20140805 Tue
こゆび侍『たまには純情』


koyubi.jpg
こゆび侍『たまには純情』を観ました。

こゆび侍の舞台を観るのは、『うつくしい世界』以来、2回目。
あのときは出演していたぬいぐるみハンターの猪股くんにお誘い頂いて、
今回は<哲学する小道具師>こと、辻本直樹さんのお誘いに乗っかってホイホイ出かけた。
白状すると、昼に公園で梅酒とロゼワインをやってから行った。
氷やコップを持ち運ぶためのクーラーボックスを見た辻本さんに
「え? 釣り帰り?」
と言われる。なので釣果は辻本さんにお渡しした。
井の頭線に乗ったあたりで、あ、今日楽日じゃん、って気付きました。すみません。
(豆知識:楽日(最終公演日)には、劇場から荷物を全部引き上げないといけないので、
 差し入れを渡す=荷物を増やす、ってことで失礼になるから良い子は気をつけようね☆)

というわけで、楽日も終わったので、ネタバレ気にせず淡々とストーリーや感想を書きます。
誰が得すんねん、っていうくらい長くなると思いますすみません。


まずこういうことを言ってしまうのも何なんやけど、
平凡なストーリーだったので、あんまり細部を正確には覚えてないッス。
ただ平凡なんだけど、たまをもぎ取られる、そんなストーリーでした。

開演の少し前から、バスガイド姿の役者さんが、最前列のお客さんをイジり始める。
なぜか僕は観劇のときに下手最前列に座ってしまうので、当然イジられた。
いつものごとく本を読んでいると、
「暗いですけど読めますか?」
「あ、はい、大丈夫です」
「何を読んでいらっしゃるんですか?」
「(表紙を見せる)」
「あぁ、中島らもですかー」
「(ちょっと恥ずかしい)」 
なんかもっと『黒死館殺人事件』とかオイシイ本を持っていけばよかったですすみません。

開演時間となり、そのままバスガイドさんによる諸注意のアナウンス、
運転手らしき男性が登場し、観客は物語という名のバスに乗せられて、
というふうに本編は始まった。

舞台は老朽化したアパートの一室。
白い壁には、子どもが書いたような絵が何枚も貼ってある。
ちゃぶ台がひとつ置いてあり、やがて父娘3人の食卓のシーンに。
食卓の上には写真立てがひとつ乗っている。

何気ない温かな団欒が終わると、ちゃぶ台がしまわれる。
と、父親が置くの部屋から一枚板の看板を取り出してくる。
看板には下手くそな毛筆で「蹴上道場」。
父は棒の先に金色のボールが付いたものを使って、二人の娘に蹴りを教えはじめる。
三人とも非常に慣れた様子で、この馬鹿馬鹿しい光景が常日頃行なわれているものであるのが分かる。

と、ここで再びバスガイドが登場。
自分がこの家庭の母であること、
もう死んでしまっていて、実際は居ないこと、
新人バスガイド時代に迷惑客に絡まれて、
金的、つまり、金玉を蹴り上げることでやっつけてしまったこと、
そのときに自分をかばってくれた運転手と結婚して、子どもを二人もうけたこと、
などが説明される。
残された父は、母の必殺技である金的を教えることで、
娘二人を今日も鍛えているのである。

今回の公演タイトルは、『たまには純情』である。
つまり、タマには純情、なのである。

超バカバカしい。
こういうの大好きです。

そういえば衣装にも水玉など、玉模様が取り入れられていた。
水玉は関係ないけど、次女のセーラー服のスカーフと、
履いているスニーカーの色がハッとするほど綺麗な赤だった。
照明が青と赤を合わせた色で、赤が浮いたようにギラギラと輝いていた。

ある日、仲の良い幼馴染であり同級生かつ大家の息子、
そして随分重度なレベルのオタク系男子から突然告白され、
次女は禁断の必殺技、金的を使ってしまう。
倒れて悶え苦しむ男子の顔を見て、
(ここで男子がボソッと言う「あ、これダメなやつだ」が超ツボだった)

金的の魅力に目覚めちゃう次女。

家族には内緒で、夜の街に繰り出しては闇討ち、金玉を蹴り上げまくるようになる。
愛ゆえに連れ回されるオタク男子が、それら蹴られた相手の悶絶顔を写真に収めていくシーンは、
映画『愛のむきだし』のパンツ盗撮シーンを思い出しました。

母が死んだ理由は自動車事故。
なんと、同乗した父のバスが巻き込まれた事故で死んでしまったのだ。
(そういえば、タマ突き事故では無かった気がする……)
それを苦にして父は、いまでは運転手を引退し、事務員として働いている。
事務関連の資格試験や転職活動、どれも上手くいかないまま。

そして一家のもう1人、長女はとにかく努力家。
熱血だけどちょっと情けない父と、ワガママで気まぐれなところがある次女、
そんな2人の世話を一生懸命にこなしながら勉強も頑張り、大学院まで進学。
ついには念願の研究テーマであった、<言葉の音のレシピの秘密>を探るために、
原住民がいる森への派遣隊のメンバーに合格するに至ります。

