20130430 Tue
『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』『ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの』


お耳汚しの前口上。読んだ本のご紹介。
津原泰水「爛漫たる爛漫: クロニクル・アラウンド・ザ・クロック」 (新潮文庫)
爛漫たる爛漫: クロニクル・アラウンド・ザ・クロック (新潮文庫)
3部作の1冊目。ついに津原さんがロックを書いた!
あとがきにもあるけど、最近の津原さんの本とは違って、ジュブナイルの頃に近い感じ。
リッケンのベースが改造されててノブやトグルがいっぱい、っていう1行ではニヤニヤ。


では本日の本題。
ドキュメンタリー映画を観る会(会員俺1人)。
2本まとめてドドンッ。

『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』
http://www.herbanddorothy.com/jp/archives/index.html
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続編 『ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの』
http://www.herbanddorothy.com/jp/
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東京都写真美術館
トシャビは何回か行ったことありますが、映画館に入るのは初めて。
客席は両方とも20人弱といった感じ。
僕は時間の都合で『ふたりからの贈りもの』→『アートの森の小さな巨人』という逆順で見ました。
当然ですが、ちゃんとした順番で観たほうが分かりやすいです、はい。
1は僕が某Tからはじまるレンタル屋で働いてたときにもうDVDがあったから、結構間が開いての続編ですね。

ニューヨークの小さなアパートに夫婦2人で住む、ハーブとドロシーの夫妻。
一見ただの老夫婦に見えるが、2人はなんと最も有名な現代アートのコレクター。
コレクションの総数は約4000点。それら全てがアパート中に所狭しと押し込まれている。
1作目ではそれらをニューヨークの美術館に寄贈するところまで、
2作目では当の美術館が「サーセンwww数が多すぎて管理しきれないッスwww」と、
さらに全米50州に合計2500点を寄贈するプロジェクトを追っています。

観た人皆が驚くでしょうけど、2人が本当にただの一般市民というのが凄い。
夫は郵便局員、妻は図書館司書という公務員夫婦。
妻の給料だけで生活費をまかない、残った夫の給料全額ブチ込んでアート作品を収集すること40年。
それだけであの莫大な量の作品を集めたってんだから、もう感嘆するしかない。
可能性だけでいうなら誰もが出来ること、なんだろうけど、
いやいや、誰でも出来るなんていう生半可なものじゃないです。
と、ほぼ毎日本を買っては後悔している僕が申し上げます。
いや、夫妻のようにいっそ思い切って本だけに人生を捧げたら、きっと後悔なんてしないんでしょう。
僕が知ってる本のキチガイといえば、JJ氏・草森紳一さん・立花隆さん・荒俣宏さん・鹿島茂さんらが思い浮かびますが、
こういうのは男が暴走して妻が甲斐甲斐しくそれを支えるのが一般的。
(って、都築響一さんも珍日本超老伝の頃に言ってた)
ヴォーゲル夫妻もややその面はありますが、
基本的にはふたりとも暴走してるから凄いやね。
しかもドロシーさんの方が冷静なスポークスマンなだけあって、
妻の方が暴走してるように見えるっていう。
けど、2作目では身体が弱ってほとんど喋らなくなってしまったハーブ氏が、
自身のコレクションが飾られる段になると、にわかにテキパキと指示を出しはじめるのを見て、
やっぱ男性の方が暴走してるんだな、と再確認。

劇中、夫妻に作品を買い取ってもらったアーティストたちは皆、
夫妻の“審美眼”を褒め称えます。
作品を見る目という意味ももちろんありますが。
この2人、手にした作品を一度も売り払ったりしないんです。
つまりアートを金儲けの道具だとは全く考えていない。
現代アートの価格が乱高下した時期、ブローカーやアーティストはそれに翻弄されますが、
2人には全く影響がありません。
その頃もひたすら、良い作品を出来るだけ安く、と地道に足を使って探しているだけです。
そして、これが凄いことに、2人はアートで金儲けする人のことを全く批判していません。
曰く、「その人たちにも生活があるのだから」。
審美眼って、多分ういう態度まで含めて言うんだろうなぁ。

作品を全米に散り散りに寄贈するプロジェクトに対して、
夫妻のコレクションは全体で1つのアートなのだからと反対する、
昔から夫妻と仲の良かったアーティストが居ます。
そのせいでしばらく夫妻とアーティストには距離が出来てしまうのですが、
プロジェクト中のトーク企画で共に登壇した際に和解します。
そのときにアーティストが言った言葉が印象的でした。
「これは考え方じゃなくて、感情の問題だったから。
 時間も置いて冷静になったからもう大丈夫。今まで離れてすまなかった」
誰かとケンカしたときに、これ使おうとメモ。

1ではニューヨーク現代アートの歴史の流れが大まかに分かりますし、
2では全米の地域ごとの美術館事情が分かって面白いです。
(ラスベガスの美術館が寄贈が決まった直後に閉鎖したり、
 ハワイはどこまでも観光地っぽさがあったり……)
あと、ちゃんと1→2っていう順番で観てたら、
2のラストで、アパートから全ての美術品が運び出されたあとに、
最後に1つだけ壁に残った作品を見て、俺、号泣してたと思う。あれ反則。

アートという共通の生きがいを差し引いても、2人は凄く仲良く見えます。
どこに行くにもずっと手をつないで、ドロシーはハーブの車椅子をどこまでも押してあげて。
1のラストではっきりと描かれているのですが、
長いこと幸せに連れあうためには、お互いへの尊敬が重要なのだなと、改めて感じました。
ジジババ映画好きの僕の急所を見事に突かれた。

昨日読んだ二村 ヒトシ「すべてはモテるためである」には、
“あなたの居場所というのは、(中略)『あなたが、一人っきりでいても淋しくない場所』ってことです。”
“それを見つけるために、まずは好きになれるものがなにか考えましょう”
ってことが書いてありましたが、
2人で一緒に好きになれるものを見つけられたら、そりゃ最高だよなぁ。
モテの次の段階はそこかもしれないですよ、二村さん。


ってなところで今日はおしまい。最後に1曲お聴きください。

『 にちようび 』 JITTERIN'JINN

ダーリン、あの作品を買ってきて



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