうか。
大人の男の隠れ家、という雰囲気でもあります。
特に私語禁止というわけではなさそうですし、
音量もジャズ喫茶にしては抑えめな方だと思います。
(SWINGの方は、曲間じゃないと私語も聞こえにくいくらい爆音です)
あとでマスターに聞いた話では、たまにご婦人方に、
「もうちょっと音量絞って」と言われて、渋々音量を落とすこともあるそうです。
今日は僕の他に、ご夫婦でいらっしゃるお客様がいて、
コルトレーンの『ブルートレイン』をリクエストしていました。
アルテックのスピーカーは丸みのある音がして、
僕が座っていた席では特に、ベースが響く個人的に好みの音で、気持ち良かったです。
お店は7年前に出来たということで、どうりで知らなかったわけです……。
ボガードは家からそんなに遠くないので、またちょこちょこ通おうと思います。

ジャズが好きっていうと、珍しいってよく言われます。
自分なりに理由を考えてみたんですけど、たぶん僕は、
テンションコードの響きが好きなんだろうな、
というところにとりあえず落ち着きました。
ロックバンドでいうと、the band apartもすごく好きですし。メジャーセブンス。

ジャズに興味があるという方は、とりあえず違うアーティストのCDを3枚聴いてみて下さい。
僕の場合は、ウェイン・ショーター、マイルズ・デイヴィスときて、
ビル・エヴァンズ『ワルツ・フォー・デビー』にたどり着き、
そこからはもうずぶずぶとハマっていきました。
YouTubeに色々なアーティストのフルアルバムがアップされてるので、
よかったら、時間があるときにでも聴いていってみて下さい。
はじめは蕎麦屋のBGMにしか聞こえないかもしれませんが、
おっ、と思える瞬間があれば良いなと、願うばかりです。

いま、シュート・アローという人の、『ジャズ喫茶が僕を歩かせる』(DU BOOKS)
という本を読んでいます。
半分くらいしか読んでいないのですが、現状、
浜松にあるトゥルネ・ラ・パージュというジャズ喫茶に行きたくてたまりません。
びっくりするくらい超ドデカいスピーカーがあるんですよ。見てみたいなー!


Kenny Burrell - Rhythmorama

上で書いた、激アツのパーカションセッション。
『INTRODUCING KENNY BURRELL』というアルバムに入っています。
ドラムはケニー・クラーク、コンガはキャンディド。
改めて聞いてみて、やっぱりあの爆音で聴いた方が全然素晴らしいと思いました。




20160324 Thu
昨日の夜できた唄を持って


僕が本屋でバイトしていたときに、
一緒のフロアで働いていたメンバーが辞めるという連絡が入りました。
1人は書店男子でお馴染みのツン・タローさん、
もう1人は複雑怪奇なバラの折り紙を一瞬で完成させるマコトさん。
僕は2人ともにお世話になりっぱなしだったなあと改めて思います。
一緒に仕事ができたのはすごく楽しかったですし、
あの2人がいなかったら、僕はもっと早くに辞めてたでしょう。
お疲れさまでした。ありがとうございました。

そういえば、マコトさんとは、バンドをやろうという話が出たままになっていました。
ありがちですが、バンド名だけは先行して決まっています。
「スリーパーズハイ」といいます。バンド名だけでもおぼえて帰ってください。
由来はたしか、眠すぎて逆にテンションが高くなることってあるよね、だったと思います。

バンド名も決まっていましたがさらに、なぜか1曲だけAメロも決まっていました。
マコトさんには「the pillowsみたいな感じ」って伝えましたけど、
よく考えたら僕、the pillowsのこと全然知りませんでしたよ。

 “ちょっと待って きみの声聞こえない
  僕の手のひらじゃ 受け止めきれなくなっていく
  ボリュームをしぼって つけっぱなしTVショウ
  ふわふわのロケット あいつ月で捕まった

  そっぽ向いて 役立たずお説教も
  きみの舌の上で うまく溶けちゃうくらいで
  12時を回って 魔法とけるシンデレラガール
  すっぴんのがいいぜ ガストでメシを食おうぜ”

