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20140624Tue
 >現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展



雨の隙間をぬって、九段方面まで自転車を走らせた。
火曜日昼過ぎにも関わらず、やっぱり皇居ランナーたちは走っていた。
ランナーたちのユニフォームは車などからの視認性を良くするために、
蛍光色などの目立つ色であることが多い。
皇居ランナーはとにかく人数が多いので(土日は何かの大会でもやってるのかと思うほど)、
僕は彼・彼女たちが走る姿を見るといつも、
小さい熱帯魚(グッピーみたいなやつ)って回遊するんだっけ、と考える。
答えはもちろん否だ。熱帯魚に回遊の生態は(僕が知っている限りでは)無い。

皇居の周りは車道がクネクネしている上、けっこう大きな車も通るので、自転車で車道を走るのが結構危ない。
歩道はきれいで、幅も広くとられているため自転車でも充分に走ることが出来るのだけれど、
もしかすると皇居ランナーの掟、というものがあるかもしれない、
無神経に自転車で走っていると(なにせこの一帯、僕が通るときは何故か他の自転車が走っていないのだ!)、
野生の皇居ランナーたちに襲われるとかいう掟があったりするかもしれない、
と余計な心配をしている僕は、毎度ここでは自転車を押して歩くことにしている。
ただのヘタレである。
皇居一周でどれくらいの距離になるのだろうか。
さっき通り過ぎたオジさんは地球が一周するまでに皇居を一周して僕と再会することもあるんだろうか、
なんて考えながら、揃いで紫色のトレーニングウェアを着て、
喋りながらダラダラと走る坊主頭の男子高生たちの後をつけて、目的地へ向かった。

「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展」
http://sekainotakara.com/
へ行ってきました。
東京国立近代美術館に入るのは初めて。
俺が知らなかっただけで、結構歴史のある美術館らしい。
皇居周辺は路上駐車をすると国家権力が働き、ものの5秒でレッカーされるという都市伝説がある。
気のせいではなく、実際に警官の巡回も多い。
しかし気を付けたところで俺の見た目は相変わらずのホームレスルック。
付近の誰よりも不審者のイメージに近い。加えてお馴染み自意識過剰による挙動不審。
いそいそと駐輪場を探すものの、どこに停めればいいのかが分からない。
警官がこちらを見ている気がする。冷や汗が脇から流れていく。
警官がこころなしか近づいてきている気がする。心臓が早鐘を打つ。
ええいままよ、と思い切って路肩に自転車を停め、
そそくさと美術館に向けて歩を進める。
警官は通り過ぎていった。助かった。
あとから美術館の案内を見ると
“美術館に駐車場はありません”と書いてあった。
不便だ。

さて、展覧会である。
展覧会タイトルで失敗している気がするのは俺だけだろうか。
ホームページを開いて頂くとお分かりのとおり、
メイン画像はマーク・クインの『ミニチュアのビーナス』という作品である。
有名なファションモデルの顔と別人のヨガインストラクターの体を合わせたブロンズ像に、金箔を塗した作品だ。
俺は初めてホームページにアクセスしたとき、これを見て、
美術館で金粉ショーやるのかすげえな、と思ったことを記しておきたい。
金粉ショー、一度生で見てみたいです。
ちなみに『ミニチュアのビーナス』、サイズは中型の招き猫程度である。
展覧会の図録に、これらの作品のコレクターであるピエール・チェン氏の邸宅に、
実際に飾られている写真が掲載されているのだけれど、
家に飾ると実に悪趣味な感じがして、素晴らしいと思った。

