20140311 Tue
星を賣る店 クラフト・エヴィング商會のおかしな展覧会


行ってきました。
星を賣る店 クラフト・エヴィング商會のおかしな展覧会 @世田谷文学館
00081948.jpg

あれ?お前「1月に行った」って言ってなかったっけ? とお思いの皆様、
ええ、2回目ですとも。そんくらい好きですとも。
あと半月ほどで会期も終わりなので、やや詳しい感想を書いておこうと思います。

他のブログでは、
弐代目・青い日記帳
アートテラーニュース
などのレポートがあり。


さてオイラのターン。
世田谷文学館へはこの展示で初めて行ったので、
普段どのような感じで展示をされているのか知らないんですが、
(同時開催中のコレクション展「旅についての断章」で少し伺うことは出来る。この展示も必見)
今展示のスタイルは非常にシンプル。
展示物があり、クラフト・エヴィングによる説明書きが付いている、それだけです。
クラフト・エヴィングの作品を知ってる人でないととっつきにくいかなぁ、といった感じ。
逆に言うと、知ってる人は絶対に気に入ると思います。オイラもその1人。


まず、クラフト・エヴィング商會ってのは何かっていうと、
(以下、世田谷文学館ホームページより引用)
“クラフト・エヴィング商會(craft ebbing & co.)は吉田浩美と吉田篤弘によるユニット名。著作の執筆と、装幀を中心としたデザイン・ワークを主として活動している。
著作のほとんどに、「クラフト・エヴィング商會」は物語の中の二次元的存在として登場するため、ユニット自体が架空の存在と思われがちだが、実際に存在し、これまでにおよそ1000 点を超える書籍・雑誌等の装幀デザインを担当し、2001 年講談社出版文化賞ブックデザイン賞を受賞した。
同時に、自著に登場する架空の品々を「ないもの、あります」の謳い文句のもと、さまざまな手法によって具現化し、自著と展覧会を通して数多く発表している。それらは「作品」ではなく、あくまで「クラフト・エヴィング商會」というセレクト・ショップが仕入れた「商品」として取り扱っている。”

っていうお2人のこと。
実際には“ないもの”を、外箱や説明書きを作ってしまうことで、
あたかも“あるもの”のように見せてしまう、という
ちなみに今展覧会のタイトル『星を賣る店』は、稲垣足穂の本のタイトルかららしいです。



展示は大きく3つのセクションに分かれています。
1つめは入り口を入ってすぐ。
白い壁に沿って、靴用のような白い箱がたくさん積み上げられていて、
それぞれの一番上の蓋が開いている箱に、展示物と説明書きが入っています。
壁面には一切展示がなく、鑑賞者はただただ箱の中を覗き込むようにして巡ります。
これは辻本奈冲さんがTwitterでおっしゃってたことなんだけど、
中身を見ることの出来ない下の方の箱にも、同じように物が詰まっているんだという想像が掻き立てられる。
今展示は“クラフト・エヴィング商會の棚卸”とうたわれているのですが、
この第1セクションはその特徴が一番強いですね。
もちろん実際に本に掲載されてたものも沢山並んでるので、
心の中では「見たことあるー!」の連発。
冬眠図書館のシチューチケットなんて俺にとっては涙物。

普通の青鉛筆を束ねたものや、切れた電球、果てはピンポン玉まで、
あの空間に置かれて、吉田さんによる説明書きが付くと、
もっともらしい素敵なもの、に思えてしまうという不思議さ。
一つも大きな展示物はありません。むしろ、ものすごく細かい・小さい。
神は細部に宿る、なんていう言葉を思い出しました。
そういう性格が一番出てたのが、坪内逍遥訳のシェイクスピア作品から抜き出した文章がいくつか入っている箱。
抜粋元は書いてありません。誰かのセリフが古く加工された紙に印刷されているだけなんですが、
これがまた実に可愛いセリフばかりが抜き出されていて、
僕たちが持っているシェイクスピア、特に坪内逍遥訳の古いものに対するイメージが、
(まぁ「今の言葉遣いと全然違って読みにくい」というイメージが多いと思うんですが)
このたったいくつかのセリフを見ただけで、見事に覆されてしまいます。
なんだ、沙翁、可愛いじゃん、なんて思っちゃってる。
細部や、さらには細部のきれっぱしを提示することで、想像力を刺激してしまうような、
クラフト・エヴィングはそんな方法を取っているのかもしれない、と思いました。