年末の失踪中に書いていたノートの中に、
「スリーパーズハイの曲を完成させる」という目標を掲げましたので、
いつか曲にしようと思います。
いまはボツにしてしまいましたが、サビのラストもあります。

 “1週間のせいで 僕らは大人になってくけど
  フザケたまんまで いくよ”

元気でやりましょう。そしてまた会いましょう。


BUMP OF CHICKEN バイバイサンキュー




20160323 Wed
矢はまっすぐに飛んだ


ある寺のご住職が薦めていた本を読んでいます。
山本周五郎の『小説 日本婦道記』(新潮文庫)。
前にどなたかが同じく山本周五郎の『さぶ』を薦めていて、
時代小説を読むのはそれ以来かと思います。
山本の他の小説は知りませんが、僕が読んだ2作は、市井の人々に焦点を当てています。
無名でありながらも、その時代の中で、懸命に生きる姿が、
作者の、朴訥とさえ言えるような淡々とした調子で描かれており、
登場人物の崇高な心情は、時代を超えて、読者の胸を打ちます。


今日は松阪にある、御城番屋敷、という場所へ行ってきました。
文久3年(1863)年に建てられ、武士が住んでいた長屋です。
国指定の重要文化財になっているのですが、
なんといまでも、何軒かにはその武士の子孫の人々が住んでいるうえに、
空きの部屋は賃貸されてもいるという、珍しい建物です。
ネットで検索すると、実際に住んでいるお知り合いを訪ねた方のブログなどが見つかります。

うち1戸、松阪市が借り受けて、公開している家があります。
今日は天気が良かったこともあり、すごく落ち着いた空気が流れていました。
こんなところでゆっくり暮らせたら最高だろうな、と思えました。
お風呂もテレビも無さそうですが、私、そういったことには慣れておりまして。

昔三重に住んでいた頃はこういう史跡を巡ることなんてしませんでしたが、
いまは1人で家の車を借りて行ってしまえるので、便利です。
まだまだ行きたいところがあります。
あとは、そこにいる人と話をする機会を持つ勇気と、
その話をちゃんと聞けるような知識や態度を身につけたいと思います。


喫茶店で山本周五郎を読んでいて、目に留まった一文、

 “しかし人間が大きく飛躍する機会はいつも生活の身近なことのなかにある、高遠な理想にとりつくよりも実際にはひと皿の焼き味噌のなかに真実を噛み当てるものだ。”


Bleached - Wednesday Night Melody




20160322 Tue
ぼたん


家の近くの河原を上流へ向かって歩いていくと、途中に小さな檻がある。
明るいうちに通ると、中に、大きいイノシシが2頭入っているのが分かる。
前を通る瞬間、威嚇のためか、2匹とも鋭い声で吠えて、激しく檻が揺れる。
通り過ぎてもしばらくは、獣の臭いがじっとりと鼻先にまとわりつく。

最近は日も長くなってきたので、明るいうちに散歩に行けるが、
はじめ、まだ日暮れが早かったうちは、何がどこから奇声をあげているのか分からず、
「プギアーーーッ!!」という迫力あるいななきと、直後の、
ドオッスンドッスン!という地鳴りに、正直かなりビビった。
っていうか、正直、超常現象かと思った。
慌てて家に帰ったあと、母に報告すると、
「小さいウリ坊(イノシシの子ども)が入ってるみたいやで」と言われ、
ウリ坊ですらあんな凄まじい迫力があるのだから、
成長したイノシシというのは、僕が想像しているより、かなり恐いのだろう、
『もののけ姫』のおっことぬし様は、あながち嘘ではないのだな、
などと恐怖のあまり、枕を使って三点倒立しながら震えていたところ、
どうやら母の情報はしばらく前のものであって、
今は大きいイノシシが、それも2匹も入れられているということが分かったわけだ。

まあ、誰が何のためにそんなことをしているのかが、
いっさい分からないというのが一番恐いのですが……。


しばらく前に、とある田舎を歩くことがあったんですけど、
「道と車しかない。っていうか、建物がほとんど無い。
 人より車が多くて、それよりもトンビの方が多い。
 車が県道を高速道路なみのスピードで走っていく。歩道が狭い。
 けど、21時になるとほとんど車が通らない。
 休耕地が多い。山には太陽発電がやたら多い。」
と感じました。
僕の地元もほとんど変わりませんでした。ここは星がきれいですよ。