そう、ピエール・チェン氏である。
今回展示されている全74作品は“ヤゲオ財団コレクション”となっているが、
要はすべて彼が集めたものらしい。
いっそもう、フィクションだ、って言ってくれたほうが納得できるかもしれない。
彼は生活の中にアートを置くためにコレクションをしているらしい。
もちろん今回のように美術館に貸し出すことはあれど、
家の中にちゃんと飾ってあるのだ。素敵じゃないか。
台湾の人なんだけど、地震の多い台湾では壊れやすい陶器作品を生活空間に置いておくことが出来ないからという理由で、
集めていた陶器作品を近頃すべて手放したらしい。徹底している。
目利きが素晴らしく、現代のコレクター10傑、みたいなのにも選ばれたとのこと。
貧乏人の僕にしてみりゃ、きっと税金も多く取られてるんだろうな、くらいのことしか思いつかない。
貧富の差は如実に想像力に影響してくる。

ヤゲオ財団コレクションは、
アジアと西洋の近現代作家の作品が多く、特に具象作品が目立つことが特徴で、
しかも各作家の代表作品と言えるようなものが押さえられている。さすが目利き10傑だ。
日本人作品では、杉本博司という写真家の作品が展示されていた。
静寂な海が写されたものが2枚と、
“最後の晩餐”をモデルをつかって再現した作品が1点。
すべてモノクロで、僕は特に海の写真が好きだった。
風は吹いていても微風だろう。波頭もなく、空に雲も浮かんでおらず、
画面中程にある水平線で区切られ、上半分は温かな灰色、下は岩石と見間違うような質感で海が写されていた。
目を閉じるとどこからか、風の音と、しずかな波の音と、海鳥の声が聞こえてきそうな作品だった。

昨年、東京で展覧会のあった、アンドレアス・グルスキーやフランシス・ベーコンの作品もあった。
個展の方へは、どうせ混んでるだろうな、と思って見に行かなかったので、
今回余裕で見ることが出来てラッキーだった。
もしかするとお客が上野の故宮博物館展に流れているのかもしれない。
あっちは白菜を目前にして100分待ちだと聞いた。
こっちはベーコンの前で10分くらい一人で見ることが出来た。
やはり肉の方が強いのである。いや、そのベーコンでは無い。

行く前から楽しみにしていたロン・ミュエクの作品は2点展示されていた。
作品集は何度も見たが、実物を見るのは初めて。嬉しかった。
ミュエクの作品=無駄にデカイ、というイメージがあったが、この2点は逆に小さいことで、
リアルに作られた異様さが浮き出てくるものだった。
片方は白人の若いカップルが手をつないで何やら俯いているもの、
もう一方は黒人の少年がTシャツをめくり、己の腹部についた切り傷を不思議そうに見ているものだった。
どちらも実にリアルにつくられているのだけれど、
例えば顔のそれぞれのパーツの大きさがやや誇張されていたり、
不気味なリアルさ、が出ていて痺れた。
ミュエクの作品集、また見ることにしよう。

初めて見た中では、リウ・ウェイの『名づけうるものが明確であるというわけではない』という作品が好きだった。
まずタイトルからして現代美術っぽくて素敵だ。
具象画なんてタイトル勝負ッスよ!という声が聞こえてくるようだ。
2m四方の大きめの油彩作品で、
淡い色の絵の具が何層にも塗り固められ、
その固まりを引っかくようにして、落書きみたいな絵や文字が刻まれている。
1カ所おそらくは「The tree」と書かれているのが分かった以外は判別出来なかった。
さらに近づいて見ると、色が濃くなっているところに、小さい文字で文章が綴られている。
太い絵筆で書かれているため文字がつぶれており、判読はそもそも不可能だ。
遠くからみるとその色合いは、女性純文学作家が恋愛を描いた最新作にでも使われていそうな感じ、とでも言おうか。

台湾のコレクターだけあって作家に中国系の名前が多く、慣れていないのでなかなか覚えられないのが悔しかった。
ぱっと思いつく人物ではアイウェイウェイくらいしか知らない。
サンユウという作家の、危ういくらいの素人っぽさは覚えた。
中国人作家の作品がまとまって展示してある一画があったのだけれど、
お客さんの老年ご夫婦のご主人の方が、それらすべての作品の前で
「やっぱりどこかオリエンタルだよね」
っておっしゃってたのが面白かった。
たしかにオリエンタルだった。