建物の老朽化により立ち退きを余儀なくされ、
母の13回忌と、引越しと、そして長女の出発と。
普通の日常を送る一家にゆるやかな変化が訪れようとしていた矢先、
近所に住む祖母によって、次女の奇行が仄めかされます。
この祖母役の役者さんがまたいい味出してて良かった。
一言で言えば、母を殺してしまったっていう父の自責の念にしつこく付きまとって、
生活費を搾り取っていくっていう、嫌なババア。
役者さんをどっかで観た事あるんだけどなぁ、って帰宅後に調べたら、
踊れ場『煙草と私たちの害について』にて、
海女コスプレで指名1位のイメクラ嬢やってた人だ、と思い出しました。
ああやって悪役をやってのけてしまう役者さんは凄いなぁと、素直に思います。
あと、冷蔵庫の冷気浴びアクションで心を鷲づかみにされました。

やがて次女が必殺技=金的を発動させまくっていた=犯罪をやっていた、ことが発覚。
金的被害者の1人にヤクザがいて、復讐のために、
なんと父が襲われ大怪我を負い、入院にまでなってしまいます。
一命は取り留めて無事に退院できた父でしたが、
後遺症が残ってしばらくはリハビリが必要な日々。
それでも引越しの日はやってきてしまいます。

そんな一家の様子を見て、長女はある一つの決断を下します。
派遣隊には行かず、この家を離れないでおこうと。
長女の決定を知ったあとの二人、特に父は猛反対します。派遣隊には行くべきだ、と。
と、追い詰められた長女の口から、ようやく本音が語られ始めます。
いわく、私は良い子でいようと思った、
お母さんが居ない分、私がお母さんの代わりになろうと思った、
お父さんはずっと逃げてばかりだ、
そんなお父さんが私に、家族を置いて派遣隊に行くという決断から逃げるな、なんて言う資格はない。

父は駆け出します。まだ痛みの残る体を引きずって家を飛び出しました。
そして突然の轟音。
窓を開けると、ブロック塀を突き破って庭先に、父の運転する大型バスが停まっていました。
「お父さんはもう逃げない! お前も逃げるな!」と叫ぶ父に対して、

長女はついに、必殺技を解禁します。

幾度も幾度も父の股間を蹴り上げる長女。
全てを振り切った長女は、笑顔でぶっ倒れた父に言います。

「運転手さん、このバス、空港まで行きますか!」

先ほども引き合いに出した『愛のむきだし』では、勃起シーンで号泣でしたが、
『たまには純情』では、連続金的シーンで感涙。なんなんでしょうかこの股間的共通項。

いつの間にか自分達で作ってしまってた殻は、自分達でぶっ壊せ。
居心地の良いぬるさからは抜け出して、
楽しかった旅はここまででおしまい。
ここからまたそれぞれの旅が始まるのさ。

友には、さらば、を。
そして家族には、いってきますといってらっしゃい、を。

たった一人もう旅も終わってどこにも行けない母は、全てを受け入れ、
大きく手を振って、愛する家族を送り出すのでした。
いってらっしゃーい、気をつけてねー。




役者さんは7人。やはり僕はこれくらいの人数の舞台が好きだなぁと改めて思う。
わざわざ言うのも失礼なんだけど、皆さんすごくよく声が出ていて、良かった。
RECレベルのレッドゾーンギリギリラインと、叫び芝居で敢えてレッドゾーンに持っていくっていう、
その狭間を皆さんがそれぞれよく分かってらっしゃる感じだった。

脚本は、こゆび侍主宰の成島秀和さんと、詩人のセリザワケイコさんによるものだ。
辻本さんによると、脚本を手がけたお二人ともに、詩のボクシングでの優勝経験がおありとのこと。
僕はふだん詩をあまり読まないのだけれど、
今回の観劇にあたって予習をしておこうと、セリザワケイコさんの詩集『音の蛹』を拝読していった。
編集後記にセリザワさんの言葉で、
“ここにある作品は、もともと朗読するために書かれたものです。
 詩を書くとき、わたしは常に音を意識しています。”
ということが記されている。音といえば、セリフだ。
やはり、常日頃、音を意識して文字を綴ってらっしゃる方による脚本は、
耳障り良く、するするとセリフが聞こえてきたような気がする。

気がする、としか言えないのは、僕が普段、
音ではなくて意味を重視して文章を書いているために、
音に対するセンスみたいなのがあまり備わってないからです。
詩や短歌はおそらく音や、文章の見え方、文字のフォルム、
そういった部分を大事にして、作られるんじゃないだろうかと思っている。
(もちろん、意味、をおろそかにするということではなく)
ぶっちゃけ僕の弱点なので、鍛えていきたいところであります。



こゆび侍『たまには純情』、とても良い舞台でした。

長々と最後までお読み頂きありがとうございました。
ってなところで今日はおしまい。最後に1曲お聴き下さい。

Quantic - You Will Return feat. Alice Russell



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