20140516 Fri
このライブレポはフィクションである


(毎度お馴染みクララズライブレポートです)
(「1回目」「2回目」をお読み頂ければお分かり頂けますが、フィクションです)
(実際のクララズは良い子です、と言っておくようにと言われています)

クララズことウッチーのライブへ行ってきた。
会場は、渋谷の喫茶SMiLE。
酸素が薄くなるほどのオシャレな場所にあった。
たどり着くまでに何度か呼吸困難で死んだ。
そのたびに俺は蘇った。
前日までの休日2日間、五月病のためにほとんど寝ることしかしなかったのが功を奏した。
ただ、このライブ前の夜は、寝すぎで眠れないといういつもの悪循環のせいで徹夜してしまい、実際トントンだった。

会場に入ると、前の方の席で男性がペコリと頭を下げるのが見えた。
脳内メモリーを引っ掻き回すが、見覚えの無い方だった。
でも確かに僕に向かって挨拶をしている。

これは自慢だけれど、僕は人の名前と顔を覚えるのが苦手で、
3年目に突入しようという今のバイトでも、ほとんどの人の名前を覚えていない。
僕のフロアには課長と係長が居るのだけれど、
なぜかいつも係長のことを「課長」と呼びそうになってしまい、
「かち、かか、か、係長っ」
と、幼い頃のどもり癖が再発したかのような呼び方しかできない。
多分、係長は僕のことを、可哀相な子、と認識していると思う。

なので今回も僕が覚えてないだけで、
おそらくは以前に会った人なのだろうと。
では、いつもの作戦でいこうじゃないかと、
僕は人当たりの良い笑みを浮かべて、前方の男性に近づいていった。

「どうも、お久しぶりです」
「はじめましてですよ?」

外した。全力で外した。
こうなったら、日系外国人の真似で乗り切るしかない。
オゥソーリー、最近ヨウヤク日本ノ友達出来テキタンデスケド、マダ全然顔ヲ覚エラレナイネー、HAHAHA!
よし、これで行こう。そして言い終わったあと、ダッシュで逃げよう。

「オ」
「はじめまして、ken×kenです」
「オゥッ! はじめまして、ソントンですー!」

なんかすごく恥ずかしいリアクションをとってしまった気もするが、ken×kenさんだった。
ウッチーが所属しておるバンド、おとなごっこのキーボーディストである。
ken×kenさんは普段僕のブログを読んで下さってるので、
僕がやっている悪行の数々を知っておられる。ならば安心だ。
全く知らない人だったら、逃げるしかない場面だった。
寿命は縮まったものの、本当にken×kenさんで良かった。
いつか末期に医者に診てもらうことがあったら、
「先生、俺はいつまで生きることができるんでしょうか」
「ソントンくん、君の体は神秘だ。現代の化学では解明のしようもないほどに、ね」
「まさかっ……!?」
「もうとっくに、寿命が来ているはず、なんだよ」
「じゃあ先生、もしかして、俺の……闇の左手(ダークネスレフトハンド)のせいで?」
みたいな中二病的やりとりが出来る自信があるほど、僕の寿命は常日頃縮まりまくっている。

ken×kenさんはインコを2匹飼っていらして、インコの可愛らしい写真をTwitterに上げては、
僕の文鳥飼いたい欲を心地よく刺激してくださる御仁である。
是非ともお会いしたい方であった。
挨拶もそこそこに恒例の儀をとり行なう。

「すべてのチルドレンたちに」
「「乾杯っ!」」

これで俺たちは仲間、いや、brotherになった。

ken×kenさんはビール、僕はジンジャーエールだった。
アルコールが入ったら、2秒、いや、コンマ2秒で寝る自信があった。
初めましてということもあり、自己紹介的な会話が続く。

「ken×kenさんはおいくつなんですか?」
「今年で28です」
「っ!!」
「ど、どうしたんですか」
「ken×kenさん、実は俺、今年で30歳なんですよ」
「あ、5つも年下のクララズに実力でも才能でも負けているのが悔しい、みたいなやつですか」
「そんなまさか。ウッチーは俺の弟子みたいなもんですよ」
「ソントンさん、なぜ泣いてるんですか」
「話を続けましょう。ken×kenさんはご存じないかもしれませんが、
 俺の本名は、ケンゴ、といいます。
 そしてしばらく前までは、ken5、というハンドルネームを使っていました」
「ま、まさか、」
「さすが、察しが良いですね。
 kenという字が2つ重なっていて、kenに5という数字も付いている。
 そして、俺とken×kenさんの歳の差が2つ、俺とウッチーの歳の差が5つ……」
「つまり……」
「そう、俺たちは……出会うべくして出会ったメンバーだったんだよ!」
「ナ、ナンダッテー!!」

ゴヒッという音がして、首が折れるかと思った。
僕の後頭部をクララズのギターケースが直撃していた。
しかも、ケースの下に付いている、あの銀色の尖ったところが、
ちょうど頭頂部やや下の一番痛いところに突き刺さっていた。
ギターケースをこれほど意のままに操れる人物を僕は一人しか知らない。

