20140723 Wed
増山たづ子写真展『すべて写真になる日まで』


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増山たづ子写真展『すべて写真になる日まで』へ行きました。
IZU PHOTO MUSEUM
3月までの予定だった展示が好評延長になったおかげで、なんとか観に行くことが出来。
たまにはツイてることもあるもんだなと思いました。
朝6時に家を出て、東海道線にゴトゴト揺られ、10時には会場に着きました。
静岡は地理的にマジで横に長いので、会場が三島(沼津の一駅手前)で良かったです。

駅からIZU PHOTO MUSEUMのあるクレマチスの丘までは、
なんと無料の往復シャトルバスが運行されています。1時間に1~2本。
無料ってすごいッスね。それでもとが取れるってことですもんね……。

クレマチスの丘には他に3つの美術館・文学館があり、
レストラン・カフェ・ショップなども充実、
敷地も広くて緑が一杯、一日中のんびりと楽しめる、という施設ですが、
今回はガッツリと見て見ぬふりをさせて頂きました。
そっちのほうは、観終わった後に出来るだけ本屋を回ろうという、
不埒な考えを持っていない方々にお任せいたします。


開館と同時に飛び込んだので、館内はしばらく俺の貸切でした。ワールドイズマイン。
暑いくらいに天気が良くて、建築自体がきれいなため、
意味もなく館内をウロウロと見て回り、スタッフさんに怪しい目で見られたりしました。

増山たづ子さんは2006年に亡くなられたおばあちゃんです。
岐阜県徳山村という、かつてあった場所で生活をおくっていた1人。
徳山村は、今はダムの水の下に沈んでいます。
増山さんが1977年60歳から亡くなる88歳までの約30年間に撮り続けた、
今は無くなってしまった徳山村の風景が展示されています。

サービスサイズといって、一昔前に家庭でよく目にした、
一番小さいプリントサイズの写真がほとんどです。
ハガキよりも少し小さいくらいなのかな?
展示はだいたい何でもそうなんですけど、
サイズが大きい方が迫力が出て、勝ちます。
僕が何言ってるか分からんって方は、
現代美術の展覧会を観に行ってみて下さい。
大体デカイです。マジで。
大きいものこそ良い、っていう風潮になってきてるところで、
今回の増山さんのような小さいサイズで、
しかも徳山村だけという狭い範囲しか写ってないものを、
ガッツリ展示してしまうという企画がまずナイスですね。

ほぼ時系列に沿った展示でした。
増山さんが始めて愛機「ピッカリコニカ」を手にした村民運動会にはじまり、
徳山村の日常や人々、
ダム建築の動きが激しくなってからの風景、
取り壊されていく建物、引っ越した人々、
転居先の自室で撮った生前最後の写真まで。
今回はおよそ500枚が展示されています。
写真のほかにも、ドキュメンタリー番組が2本代わる代わるで上映されていました。

増山さんは写真よりも先に、テープレコーダーを使って、
徳山村に伝わる歌や自然の音なども録音していました。
おそらくは記録魔的な側面もあった人なのでしょう。
会場で流れる音、特に廃校となった小学校での合唱を聴くと、
じわりと目頭が熱くなるのは、なぜでしょうか。


一見すると、ものすごく陽気な写真ばかりのようです。
写っている人たちは皆笑顔で楽しそうです。
しかし、これらは徳山村がダムに沈むと決まったあとの写真なのです。
みんな、楽しいばかりではないに決まってます。怒りや不安ややるせなさなど、あったはずです。
どうして、笑顔で写真に写っているのか。
カメラのこちら側で、写っていない増山さんの、笑顔が見えるようです。
親しい村民だけではありません。
補償金の交渉に来た銀行員、不動産の鑑定に来た人、
さらにはダムの工事をする人々まで。
ほとんど皆が笑顔で映っています。

増山さんによって写真の裏やアルバムの余白に書かれたメモが、
写真ごとにキャプションで貼られています。
それを読むことで、写真の背景が分かってきます。
たとえば、選挙運動をする候補者の写真。
一見すると何気ない日常の1コマですが、
現職の人の演説には「全員参加するようにとの話があった」、
対立候補の演説の写真には「家から出てはいけないとの口約束があった」、
と、村民の間で約束が交わされたことが書いてあります。
村民たちもダム推進派と慎重派に二分し、不穏な空気が漂っていた頃の写真です。
それに選挙が絡めば、ピリピリとした緊張感が漂っていたことでしょう。

なぜ、村民が家から出てはいけないはずの対立候補の写真があるのか。
増山さんがたった一人家から出て、候補者の写真を撮ったからですね。
おかげで「あいつだけ話を聞いていた」と非難を受けたとも解説に書いてありました。

どうしてそこまでして、笑顔で、必死の決意で、
増山さんは写真を撮ったのでしょうか。

キャプションの他にも会場には、増山さんの言葉がたくさん貼り付けられています。
その中に答えはありました。

「(戦地で不明になったままの)父ちゃんが帰ってきたら見せないかん」

ああ、愛だったのだな、と。


増山さんが亡くなったあと、残されたアルバムの数は600冊。枚数にして10万枚。
会場には600冊のアルバムが実際に並んでいます。
時には月10万円にもなった現像代などを、
増山さんは年金と、ダムの補償金まで使って払っていたそうです。
ほとんど壁一面になろうかというあの物量。
30年間という時間。たくさんの人の思い。それ以上の、増山さんの決意。

芸術写真などプロが撮った写真しかほとんど見る機会なんてないので、
今回のような展示は本当に貴重で、すごく良いものだと思いました。
増山さんの七回忌に合わせたものでもあったみたいなので、
おそらく数年後にはまた大規模な展示が行なわれるだろうと思われます。
こういうことは、忘れないうちにやるべきものだと思うし。

広島の死刑囚展や、今回の展示やら、
良さそうな展示にはフットワーク軽く、これからも飛び込んでいきたいッス。
とか言って、普段案外腰が重いので、自戒自戒。



コメント

by えこ (URL)
なんかさ、自分が笑っていたいというより、自分の周りの人に笑っていて欲しいって気持ちが最近、特に強い。

ムリに明るくする必要なないけれど、暗くするのはイヤだなぁって。

で、何が言いたいかって言うと、私もフットワーク軽く行きたいぞ!(笑)
2014.07.24 13:17 (編集)

by ソントン (URL)
オイラもそれすごくある。
だからこそ、自分は楽しんでおこうっていうか。
久しぶりに会った人にバカな話を山のように出来るように。
これからも飛び回っていきます!ソントン行きます!
2014.07.24 23:25 (編集)


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