20140317 Mon
ねえ、先生


本を読んだ。
すごく良い本だったのでちょっと紹介させて頂きたい。

S先生のこと
尾崎 俊介 『S先生のこと』 (新宿書房)

昨年の日本エッセイストクラブ賞を受賞した作品。
って言っても、僕はその賞のこと全然知らないんですけどね。
この前の職場の飲み会で、正面にラオウが座っていたことは書きましたが、
実は隣には南斗水鳥拳のレイが座っており、
その2人が声を揃えて「面白い」と言っていた本なのである。
これは読まねば、と、すぐにでも買おうと思ったのだけど、そこはバット(俺)。
先立つもの(お金のことね)がございませんので、
本郷にある俺の本棚こと、図書館で借りてきました。

内容はといえば、作者・尾崎俊介さんが大学時代からお世話になったS先生=須山静夫さんのことを、
偲んで書いた回顧録、といったものである。
出版社が書評をまとめているページがございますので、よければそちらもご参照下さい。
(僕の大好きな堀江敏幸さんが、書評というよりは<あらすじ>を書いてる……)

さて、書評だけ読むと「なんだか硬そう……」と思われるかもしれませんけど、
まったくそんなことはございません。すごく読みやすい。
普段フニャフニャの軟派本しか読まない僕が言うのですから間違いない。
僕は2日で読めました。元々ウェブでの連載?だったらしく、
章立てが短いのでサクサク読めてしまいます。

まずは須山先生との出会いから始まります。
“古武士のような”と形容される須山先生の授業は非常に独特。
ある文学作品をそのまま使って、
「このページで分からないところがある人? いませんね、では次のページ」
と、これ授業か? というやり方で進んでいきます。
なんとなく誰も疑問点を言わないのですが、先生がふと
「ではこの一文はどんな意味でしょうか」と聞いたときに
ある生徒が「分かりません」と言います。
そこで先生が激怒するんですね。
生徒だから分からない点があるのは当然だ、
分からないことを何故分からないままで放っておくのだ、と。
その時点で何人か脱落してしまうんですけど(俺もどちらかというとその側)、
尾崎さんはなぜか火が点いて、よっしゃ次の授業からはマジで行ったろ、と、
完全に下読みして解釈をした上で、授業に臨むんですね。
これ誰も書いてないけど、尾崎さんすげぇと思っちゃうんですけどね、俺なんかは。

で、その心意気やよしと須山先生に気に入られた尾崎さん、
非常勤である須山先生が自分の学校に来なくなっても、自分が大学院に進んでも、
とにかく須山研究室に足を運んでは侃々諤々の議論を重ねていきます。
尾崎さんは須山先生の晩年まで親交を深めていきますが、
須山先生には実は暗い過去があり、
尾崎さんは須山先生の選ばれる課題作や翻訳をされた文学作品、
そして先生ご自身の私小説などを通して、先生の心の内を垣間見ていきます。


まずはこの作品、大学進学をひかえた高校生さん、
もしくは研究室を選ぶ時期にでも読んで頂きたいですね。
特に文学部に進む方には、これ以上無い予習になると思います。
このご時世ですし、ほとんどの人は研究職へは進まないとは思いますが、
こんな世界もあるのだ、と知るには良いのではないでしょうか。

文学作品、特にアメリカ文学に興味のある方、
あと翻訳作業ってどんななの?って思ってる方も読むと面白いと思います。
須山先生の文学に対する態度は真剣で、鬼気迫るものがあります。

須山先生の生き方が迫力のあるものなので、
紹介をしようとするとどうしても硬くなってしまうのですが、
尾崎さんの易しい文体や、2人のユーモアに満ちたやりとり、
そして何より、須山先生とさちさんの間に交わされた愛情!
甘いぞ! これ甘い! っていうか、ここまでさらけ出すか!?
なんか私小説家の執念を見た気がしました。

ひとつだけ気になったのは、後妻である名保子さんとの間に生まれたお嬢様、
この方についての記述が無かったような気がします。
奥付、編集協力のところにお名前は載っているので、掲載拒否、というわけではないのでしょうけど。

須山先生の小説・翻訳作品が読みたくなるのは当然ですが、
これまで注目していなかった“日本エッセイストクラブ賞”のことも気になりました。
出来れば遡って読んでみたいなと思っております。



ところで、尾崎さんとS先生との関係性、最近なにかで読んだな、と思ったら、
夏目漱石『こころ』でした。

貸してもらって読んだのですが、その人が、
「どうせソントンさん、こういう王道は読んだことないんでしょう?」
と言いやがったので、
「ああ読んだことないともさ!」と堂々言って借りてやりましたとも。

『こころ』はあれですね。童貞小説ですね。
北方兼三さんだったら「ごちゃごちゃ抜かしてないでソープに行け!」って言うよ。
もしくはBLだと思いました。
僕のような初心者にでも、私×先生の年下攻めだというのは分かるのですが、
ぜひ腐女子の皆様に、Kと先生の関係性をご教授頂きたいですね。
これ“×”の前後を間違えるだけでブログが炎上しかねないので、
僕は不用意なことを言わないことにします。

100年前(!)に書かれた小説がこんなに面白く読める、っていうだけでも感動しました。
ところどころで、さすがに古いな、とは思うものの、
『枕草子』なんて読んでもそうだけど、今も昔も人の思うことってあんまり変わらないんだなぁ、と。
先生がウジウジ悩むところなんて、要は僕がよく「死にたい」って思うのとほぼ同じだよね。いや、違うか。
あと、舞台が僕の家の近所なので、それだけで読んでて楽しかったです。
おお、こいつら小石川植物園の近く歩いてるよ、みたいな臨場感。

今は文京区に住んで、かつては旧制五校に通っていたという
やたら漱石に縁のある僕ですが、完全にスルーしてここまで来てしまいました。
(いや、漱石だけじゃなくて一葉も八雲も読んでないんですけどね)
今さらになってしまいましたが、『こころ』良かったです。
ちなみにこれでも、元・文学部文学科です。卒業はしてないけどな!

なんて思ってたら、ラオウとトキに囲まれた飲み会で、
近ごろ岩波文庫から出た、漱石の『坑夫』が面白い、と教えてもらった。
なんでも村上春樹が漱石の小説の中で最も好きだと挙げた作品らしい。
僕が育った田舎では岩波文庫なんて取り扱いが無かったため、
何となく小難しそうなイメージを持ったままで、普段なかなか手に取る機会が無い。
これを機に読んでみようと思う。



余談ですが、夏目漱石といえば、「三人目の夏目漱石」という話を聞いたことがあります。
面接の際、履歴書に趣味の欄に“読書”と書いてある人に、「好きな作家を三人挙げてください」と尋ねると、
「そうですね、○○と××と……夏目漱石です」
と、答えに詰まった際に、漱石の名前がポロッと出るらしい、という話。
さすが、国民作家と言われるだけはありますね。


ってなところで今日はおしまい、最後に1曲お聴き下さい

相対性理論 地獄先生



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