BADBADNOTGOOD & Ghostface Killah - Ray Gun ft. DOOM




20160321 Mon
まるで火星でジャガイモを育てるようなことだ


普通の日記こそ面白いと言っていた。
ひかれるタイトルがあって、きれいな画像があって、
分かりやすい見出しがあって、読みやすい文章量で、
読むと何かの役に立ちそうな文。
そういうのよりは、普通の日記の方が良いそうだ。

田口史人『二〇一二』を読んでいた。
高円寺にある「円盤」店主、田口さんの、
2012年に書かれた日記が主に収録された一冊。

 “日常はそれぞれで送っているから、そこから何か違うことをやろうとする。
  本来そんな「遊び」があるから日常も送れるわけです。
  いつも通りに仕事をして、仕事終わっての遊びのはずが、なぜか仕事のように「遊び」を一生懸命こなす。
  こなすというより小遣いかせぎのようなつもりになっていたりもする。”

なるほど、たしかに、そういうことか。



今日は家族で映画『オデッセイ』を観てきました。
「火星版ダッシュ村」だと聞いてはいたのですが、想像以上にダッシュ村でした。
観ると、いま己に降りかかっている問題はあまり大したことないのかもしれない、
と思えてしまう効果があります。
一番印象に残っているセリフは「ケチャップは先週切れた」。
つまりは、考えることを止めなければ、希望は失われない、という映画だと思いました。

田口さんの本から、最後にもう少しだけ抜粋させてください。

 “そもそも人間は肉体の武器ではこの世界で生きていけない。
  自然回帰だなんだ言ったって、野生動物としては中途半端な存在ですよ。
  肉体の弱肉強食の世界で言ったら。
  そこを、頭を使うことを武器にして人間って生き物は生き残って来たんだから。
  頭を使うことを止めたら死にます。
  自然界で生き残って行けません。
  だから、やっぱり危機の前では知恵を使うべき。”

まさにこれは『オデッセイ』のことを言ってるんだよ!!
ハリウッド映画と小出版本も繋がっているのです。


Marina Moran - Eden Rock





20160320 Sun
舎弟より愛をこめて


へそまがり店主のへそさん、
つまり僕の師匠からメールが来た。テレパシーで返してくれと言われた。
にたないけんの新しいバンド、ジョズエのライブに感化され、
さっそくロックな行いをしていた。さすがは師匠だ。
あの人の中の、大人と子供の割合は奇跡的なバランス。
いつかまたゆっくりと話したい人だ。
あ、おかげさまで、ちょっと前に宣伝させてもらった本対決は、
師匠が雲雀洞さんに勝ったそうです。どうもありがとうございました。

ちなみに年末に僕が失踪したとき、師匠は、
・僕が東京にいるかどうか
・僕が携帯を捨てたかどうか
だったかで、賭をしていたとあとで聞いた。
その賭は結局1勝1敗だったらしい。


僕には命の恩人が2人いて、うち1人は数年前に結婚していて、子どももいる。
そして最近、もう1人から結婚の連絡が来た。やっぱり携帯を捨てなくて良かった。
上京して一番はじめに連絡したのはこの人だった。
もうしばらくしたら2人に会える。
1番の楽しみはもちろん結婚式であるが、
あいつがあれからどれくらいハゲフンゲフンなんでもありません。

東京を出ても、携帯を捨てても、ついてくる縁はついてくるのだろうし、
生きていく限り、どうしても新しい縁は出来てしまうのではないか。
そのときそのときで、それに関わっていればいいのではないだろうか。
手元に開いていた薄田泣菫『艸木虫魚』のページに目を落とすと、
ちょうどこんな一文が書いてあった。

“何事も自然にまかせて、あまりおせつかいをしないのが、一番いいやうだ。”


