20140913 Sat
しょうちゃんを笑かせ


小学校の頃、僕はお調子者だった。
こう書くと今ではしっかりしているような感じになるけど、
まぁ今でもご存知のようにお調子者である。
ただ、今ではおだてられては木に登るくらいのお調子者だけれど、
あの頃の僕は、おだてられなくても木に登って、バク転しながら飛び降りて、
そのまま変な部分で着地しては骨を折る、レベルのお調子者だった。

しょうちゃん、という友達がいた。彼は普段まったく喋らない男子だった。
しょうちゃんが喋らなくとも普段のコミュニケーションは、
子どもならではの力業とテレパシーによって問題なく行なわれていたし、
授業で当てられたりしたときは、か細い声ながら発表をしていたので問題なかった。

しょうちゃんが喋らない理由について、大人たちが話しているのを聞いたこともあったけど、
僕にはそんなこと全然関係なかった。
何を思ったのか、僕はしょうちゃんを爆笑させたいと考えていたのだ。
しょうちゃんの爆笑声を聞いてみてえなぁ、と企んでいた。
やめとけ、と今の僕にしてみればそっと止めてあげたい。
バカかお前、と。そんなん迷惑に決まっとろうが、と。

しょうちゃんの他にも、とても物静かな女の子がいて、この子も僕のターゲットになっていた。
静かにしていたい休み時間のたび、小噺とかコネタをやりに来るバカを想像して欲しい。
ネタのクオリティが高ければまだしも、しょせんは小学生の考えるような内容である。
どう考えても迷惑だ。僕の席にそんなやつが来たらダメ出しをしてから殴る。
しょうちゃんもその女の子も笑ってくれてはいたけど、若干笑顔が引きつっていた気がしないでもない。

そんなバカな僕と、しょうちゃんはなぜだか仲良くしてくれて、
僕はチャリで1時間弱の道を爆走し、
(小学生男子のチャリはいつだって立ち漕ぎで爆走するものなのである)
しょうちゃんの家まで遊びに行ったりもした。
しょうちゃんには弟が居て、この弟君と僕の弟が同い年だった。
そんな縁も関係したのか、しょうちゃんとも弟君とも仲良く遊んだ。
弟君とはファミコンの『プーヤン』で主に遊んだ。

中学校に入って部活も始まり、交友関係はずいぶんと変わった。
僕は吹奏楽部に入り、しょうちゃんは(たしか)テニス部に入り、
休み時間や放課後の過ごし方も変わり、
もうわざわざ家まで行って遊ぶようなことはなくなった。

はっきりと覚えてはいないけど、しょうちゃんはたしか、
少しだけは喋れるようになっていったんじゃなかったかと思う。
我が校のテニス部は結構厳しく、県でも上位に入賞する部だったし、
なんか体育会系の感じに揉まれていったんだろう。
年齢も年齢だし、思春期も通り抜けて、大人になっていったんだと思う。

最後に覚えているのは中学校の修学旅行。
2泊3日東京行、というのが恒例だった。
2泊ともホテル宿泊だった記憶があるのだけれど、
1日目の夜はしょうちゃんと2人で一緒の部屋になった。
クラスで部屋決めをするとき、僕から誘ったような覚えがある。
なんか、このときも僕が一方的に喋ってる感じだった。
しょうちゃんは、しょうがねえなぁ、という昔の感じで笑って付き合ってくれた。

ところで僕は今でもそうなんだけど、高いホテルっていうのがイマイチ苦手で、
特にしっかり整えられたベッドとか、カーテン付きのシャワールームとか、
まったく使い方が理解できないのである。
カーテンをバスタブの中に入れなければ床が濡れてしまうという理屈は分かるのだけれど、
濡れたカーテンのベチョベチョした感触がどうも好きになれないし、
狭い中イライラして、かえって風呂中をべっしょべしょに濡らしてやりたいという危険な衝動を抑えるのに必死で、
ゆっくりシャワーを浴びれる状態にはなれない。

そしてベッドである。風呂・ベッド。安らげるはずのところで安らげないのが僕だ。
キチッと整えられたベッドというのはあまりに清潔すぎ、かつ隙間がなさすぎる。
僕は毎回毎回、ホテルでは、どの部分に体を入れて良いのか分からなくなってしまう。
掛け布団的なものをめくったところなのか、その下のシーツをめくったところなのか、
さらにその下のシーツをめくったところなのか、あれ?なんかマット地みたいなの見えてきたけど?
みたいに毎回悩む。あいつら全員キッチキチに挟み込まれすぎ。
ふにゃふにゃになったタオルケットが大好きな僕としては、
シーツも真っ白にピシッとしすぎていて、どうにも居心地が悪く、
ベッドの適当と思われる位置に入ったはいいものの、
気をつけの姿勢で寝返りひとつうたないまま朝4時に目が覚めたりしてしまう。
たまに悩んだあげくの悪癖として、めんどくさくなり、結局一枚も布団をめくらないまま、
一番上にそのまま寝転んで、乾いてるバスタオルだけかけて、寝てしまったりする。

お前は初めて道具を与えられたチンパンジーか、と。
せめてもう少し文明と戦えよ、と我がことながら思う。

しょうちゃんと一緒に泊まったときも、やはりどこに寝ればいいのか分からず、
「しょうちゃん、これどこに入るんやっけ?」と聞いたものの、
しょうちゃんはやっぱり喋らず、優しく微笑むのみである。
残念ながら僕たちはもう中学生になっていて、
小学生の頃に使えたはずのテレパシーは使えない。
テニス部と吹奏楽部ではアイコンタクトに使っているチャンネルが違いすぎるし、
そもそも僕らは小学校の時ほどに、一緒の時間を過ごさなくなっていた。
しょうちゃんがその微笑みの下で何を考えているのか、
僕にはもう分からなくなっていた。

まぁいいか、と、めくりまくって結局ベロベロになってしまったベッドの上に
ごろーんと寝転がって、わざとらしくグーグーといびきをたててみると、
しょうちゃんがウケてくれた。

あ、久々にしょうちゃん笑かしたわ、と思った。



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山瀬まみ「ゴォ!」


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