「なに適当なことを言ってるんスか。人の神聖なライブ前の空気を汚さんでください」

振り向くと思ったとおり、クララズことウッチーがいた。

「ああ、喋らないで、空気が汚れちまいやす」
「汚れねえし。あと、やすってなんだよ」
「あれ?あちき、前からこんな喋り方だったでやすよ」
「真顔で嘘をつくな」
「っていうか、存在が汚いッスよソントンさん。風呂入ってますか?」
「入ってるよ。寝てないけど」
「ソントンさん、風呂ってのはね、毎日入ってこその、風呂なんスよ」
「徹夜の方を突っ込めよ」
「寝なくてもソントンさんは死なないじゃないんッスか。多分」
「クララズ先生、ソントンさんに厳しいッスね」

ken×kenさん、いきなりの先生発言だった。
度肝を抜かれた僕は不可抗力で爆笑するしかなかった。

「ゴボフッ! せ、先生って、ぎゃはー!死ぬ!笑い死ぬー!わははー」
「ソントンさん!うしろー!」

ゴヒッという音がして、再び首が折れるかと思った。
間をおかず、ゴヒッと再び音がして、脳が揺れる。
ゴヒッ、ゴヒッ、ゴヒッと、止まらない。

「ちょ、いたっ、ウッチー、いてっ、いやいや、あいたっ、マジで、うわっ、いたいって、やめよっ、いつっ、ねっ、ぎゃっ、お願い、いたい」
「ソントンさんは、そのまま、床に埋まってしまえばいいと思うんス」
「埋まるっていうか、だっ、この勢いだと、うぎゃ、南半球まで、あべっ、行ってしまうというか、べふっ」
「これはこれは失礼。ライブ前で気が動転しておりまして」
「ああ、ひゃあっ、うん、いたいっ、しょうがないね、なっ、しょうがないからさ、つっ、いい加減、いだっ、やめよ、がっ、ねっ?」
「ええ、そうですね、では気を取り直して」
「うん」
「埋まれ」
「命令形!?」

ギターケースを思い切り振りかぶったところで、ステージから名前を呼ばれ、
舌打ちを一発残して、ウッチーはステージへと向かった。
もう少しタイミングが遅れたら、地球の裏側で危うくサンバを踊らねばならなくなるところだった。
ありがとうライブハウスの人。


セッティングが終わり、SEが絞られ、照明が落ちる。
ライブがスタートした。

「こんばんは、クララズです」

いきなり、MCにリバーブがかかっていた。
リバーブというのはボーカルにかけて、歌声をさも風呂場で歌っているかのようにしてしまう、
その気持ちよさはまさに麻薬、という魔法のエフェクターである。
麻薬とは言っても、市場に出回っている歌入りの曲のボーカルには、
99・99パーセント、リバーブがかかっている。
つまり、ミュージシャンっていうのは皆ヤク中、ということだ。

しかし、麻薬というのは使うタイミングを間違えてはいけない。
リバーブというのは曲中にかけるもんであって、MCではかけてはいけないエフェクト。
MCでかかっていると、ドリーミーすぎるのだ。
さて、ウッチーはどうするだろうか。

「……こんばんは…クララズです…聞こえますか…いま…あなたの心に…直接…語りかけています…」

言い直した上に、全力で嘘だった。
そしてPAさんが、リバーブをさらに深くした。なんでだよ。

「…クララズは…現在…レコーディング中です…。
 …買うのです…そのCDを…月給全部つぎ込んで…買い占めるのです…」

なんか、ヤバめの宗教の集会に来たみたいなノリになってきた。
深いリバーブのためか、俺まで洗脳されそうになる。

「…先物買いです…私が…有名になった…暁には…10倍に…いや…100倍になって…返ってきます…先物買いだと…思うのです」

あげく詐欺の匂いまで漂わせてきやがった。
寝不足のせいか、危うく乗せられそうになってしまう。

「…あなたは…私のCDが…買いたくなーる…買いたくなーる…」

もはや子供だましだった。
こんなんで騙される人は居るのだろうかと会場を見回すと、
ほとんど皆が財布を取り出していた。
リバーブ、怖い。

「…ちなみに…私の祖父の…遺言は…先物買いは…損しかしないから…絶対に…手を出すな…でした…。
 …なお…ウチの祖父は…二人とも…健在です…」

祖父は健在だが、神は死んだ。
会場内は右へ左への大混乱だった。

「…それでは、新型新幹線E7系に捧げます。お聴き下さい、『あさま』。……じゃなかった、『半月』」


そんなこんなでリバーブ過多のドリーミーなライブも終了。

「今日のライブはどうだったでやすか?」
「いやぁ、ドリーミーだったよ」
「それは単にソントンさんが寝不足なだけッスよ」

現実とウッチーはいつだって僕に厳しい。
夢よ、さめるな。


あ、ken×kenさんが、『ミラーボール回ラズ』を買ってくださいました! ありがとうございます!!
「目の前で買われるのどういう気持ちですか?」って聞かれたけど、
職場で回し読みという公開レイプにあってるので、そんなんじゃ今さらなんとも思いません。
読んで読んで。レイプでもなんでもいいから、みんな読んでね!



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