『わたしはロランス』

なんか、すっげー久しぶりに映画観た気がします。
サボっててごめんなさーいねっ。ってなわけで、

ドキュメンタリー映画を観る会(会員俺1人)。略して、ド1人。
番外編、たまには劇映画を観る会、
略して“たま劇”2本目は、ちまたで話題のこの作品!

『わたしはロランス』
http://www.uplink.co.jp/laurence/
poster2_20131214014719a9f.jpg

公開当初から僕のTwitterタイムラインではたびたびタイトルを見かけましたし、
友人が通っている美容師さん(重度のシネフィル)曰く、
「2013年の1位は『ぼっちゃん』、2位が『わたしはロランス』」
と、1位の作品がだいぶと“世間はどう言おうが私は好き”寄りの作品でありますが、
界隈でそこまで話題になるなら、観に行かねばなるまいと、
『鉄西区』(→この記事を参照)を観たおかげで今年は腹一杯になっていた映画館へと、
しばらくぶりに行ってきました。

渋谷アップリンク
余談。アップリンクの年間会員なのですが、
これで5本観たので次の1本無料で観れますヒャッホイ。次は何を観ようかしらね。
金曜夜、終映時間が23時を越えるというのに、客席は20人弱の入り。
特に女性のお客様が多い印象。



ストーリーは、

カナダで国語教師をしている30歳男性、ロランス・アリア。
彼は「生まれてくる性別を間違えた」性同一性障害者。
既に数年の付き合いがあり結婚も考えていた恋人のフレッドは突然、
「今まで自分をだましてきた。これからは女性として生きたい」とロランスに告げられる。
お互いの変化や周りの意見の中で葛藤する、2人の恋の行方は果たして。

ってな感じ。



以下、感想など。

良かったスよー。
これ、クリスマスに観に行くカップルは上手くいく。
という誰に頼まれたわけでもない宣伝をしたくなるくらいに良かったッス。


この映画が話題になってるのは、監督グザヴィエ・ドランが、
1989年生まれで『わたしはロランス』制作時にはなんと若干23才という、
才能ほとばしりまくりなのが一番の原因ではないかと思われます。
役者もやってて、しかもイケメンっていうからもうタチが悪いよねー。
『わたしはロランス』でもカメオ出演してて、その画像が、こちらです。
director_img_001.jpg
ぐぅの音も出ないレベルのイケメン。


さて僕は、ストーリーより、画面に惹かれました。
とにかく綺麗で面白い。色合いや構図などなど。

冒頭、主役の2人がお互いに、色の印象を言い合うシーンがあるんだけど、
それがちゃんと活かされているなー、と。
赤は“情熱や欲望”みたな風に語られるんだけど、
その後、ロランスが雨宿りで入るお店?のシーンで、
その場にいる女性たちにカメラがアップするんですけど、照明が真っ赤。
ロランスの性転換願望が強くなっていくのを表しているのかなー、なんて。

ロランスが初めて女性の服を着て職場へ行った日の、
お祝いディナーのシーンの色合いが本当に素敵で。
まず、フレッドが花柄の服、バックの壁紙も花。
images (2)

対面のロランスがこちら
gallery_img05p.jpg
向かいの席がこれってどんな内装の店やねん、なんていうツッコミは置いといて。
黒バックで化粧が映えるようになってるし、ヒロインとの色合いが白黒で対になる。
けれど、両方に赤が入れられてて、ピアスも同じ側。
よって、2人は繋がってるっていう印象もありますね。

こんな感じで、色がカラフルなのに上手くまとまってて、すごく映えてる画面が多いです。
それが爆発するのが後半、2人が島で再会するシーンなのですが、
予告やメインイメージ画像にもあるように、
色とりどりの衣装が空から降ってくるCGが挿入されます。その多幸感たるや!
すごくファンタジックに作ってあるので、逆に、
あぁこの感じは長くは続かないんだろうなぁ、という予感も漂います。


構図で面白いなぁと思ったのは例えば、
ロランスから性同一性障害の告白を受けたフレッドが、
そのことを母親と妹に相談するシーンなんですが、
bcfbde8a238cccaa6d6392af75fd3770.jpg
この、THE・向き合ってない感!
お前らの議論どこまでいっても平行線やろ!
っていうのが一発で分かりますね。

