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20130618Tue
 >赤い靴はいてた女の子は

お題か何かもらって文章を考えるのは楽しいかもしれないと、思った。
とりあえず今日は三人称で書く練習。


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赤い靴はいてた女の子。
異人さんに連れられて行っちゃった。

で、その後どうなったのか、が今回の特集だと平田は聞かされた。

分かるわけねえだろそんなもーん! とちゃぶ台をひっくり返すのは簡単である。いや、ちゃぶ台とは違って打ち合わせに使っていたテーブルは重いし、編集部の隅に打ち合わせスペースを作るために立てられたパーティションをブチ倒すくらいが関の山なのだが。

平田は弱小ライターである。ライターの末席に加わるのもおこがましいとか口では言っておきながら、けっ老害どもがさっさと死なねえから俺ら若手に仕事が回ってこねえんだよ、と心の中で毒づく程に弱小である。ふかすだけふかしておきながら己の文筆の腕を磨いているのかと問えば、基本的に仕事以外の時間はいまや死語となったインターネットサーフィンなるものをして貴重な時間をぽういぽいと放り捨てまくっているという、ライターどころか人間としても弱小の輩であった。
久しぶりに編集部に呼び出された。小さいながらも定期的に仕事を世話になっているサブカル雑誌の編集部だ。いよいよ俺もお払い箱か、久々に営業に行かねばならぬ、寝たい、めんどい、死にたい、と引きこもり特有の自虐的思考をぐつらぐつらと前頭葉あたりで危機感とともに煮込ませつつも、しかし脳髄には生まれ付いての怠惰が染み付いている。前頭葉の危機感煮込みはいわゆる考えるふりにしかなっていないことは、本人も深層心理で承知済み。しかし表層心理では一応は焦っているのだから平田とメタ平田が明日からのオマンマについて、脳のひだとひだの間でギリシアの賢人達もかくやというほどの激論をおそらく行なってはいるのだろうが、平田の表情はいつもどおり真逆の自虐の微笑を浮かべるばかりである。アルカイックスマイルにはほど遠く。

6月夕方。平田はじっとりとした空気を身にまとわせながらとある雑誌編集部に入った。クーラーを発明した者にノーベル賞を!我に仕事を!と靖国通りでデモを起しても良いかもしれん、と思いながらデスクを見渡す。編集部の坂田に迎えられた。平田と坂田は大学時代の同級生である。編集部の隅にパーティションで形だけ整えられた打ち合わせスペースに向かい合わせで座った。

「ヒラっち、最近どう」
「あっ、そうッスねぇ、どうってこともないンスけど、ま、いっつもどおり、かっつかつってところッスわ、どぅふふ」

平田が同輩である坂田に対して敬語を使うのは無意識にだ。敬語といっても完全に砕けたものだし、それに平田は誰かと話すときはたいていこの平田敬語を使う。そして語尾には必ず気味の悪い笑いが付く。慣れれば、ああ平田だなと、気にはならないのだがそれまではちょっと引く。典型的なネット弁慶である平田はインターネットの匿名掲示板などではタメ口通り越してネットスラングでガンガン書き込み周囲にウザがられるコテハンなのだが、三次の世界では他人と目を合わせられないような弱小の極みだ。
いまだ汗の止まらぬまま打ち合わせスペースで坂田に聞かされた企画というのが冒頭にも書いた、赤い靴はいてた女の子、異人さんに連れられて行っちゃった後どうなったのか特集だった。置いておいた麦茶をどちらからともなく飲み、ふぅと一息ついたあとで平田は決める、断ろう、と。

「いや、文献とか当たっても良いんスけどね、せめて赤い靴はいてた女の子のだいたいの行き先が少しでも分かれば当てもあ」

「アマゾンに行ったらしいんだよ」

食い気味で坂田が答えた。平田のこめかみからタラリ一滴汗がしたたる。坂田、仕事が忙しくてそろそろヤバイとは疑ってたけど、ついに気が違ったか。同学年最強の引きこもりと知られた平田である。部屋の外に出すには核爆弾を使うしかないとまで言われた平田である。坂田はまさかその平田にアマゾンまで行けと言っているのだろうか。

「あ、あれッスか、滝打たれながら変身するヤツ」
「いや、怒りが頂点に達したときに変身するだけで、別に滝に打たれることが条件じゃねえし」
「俺も一応ライダーのはしくれッスから」
「ライダーじゃねえよ、ライターだよ」
「大・切・断っ!!」 ガッシャアアン!!
「うるせえバカ!」 パコォン!

パーティションをブチ倒すのは我慢したものの、遣るところなき憤りのため発動してしまった平田の大切断で飛び散らかった麦茶を片付けながらそういえばアマゾンは技名を叫ばなかったのでは、という疑問が頭をもたげ、ふふふ我もまだまだ若輩者よの、と微笑を浮かべた平田。そこには自嘲の色が消えていた。

「ちなみにドコ情報ッスか?」
「飲み屋の兄ちゃん」
「坂田、この湿気で頭が腐ったッスか」
「ならお前はとうの昔にゾンビだよ」

どうッスかねぇ、アマゾンッスかぁ、やっぱ川口浩の遺志を継ぐのは藤岡さんじゃなくて俺なんスかねぇ、どぅふふ、とは言いながら、あとで本屋に行って資料を探してみよう、なんて出不精な平田には珍しいことを考え始めていた。おそらくは坂田なりに気を遣ってくれたのだろう。30歳を過ぎていつまでも弱小ライターをやっててもしょうがないことは平田自身よく分かっている。これを機にもっと頑張って文章を書くことに向き合っても良いのではないか。いつ通るか分からない児ポ法に怯えながらロリ画像を収集する日々にはそろそろ別れを告げるべきなのだろうか。いや、即刻告げるべきだろう。ま、もう少しは、パスポート取るまでは悔いなくインターネットでもしまくりますか、と平田は思った。



  

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ソントン という人間が書いています
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