展示の最後に、コレクター体験コーナーみたいなのがあって、
いくつかの作品のなかから5点を選び、50億円以内に押さえるというゲーム。
ためしにベーコンの作品を1点だけ選び判定ボタンを押してみた。
結果は44億円で、6億円余り、ちょうど良いくらいでしょうと、クリアになってしまった。
ベーコンは最近人気が高騰しているらしく価格もバカ高いようだ。
ちなみに金粉ショーは4000万円くらいだった。
バリバリ存命の作家さんであるし、おそらくはまだ評価が定まっていないのだろう。
例えば文学の研究ではまだ開高建さんもちゃんと研究されていないくらいなので、
やはりアーティストってのは死後しばらくしないと評価は上がらないのだろうな。

しかし、この展覧会の説明書きにもあったのだけれど、
作品に付く価格というのはあくまで、評価のうちのひとつ、であり、美的価値というのはまた別にあるのだ。
ベーコンの作品が嫌いでも良いし(僕はあまり好きじゃない)、
全然無名な作品にゾッコンになるのも(それで身を滅ぼさなきゃ)自由なのだ。
っていうか、目の前に個人の購入した何十億の絵をバンバン並べられると、
いつも数万、いや数千円の作品を購入するのを躊躇する自分が矮小な気になってくる。
別にマストバイなわけではないけど、好きな作家さんを応援するためにも1点くらいは購入しても良いかもしれない。
いつか西塚emさんの絵を買おう。

絵画だけじゃなく、本にだって同じことが言える。
Amazonのレビューや評論家の人の言うことを気にし過ぎていると、いつまでたっても自分の1冊っていうのが見つからない。
入り方はどうであれ、やがて自分で自分の本を見つけていくっていうのが、やっぱり読者としては一番楽しく、
それがバンバン新作を発表してくれる若手の作家さんだったりすると、人生が希望でサンサンと照らされるような気にもなる。
やはり芸術ってのは、金持ちの投資目的だけではなく、
生活・生きる活力になるから、感動するから、
必要なんだろな、と無理矢理自分のフィールドでオチを付けてみた。

東京では8月24日まで開催していて、その後何カ所か巡回するようなので、
お時間ありましたら足を運んでみて下さいな。
現代美術はデカイ作品が多いので、それだけでも単純に盛り上がりますよ。


会場に着いたのが14時くらいで閉館が17時。
企画展を1時間半くらいで見終わって、
まぁ閉館までには余裕で回れるでしょと常設展の方へ行ったんだけど、
常設展がハンパなく充実してて、3分の2も見られなかった。
まず作品数がすげえ多い、よって好きな感じの作品も必然的に多くなり、
しかも一点一点ちゃんと解説がついてるもんだから、全然足が進まない。

なかでも思わず「おお!」と声を上げてしまった作品が2つあり、
・古賀春江『海』

ちょっと前にブログで紹介した、花岡千春『日本の変奏曲』のジャケットに使われてた作品。
月並みだけどなんか、運命を感じた。

・林忠彦『太宰治』

銀座ルパンで撮影された、個人的には太宰と言えばコレという写真である。
右隅に背中だけ移っているのが坂口安吾。
元々撮影されてたのは織田作之助で、酔っ払った太宰が絡んで撮ってもらったらしい。
っていう話を聞いたとき、文壇ってホントにあったんだな、って思った。

これらの展示作品がなんとほぼ撮影可なのだから恐れ入る。
太平洋戦争に関する作品が集められた一画ですごく好きな作品があったんだけどメモする時間も無かった。
あと、雪舟が描いた蟻も虫好きとしては嬉しかった。
やはり美術館は常設展をナメずに朝から来た方がちゃんと楽しめるだろうなぁと反省。

ギリギリまで展示を見ていたので、ミュージアムショップを見ることも出来ず。
中庭に置かれたマーク・クイン作品にリベンジを誓いながら、美術館をあとにしたのでありました。



  

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