あと、左右対称な画面が多いなぁとも思いました。
ロランスが女性の服を着るようになってから出会う、ちょっと変わったグループがあるんですが、
(全員の姓(もち偽名)が“ローズ”で5人、
 「私たちがファイブ・ローゼスよ」っていう紹介で、
 場内で大ウケしたのが俺だけだったのが解せぬ。あれ絶対に笑いどころやん!)
そのグループがたむろしてる部屋が、超ゴージャスでシンメトリック。浮世離れ感。
っていうか、『わたしはロランス』で画像検索すれば、
うん、画面が対照的だなぁ、って分かってもらえるはずだ。

四角い画面、っていうシーンも多いですね。
廊下のこちら側から、一番向こうの部屋を映している、っていう引きの画面や、
闇に浮かぶレストランの窓だけの画面などなど。
登場人物が画面の真ん中に据えられることが多いので、余計にそう感じるのかも。

そういえば、画面に人物1人だけ、しかもアップなシーンが多かったような。うろ覚えだけどさ。
学校での会議のシーンなんて、全員抜きで映るから、
部屋の様子がはじめは全く分からなかったくらいだもの。



さて、長々と書いてきましたが、全体的に素晴らしい中でも、
ナカイデの個人的に、ここが白眉じゃー! という箇所がございます。どこかっていうと、

別れ話のシーンね。

あれはね、映画史上に残って欲しいですよ、語り継がれて欲しいですよ。
上手いッスよねぇ。
ネタバレになるので、詳しくは書きませんが、
ロランスがね、あるものを、ある場所から、出すじゃないですか、ね?ね?ね?

フレッド、泣く、
ロランス、出す、
フレッド、泣く、

決定的な分岐点なのに、スパスパスパーンと超気持ち良いテンポで事が運ぶ!
セリフが何も無いのに、何が起こったか、どんな修羅場だったのか、
っていうのが、よーく分かる。上手っ! 監督あんた本当に23歳か!?
あと、まぁ、個人的な意見なんですが、あれがね、ロランスの、
はじめての、詩、だったんじゃないかと、思うんですよ。
……うひゃー、映画史上に残ってほしーぃ!

この他にも、上にも書きましたが服が降ってくるシーンや、水がバッシャーンってなるシーンなど、
いわゆる、嘘っこ的表現、が上手く、しかも大胆に取り入れられているなぁと思いました。

ほら、それぞれの指にクリップを付けて、ある仕草をするシーンも。
あんなの現実にはやらねえよ、って言ってしまえばおしまいだけど、さ。
観る人によっては、おいおい、なんて気分になっちゃうのかもですけど、
フィクションですドラマです、というのが強調されて夢の中度が上がるので、僕は好きでした。



最後に、ひとつ。
ストーリー自体や、その流れから、“男のロマン”を何故か感じました。

僕はまったく普通の異性愛者なので、
普段書く文章が悲しいくらい“異性愛者の男”が書いた文章にしかならないんですね。
例えば、僕が書いた百合な文章を読むと、
「あ、これ、ノンケの男が書いてる」って一発で分かるじゃないですか。
(俺、いつも主人公の一人称で書いてるのにね……。ちくしょう、工夫と努力が足りん!)

『わたしはロランス』からも、それと似たものを感じたんです。
監督自身はゲイらしいし、僕があんなに男のロマン、
つまり、これは男に都合の良い展開だ、と感じたのか、原因はよく分からないんですけど。

そこらへんのもやもやを、きっと宇多丸さんなら指摘してるはずだ!
と思ったけど、ムービーウォッチメンではこの作品やってないのねー、残念。



暮れの時期ですし、多くの人が2013年映画の上位に挙げるであろう、良作でした!
言い忘れたけど、上映時間168分を感じさせないスピード・テンポも良かったなー。
バックで音楽がほぼ鳴りっぱなしっていうのが理由のひとつかも、
ってなわけで最後に、劇中サントラから1曲お聴き下さい。


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サントラのほとんどが4拍子なんですけど、これは3連。
この曲が流れるシーンは特別、ってことでしょうかねー。
うん、特別、なんだけどさ。

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