--------
 >スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。




20130705Fri
 >放課後、海を見に行くつもり

0d7860741eb7f1cbb51010af52891471f5c08679_l.jpg

小雨降る放課後、旧図書準備室に向かう。
文芸部の活動日ではない日も私は、部室である旧図書準備室へ行く。
校舎の外れにあり、一二を争うほどの古い部屋なので、当然クーラーなんてない。
相当蒸し暑くなっているだろうが、私は古い本の匂いに囲まれるだけで落ち着くし、
それに先輩は今日も居るだろうし。
部室の前に立ち、力を込めて建付けの悪いドアを引いた。
先輩が、窓辺のソファに寝転び、扇風機を独り占めしていた。

「お゛づがれ゛ー。あ゛づい゛ね゛ー」
「扇風機エフェクト外してください」
「わ゛ーれ゛ーわ゛ーれ゛ーわ゛ー、じょーしーこーう゛ーせーい゛ーだー」
「知ってます」

たれぱんだも裸足で逃げ出す勢いでダレダレの格好をしている先輩。
制服のタイは当然のごとく外し、第三ボタンまで開いている。
スカートもギリギリまで上げられていて、脚は裸足だ。
こんな日に部室に来るのは私しかいないのを承知の上で、完全に油断しきった姿である。
一言言わせて頂こう。良い眺めだ。
ソファの背にはクラシックギターが立てかけてある。昨日までは無かったが。

「そのギター、どこから持ってきたんですか」
「音楽室からパクってきた」
「ちゃんと返してくださいよ?」
「やだにゃー。ここに置いておくにゃー」
「これ以上、私物を増やさないでください」

不服そうに唇を尖らせている先輩を無視して、壁一面の書棚から適当に1冊を抜いた。
ふっと、カビの匂いが鼻をつく。除湿材も置いてはいるのだが、何せ環境が悪すぎる。
雨が止んだら換気することにしよう。
本棚のところどころ空いた場所には先輩が持ってきたものが置いてある。
ヒトデの乾いたやつだったり、シャーレに入ったいくつかのピアスだったり。
先輩は、私以外の部員が居るときはこの部屋には来ないので、
他の部員達は日に日に増えていくガラクタを見て不思議そうな顔をしている。
私はそれがおかしくてたまらない。
部屋の真ん中に置かれた机に向かい、本を開く。
元は工作室にでもあったのだろうか、使い古された重い木製の机だ。
手を置くと、ガサガサとした木の手触りが心地よい。
たまにささくれが刺さるのはご愛嬌だ。

私が相手をしないので、むーっとふくれっ面をしたまま、
先輩はガットギターを構えてソファに座りなおした。
細い指が、ナイロン弦をポロロンと鳴らす。
「涼しい感じのやーつ」と、軽快なリズムパターンが始まった。
マイナーキーに切ないテンションノートが乗っかっている。
たしかに、この蒸し暑い時期にぴったりの曲調ではあるが、
ただ、ひとつだけ問題がある。

「あの……なんで『夢は夜ひらく』なんですか?」
「この包丁でぇ 母さんぅ゛おぅ! 刺してからいけぇー!!」
「ストップストップ。全然涼しくないです。むしろ暑苦しいです」

細かい首振りまで完コピである。マイクにボーカルが入ってない感じがひしひしと。
というか、この曲をボサノバでやるなんて、とんでもなく器用だな。
その後、山崎ハコ、岡林信康などと先輩が歌いだすアングラフォークボサノバという、
21世紀ジャパニーズミクスチャーの極北が産声を上げそうになるのをなんとか止め、
とりあえず普通の曲を歌ってもらうようリクエストした。
シンプルだけと耳に残るコードの繰り返しと、脈絡も無い単語と鼻歌のメロディー。
もしかしてと思い、「オリジナルですか?」と聞くと、
「今作ってる」と答えが返ってきた。この人は天才か。

先輩のギターの向こうに、かすかな雨音や、
体育館から響いてくるボールの跳ねる音や、
音楽室で吹奏楽部が練習している音や、
放課後の校舎がざわざわしているのが少しずつ重なっていく。
それらの音がこの狭い部室に入って、壁の本に吸い込まれる。
静かだなぁ、こういうの、良いよなぁ、と思いながらページをめくるのに没頭していた。
と、いきなり左腕の隙間から先輩の頭が出てきた。

「ズボッー!」
「ひぃっ!」
「何読んでんのー?」

ギターを弾くのに飽きたらしい。
やばい私汗臭いかも! けど離したくない!
というアンビバレンツを味わいながらアワアワしていると
首が180度回って、先輩の顔がこちらを向いた。
フクロウ、というよりエクソシスト的である。
こ、怖いっ! いや、近いっ、近いぞこれっ!!

「ね、明日晴れたらさ、海行こうよ」
「う、う、海ですか?」
「サボる? 放課後にする?」

あ、行くのは決定なんですね。
再び「ズボーッ」という効果音を口で言って首を引き抜くと、
またギターのところへ戻る先輩。
放課後、海を見に行くつもりー、と歌いはじめた。
あ、放課後に決定なんですね。まぁ先輩が言うなら仕方ない。
さっきよりも汗ばんだ指で本を持ち直す。指先でページがフニャリとなるのが分かる。
先輩1人だと危ないし、私がついて行かないとな。
と、気を引き締めてないと顔がだらしなくなる。
ページを眺めているだけでもう本なんて読んでない。
明日、晴れたらいいな。っていうか、晴れろ。



かせきさいだぁ じゃっ夏なんで


今年もこの曲の季節がやってきました。
っていうか、ブログが途切れながらも1年続いたことに驚きです。
登場人物の女の子2人の名前が思い浮かばず更新できなかったので、
いっそ名前無しにしました。
そうです、ただ百合っぽいのを書きたかったのです。俺、バカ。



  

カテゴリ
日記 (619) 作り話 (25) 

過去ログ
2016/12 (9) 2016/11 (18) 2016/10 (1) 2016/09 (7) 2016/08 (4) 2016/07 (9) 2016/05 (3) 2016/03 (12) 2016/02 (19) 2016/01 (16) 2015/09 (1) 2015/08 (9) 2015/07 (1) 2015/06 (14) 2015/05 (11) 2015/04 (9) 2015/03 (14) 2015/02 (14) 2015/01 (12) 2014/12 (10) 2014/11 (8) 2014/10 (10) 2014/09 (30) 2014/08 (15) 2014/07 (13) 2014/06 (22) 2014/05 (23) 2014/04 (25) 2014/03 (23) 2014/02 (17) 2014/01 (17) 2013/12 (18) 2013/11 (15) 2013/10 (21) 2013/09 (8) 2013/08 (19) 2013/07 (18) 2013/06 (19) 2013/05 (25) 2013/04 (28) 2013/03 (24) 2013/02 (6) 2013/01 (4) 2012/12 (6) 2012/11 (5) 2012/10 (7) 2012/09 (2) 2012/08 (11) 2012/07 (12) 


このブログのタイトルは OFZK です
ソントン という人間が書いています
だいたい本を読んでいます





/
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。