あと、三浦しをんさん・岸本佐知子さんと共同で『グウネル』というミニコミの企画があったそうで、
そのダミー本も展示されていたのですが、特集タイトルが「『罪と罰』を読まない」。
これは是非、完成させて世に出して頂きたいと、切に願うばかりです。




2つめのセクションは、先ほどまでとはかなり毛色が違っています。
急に暗くなり、足元には石畳模様のシートが。
少し進むと突然、架空の街角が現れます。これには驚くこと必至。
古書一角獣、アンティークショップクラフト・エヴィングと書かれた看板の下、
薄く汚れたガラスの向こうには展示物が。

僕は本が好きなので、古書一角獣のディスプレイに陳列された、
吉田夫妻が実際にお持ちの古書に、とても惹かれました。
詳細はメモするのを忘れてしまったんですが、
例えば藤木九三『屋上登攀者』なんかが並んでて、
中身どうのこうのよりも、タイトルでもの凄く弾かれる作品ばかりなんですね。
先ほど書いたシェイクスピアのセリフ抜粋もそうなんですが、
吉田さんの言葉に対する好みやセンスには唸らされるばかり。
これらの本が実際に古書店に並んでたら、思わず全部中身を読んでしまいますわ。
ま、いくつか並んでるのがおかしい本も紛れているあたり、
してやったりな感じでホント好きでしたね。

角を曲がると、クラフト・エヴィング商會工作室なるスペースが!
この室内には、図録には載っていない展示があります。
吉田さん直筆のメモが、一画にたくさん貼ってあるのです。
フレーズや単語に対して非常に敏感な吉田さんのセンスを、
少し垣間見ることが出来ます。僕は非常に好きでした。あういう感じ、真似したいなぁ。

そして、出来れば会期中にこの工作室で作業をやってみたい、
と吉田さんが書かれてたのですが、そうは言ってもお忙しいお二人のことです。
まぁ実現はしないだろうな、と前回来た時は思ってたのですが、

今回、展示が1個増えてた、っていう。

これには本当に驚きました。
ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、柴田元幸さん編集の『MONKEY vol.2』にも掲載された、
村上春樹『シェラザード』扉ページのオブジェ
なんと、実際に会期中、この部屋で作ってしまったらしいです。
ほんと凄いな!



最後のセクションは大きく開けた場所。
1セクション目の箱の大きさには入りきらない、
もしくは平面的であるため箱での展示に向かなかったであろう作品・スケッチが台に展示されていて、
壁には、ビートルズ『ホワイトアルバム』の各国盤と、
吉田音作品に登場する黒猫シンクが散歩で集めてきた数々の物が額入りで展示されています。
(壁の下に“for cat”と書かれた猫目線の高さでの展示もあり、これがまたお茶目!)

吉田篤弘脚本によるラジオドラマも聴くことが出来ます。
吉田さん自身がBGMまで作ったバージョンと、BGMだけを差し替えたバージョンの、
2つを聴くことができます。これももちろん図録には入っておらず展示会限定。

そして白眉は、壁一面に面陳された、クラフト・エヴィングが装丁を施した書籍たち。
普段「おお、良い表紙」と思っていた本に、どれだけクラフト・エヴィング装丁のものが多かったのか、
改めて思い知りました。(三省堂の国語教科書も装丁してたりするのよ)
特に、ちくまプリマー新書はおそらく現状での全点でしょう。圧巻の物量。



なお、一部の展示物には敢えて説明文がついておらず、
全ては図録の方で読めるようになっています。

図録には小川洋子さんや柴田元幸さんなど、
ゆかりのある人たちからの「お客さまの声」が収録されていて、
展覧会と図録、両方が合わさってようやく全貌が分かるという、
“二兎”を追っているクラフト・エヴィング商會らしいやり方だと思いました。
ショーバイジョーズ!


ってなところで今日はおしまい。最後に1曲お聴き下さい。

Gorillaz - Do Ya Thing
)
世界一有名な架空のバンド



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