中谷美紀 クロニック・ラブ

しぃーばたーぁ




20160319 Sat



ニートにも彼岸はやってくるのである。
というわけで、母と弟に連れられて、墓参りへ行ってきた。
しばらく前に書いたかもしれないけど、
父方の、祖父には12人、祖母には8人の、それぞれ兄弟姉妹がいる、らしい。
時代が時代ではあるが、正直、多すぎる。
この前、父に正確な人数を確認したところ、
なぜか父もよく分かっておらず、結局母が教えてくれた。
さすが我が父である。

法事などでジジババが集まるたびに、誰が誰なのか、
教えてもらったような気もするのだけれど、
普段から人の顔と名前を覚えるのが苦手な僕である。もちろん覚えられるはずもない。
しかし、ジジババが多いからといって、
いまも繋がりのある親戚が多いかというとそんなこともない。
把握できていない又従兄弟は50人くらいいそうな気もするけれど。


というわけで墓参りである。
年末にも行ったのだけれど、5カ所7つの墓を参る。
数だけ見ると大変そうだけれど、場所が松阪に固まっているので、
朝に出れば、夕方頃には終わる。

なかでも、僕が幼い頃からずっと行っているお墓があり、
そこには僕の叔父が眠っている。
叔父は若くして、というか、子どものうちに亡くなってしまった。
墓石は無い。墓所の隅っこにある小さな一区画がそのままお墓である。
幼い叔父のために、いつもお菓子をお供えする。
昔、僕の祖父母が店をやっていた頃は、店頭の駄菓子を持って行ったが、
いまはコンビニで良さげなお菓子を選んで、お供えする。


現在、このお墓には我々以外はお参りに来ていない。
叔父の両親であるところの祖父祖母とも亡くなって、いまや別の土の下に眠っている。
一緒の場所に叔父を運んできてあげようという話は出ているのだけれど、
家中のんびり屋さんしかいないので、一向にその話は進んでいない。
こういうとき、2度の失踪に挟まれた12年越しの放蕩息子に発言権は皆無である。
とりあえず言われるがままにしようと考えている。

この前冗談で、父が亡きあと、家と土地をどうするかという話になったので、
とりあえず、僕ではなく弟の名前にするのが良いのではないかと言ってみた。
案の定、誰もがそのほうが良いと考えていたようで、即可決された。
なので、実家にパラサイトしつつも、また移転先を考えなければならない。
移転というか、もうずっと転がり続けるしかないのは、10年前に分かっていたことである。
現状、僕のサバイバル能力は、すべて若さに頼っているところがあるので、
早いところテクニックを身につけなければならない。
あともう少しで、外で寝られる季節になりますね。


Richard Oschanitzky - Sanie Cu Zurgalai




20160308 Tue
「舟越桂 私の中のスフィンクス」@三重県立美術館


先日、「舟越桂 私の中のスフィンクスという展覧会へ行ってきた。
舟越さんの作品は、須賀敦子さんや小川洋子さんの本の装丁を飾っている。
以前から、一度は実物を見てみたいと思っていた。
装丁を見て、気になった作家は多く、
土屋仁応(小川洋子、今村夏子)や三谷龍二(伊坂幸太郎)など。
北園克衛も、詩より先に、堀江敏幸の装丁でオブジェ作品を知っていた。

日曜の昼過ぎだったが人もそこまで多くなく、
会場も広かったので、ゆっくりと見られた。
わりと子供連れの家族も多くて、良いなと思った。

舟越さんの作品の特徴は、まず、大理石を用いた目の表現にある。
説明文にも書いてあったのだけれど、右目と左目の向きを外に離すことによって、
鑑賞者とまったく目が合わないようになっているのだ。
その静かな表情とも相まって、作品がまるで、永遠を見ているかのような、おごそかで神聖な雰囲気をまとっている。
作品によっては、わずかに伏し目になったり、虚空を見上げるようになることで、驚くほど繊細な表情があらわれる。
もうひとつの特徴は、誇張された体のつくり、特に、首の長さだ。
遠目からでも、この世ならざるものであることがはっきりと見て取れる。
そういえば、いがらしみきおのマンガ『sink』に首の長い人が出てきたな、と思い出す。

僕が知っていた、装丁に用いられている作品は、わりと初期のものであり、
2005年以降のスフィンクスシリーズは初めて見るものだった。
「戦争を見るスフィンクス」の厳しい表情は、なかでもかなり珍しいもので、鮮烈だった。
「バッタを食べる森のスフィンクス」なんかは、知り合いの生物系大学生を思い出したりした。
いまごろ彼も森でバッタを食べているのだろうか。
過渡期の作品である「夜は夜に」が、もっとも印象に残ったかもしれない。
悪魔はきっとあんな顔をしていると思う。
特に良いなと思ったのは、「冬の本」という優しい印象の作品だ。
モデルがいるらしく、その人物の人柄が、見事に彫り込まれていたように思う。



じっくりと見て回ったので、結構足もだるくなっていたのだけれど、
チケットの半券で展示も見ることが出来たので、
せっかくだしと、2階のコレクション展へ上がった。

こういうとき、企画展はわりと自分の中でハードルが上がってしまっているので、
もちろん感動はするものの、そこそこで終わってしまうけれど、
たまたま入った展示の方が、予想外に良くて驚くことが多いということは、
経験上なんとなくは分かってはいる。
しかし今回は本当に、コレクション展まで行って良かったと思った。
そこで僕は、橋本平八作品に出会ったのだ。

まずは壁に飾ってあった、何気ないスケッチ作品に目をとられ、
横の説明文、作者の経歴へを読んだ。
橋本平八は三重出身、夭折の彫刻家であり、
なんと、僕の好きな詩人、北園克衛の兄であることが分かった。
北園が三重出身であることは知っていたのだが、
30代半ば以降、帰郷しなかった弟・克衛とは違い、
その兄が晩年東京から三重に戻り、彫刻を作り続けたことは知らなかった。

この美術館は過去にも橋本平八を特に取り上げて展示していたらしく、
今回も一室が丸々、橋本作品の展示となっていた。
おそらく評価が高いのだろうと思われる、サイズも大きめの彫刻作品には、
個人的にはあまり目が行かなかった。

この前、『プレバト』という、芸能人格付けチェックと似たテレビ番組で、
料理研究家の土井善晴さんが、
「出来る人が敢えて、やらずに止める。これが難しい」
と言っていた。
橋本平八の小品や、何気ないスケッチからは、
<良い加減>という温かな空気が立ち上っていた。
どれも見ていて顔がほころんでしまうような秀作ばかり。

たとえば、「鳩」のあまりにストレートな表現。
「弱法師」は、そのサイズのまま、いまにも動き出しそうだ。
「老子B」がかもし出す、ひょうきんさといったら!

極め付きは「石に就て」。
本物の石と見間違うほど精巧に彫られた木と、
その横にはモデルとなった石自体が置いてある。
おそらくは技術の研鑽という目的もあったのだろうけど、
それ以上に、作品のナンセンスさからたちのぼる、笑いがあるように思えた。
きっと橋本もそこまで意図していたに違いない。



美術館を出てもまだ夕方だったので、
せっかくだからと徒歩10分くらいの県立図書館へ向かった。
高校生のころに、ホールには何度か来たけれど、図書館に入ったことはないように思う。
館内の案内図を見ると、2階の文学コーナーで、
「三重出身の詩人展」という常設展があるのを知った。
もしや、と、早速向かうと、案の定、北園克衛のコーナーがあったではないか。

ガラスケースの中にしまわれてはいるのだけれど、
北園が監修した雑誌『VOU』や、直筆の原稿用紙など、貴重なものを間近で見られた。
図書館所蔵の書籍であるので、申請すれば見られるかもしれない。
沖積舎の全集も収蔵しているようだった。
またゆっくりと訪ねようと心に誓う。

同じ展示場に、北川朱美という詩人が、
松阪市で発行している、詩の個人誌『CROSS ROAD』が置いてあった。
三重県にものこういう奇特な方がいるんだなと、感心する。

フロアを下がって図書館に入ると、三重県の出版物というコーナーを見つけた。
予感があって棚を探していると、案の定、
先ほど展示されていた北川さんの個人誌の2~4号が置いてある。
僕は、詩の良し悪しはあまり分からないのだけれど、
それぞれの巻末にある、ジャズメンについてのエッセイと、
東京の紀行文はとても面白く読ませていただいた。


なんとなくで出かけて、思わぬ収穫をえて嬉しい一日だった。
昔の僕だったらまったく気にもとめなかったであろう本や作品に、
知識と経験を得た今の僕は、感動することができる。
若く新鮮な気持ちは少なくなっていくかもしれないが、
たぶん、それも悪くないことなのだと思う。




20160306 Sun
白いギター


祖母の生家へ行ってきた。
前に行ったのは、もう15年以上も昔のことである。
秋で、祖母の兄弟(大叔父?)たちと一緒に柿を取りに行ったのだ。
ちなみに、これは前にも言ったことがあると思うけど、
うちの祖父は12人兄弟、祖母は8人兄弟であり、
僕はそのすべてをいまだに把握していない。

昨日は母と弟と一緒に行ってきた。
天気が良かったのでドライブがてら。
人が住まなくなってもう何年になるのだろう。
建物自体もボロボロになっていたし、粗大ゴミもいくつか捨てられていた。
僕と弟は決死の覚悟で屋内に侵入し、
僕は大きめの器、弟は灰かきみたいなやつを、それぞれ廃墟から頂いてきた。
もちろん祖母側長子に「なんでも持ってけ」と了承は頂いている。
器は水受けか、あわよくば金魚でも飼えば良い感じになりそうで、
弟はの方は家の畑作業に使うつもりらしい。

前に柿を取りに行ったときは、白いギターを貰ってきた。
かつて、何かのテレビ番組に出演すると、白いギターが景品としてもらえたらしく、
そのコピー品が流行したことがあったらしい。
おそらくフォークの隆盛期のことだろうと思う。

僕と弟は喜び勇んで歌本(歌詞とコードだけが載っている本)を買いに行き、
しばらくは頑張ってそのギターで練習をしていたのだけれど、
今思うとネックも反りまくっていて、リンゴを鈍りつぶす握力があっても、
Fコードを押さえることは出来なかったと思う。
多少ギターを弾いたことがあった父が、簡単だと言って選んでくれた曲には、
Fは入ってなかったのだけれど、Bbが入っており、
これも文系中学生の握力では押さえることが叶わなかった。

家に帰ってきてから、母が押入を引っかき回して、十年以上前のアルバムを見つけた。
そこには、前に祖母の生家へ行ったときの写真が挟まっていた。
祖父は何度目かの手術のあとのはずだったが、元気そうに見えた。
祖母もまだ若い。
僕は大好きな映画『フィフスエレメント』のTシャツを着ていた。
弟は今より少し丸い。

祖母の家があまりにボロボロで、草も生え放題だったので、
またちょっと掃除しに行こうかと弟と話した。


AURORA - Conqueror




20160304 Fri
ひとりあまる


10年ぶりにテレビのある生活を送っています。
若い芸能人が誰だかまったく分からないので、
家の人たちにいちいち名前を聞いて確認しています。





この2つのCMの、対照的な一人余り感が良いと思います。




20160302 Wed
トンネルにて


「タケシ?」

左のほうから、女の人がぼくをよぶのが聞こえました。
どっかで聞いたことがある気がしたけど、だれかぜんぜん思いだせません。
思いだそうとしてがんばって考えてるうちに、
ぼくは体がうかぶような感じがしました。
風をひいちゃって、ねつが高いときみたいに、
ぼくは動かしてないのに、ゆらゆらーって、
体がひとりでに、左から右へ動いていくような気がしました。
さいごに、ボートが着いたときみたいに、
トンッて、動くのが終わった感じがありました。


「タケシ、大丈夫か?」

目を開けると、バックミラーが見えて、そこで、
お父さんがちょっと心配だという顔をしているのが見えました。

「うん……、ちょっと寝てたみたい」
「そうか」

起きたばっかで頭がぼーっとして、のどもかわいていました。
なにか飲みたいなと思ったけど、お父さんは車を運転しているのでがまんしました。
となりを見るとケイコがぬいぐるみみたいなのであそんでいます。
今日はカエルじゃなくてクマみたいなやつだなと思いました。

まだちょっと頭がぼーっとしているので、車の横のガラスに頭をくっつけました。
つめたくて気持ちがいいなと思いました。
いまはトンネルをくぐっているので、ごうごうという音がします。
オレンジの電気がいっぱいあって過ぎていきます。

ぼくは気づいて、あれっと思いました。
みどりの服だったはずなんだけど、いつのまにか服が変わっていたからです。
けど頭がぼーっとしているので、ぼくの気のせいかもしれないと思いました。
もしかして、電気がオレンジのせいかもしれません。


けど、そのとき、<平行世界>、ということばが急に思い出しました。

それは、ぼくがいる世界とはちがった世界のことです。
そこは全然ちがってたり、ちょっとだけちがってたりすることがあります。
そしてそれは、もしかすると、ぼくがいたかもしれない世界なのです。
だからそこには、ちょっとちがったぼくがいるかもしれないし、
もしかするとぼくはいなくなってるかもしれないのです。

こんな話、だれに聞いたんだっけ?
さいとう先生? ゆみちゃんのお兄さん? テレビ?
またやっぱりちゃんと思い出せません。
もう一回がんばって考えようとしましたが、
車がすごいスピードで走ってるのでジャンプして、
頭がごつんとガラスにぶつかってしまったので、やめました。

もしかするとちょっとだけちがった世界っていうのは、
ぼくのすぐ隣にあるかもしれません。
ほとんど同じに見えるけど、ぼくとはちがったぼくがいて、
ケイコとお父さんだけじゃなくて、お母さんもいるのかもしれません。

……お母さん?


ごちんっとまた頭をぶつけてしまいました。
ふだんはすごく運転がうまいのですが、
今日はいつもよりお父さんは急いでいるような気がします。
ぼくもケイコも、どこへ行くのかよく知りません。
けど、けっこう長いトンネルだなあと思いました。


ぼくが生まれる前くらいにUFOが見つかって、
その宇宙人が地球のけっこう近くから来ていることが分かりました。
それまで宇宙人はいないと言われてましたが、
なにも無いと言われていた場所に、宇宙人の星があったのです。

宇宙人は地球人よりすごい力がありました。
たとえば前にお父さんは目が悪かったみたいですが、
けど宇宙人のお医者さんのおかげで目が見えるようになりました。
もっとたくさんの地球人が宇宙人のおかげで助かりました。
だからいま、地球人にはやることがなくなってしまいました。

いまケイコが持っているのも、すごくかわいいけど宇宙人なのです。
ぬいぐるみとちがって生きてるのでもっとかわいいし、
地球の犬やネコとちがってウンチしたりしません。
だからすごく人気があるのですが、宇宙人のことがきらいな人もいます。
お父さんがそうです。

ケイコが生まれてすぐに、宇宙人のために、
たくさんの女の人が宇宙に行くことになりました。
ぼくは顔を覚えてませんが、ぼくのお母さんも一緒に行きました。
ぼくはすごいことだなと思うのだけど、お父さんはすごく悲しかったらしいです。

地球人の女の人がまた宇宙に行くことになって、
こんどはケイコも行く人に選ばれました。
ケイコは宇宙人が大好きだからよろこんだのですが、
お父さんは誰かにおこったり、あまりうれしそうじゃありませんでした。
それで今日、ぼくとケイコに言って、車ででかけました。


お父さんがどこへ行くのか知りませんが、<平行世界>に行けたら、
いまの世界とはちょっとちがってて、
もしかしたら宇宙人が来ていないのかもしれません。

そういえば、さっきぼくを呼んだ女の人は誰だったのだろうと思いました。
ちがうかもしれませんが、もしかして、お母さんだったかもしれません。
きっとお母さんがいたらお父さんもうれしいと思うので、
ここじゃなくて、そっちの世界のほうが正しいのかもしれません。
やっぱり、こことその<平行世界>ではちがうところがあるのだと思います。

どこかが、5つくらい。




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(中日新聞カレンダー2016年3月より)





 
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山瀬まみ「ゴォ!」


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