20141202 Tue
4000オールで


 オール、というものを久しぶりに体験した。船を漕ぐやつでも、かと言って麻雀で皆から点棒をもらうあれでもない。徹夜のことである。いや、正確にいうならば徹夜するなんてこと、一人暮らしの部屋でYouTube巡回しながらしょっちゅうやっているので、一晩中どこかで皆と一緒にいるという経験が久しぶりだった、ということだ。

 仕事が終わったあとにお誘い頂いたままノコノコと出向いたのは、High Circle Temple、こと高円寺である。高円寺に降り立つといつも、ねじめ正一『高円寺純情商店街』のことを思い出す。いや、正確にいうならば、小説全編は読んだことがないので、中学一年のときに国語の教科書に載っていた「六月の蠅取り紙」を思い出す、いや、さらに正確にいうならば、その一編を授業で解説する原田先生のことを思い出す、いや、さらに深く正確に言うならば、原田先生は普段「とにもかくにも」と言うのが口癖で、「六月の蠅取り紙」の主人公・正一のことを説明するときには常に、
「えー、とにもかくにも、しょーいちはですねえ~」
とおっしゃっていた、のを級友であった山崎君が物真似するさま、を思い出すのだ。

 原田先生の見た目を言い表すのは難しいが、昭和のテレビドラマで、役場で住民に詰め寄られたじたじになる職員、といった感じの人だった。体育を担当していた山田先生、という方が当時の生徒から絶大な人気があって、原田先生は山田先生と同い年、なのだけれど原田先生が2浪だか2留だかしていて、
「とにもかくにも、僕と山田先生は同い年なのに、たかだか2年大学を出た年が違うっていうだけで、給料に差が合って、それは一生埋まらないんですねえ~」
と、ある日の授業中の雑談で突然ボヤかれていたのを今でも覚えている。当時、親や近所の大人から「ソントンは将来、先生になるのがええんとちゃう?」とたまに言われていてたのだけど、それらに対する何となくの反抗心があって、重ねて田舎の中学ならではの教師の大変さを間近で見ていて、教師っていうのは奉仕精神みたいなのが無いと無理だぜつまり俺無理だぜ、とそもそも思っていたのだけれど、原田先生のそのセリフを聞いて、絶対に教師にはなるまいと心に誓った。

 たしか僕の中学3年あたりからゆとり教育は始まったのだけれど、その一環として選択授業みたいなのがあって、僕は、小説を書く、という授業を取っていた。担当は原田先生だ。授業のまとめとして当然、原稿用紙2枚分くらいの小説を書いた。原田先生はなぜか、僕が書いたそれを高く評価して下さり、じゃがいものような男子中学生の心の片隅に「小説家になりたい」という夢を灯すという、教師として一番やってはいけないことをやらかしてくださった。恨んでいますよ、先生。
 大学の頃くらいまで、原田先生の授業で書いた小説が人生で一番上手く書けたと思っていた(というか、他の文章を誉められたことが無かった)のだけれど、いつだか実家に帰ってたまたま原稿用紙を見つけて再読したところ、あまりに青臭くて恥ずかしくなったので速攻で捨てた。小説を書くということは、己や周りの恥を晒すことなのだ、きっと。


 High Circle Temple Station、こと高円寺駅で、そんな昔のことを思い出していると、いきなり背後から首を絞められた。すわ、コイツが高円寺に夜な夜な出没すると言う“首絞めちゃん”か!? とか阿呆なことを考えたが、もちろん迎えに来てくれた相手だった。すでにほろ酔いの首絞めちゃん(もう今日の呼び名はこれでいいや)に連れられるまま、駅から近い居酒屋に合流し、この前の文フリ打ち上げで味をしめた“澄みわたる梅酒”をカパカパ飲む。カパカパって言っても3杯だけど。酔った流れで、これまたこの前の文フリにて5部限定で配布したフリーペーパー『OFZKFP』収録の実話譚、
「新宿中央公園でシャブ中のゲイにナンパされ、
 ホテルまでホイホイついていった結果、
 夜が明けるまで全裸で抱き合うことになった話」

を、なぜか口頭で説明するという所業に打って出て、俺は己の恥を晒すことでしかウケを狙いにいけないな、と改めて思った。なんというか、頭の良さそうな、Humor、みたいなのが無理なのだ。出来ない。そんな僕のような人間がウケを狙う、というのは、誰かを傷つけにいくというのと同じだ。自分を傷つけるのか、人を傷つけるのか、両刃の剣なのかはともかく。小説を書くのは止めたけど、こうやって今でも僕はブログや深夜の大衆居酒屋で己や周りの恥を晒し続けている。
 驚いたのは、隣に座っていた首絞めちゃんがすでに『OFZKFP』を読んでくれていて、やたら細部まで話も流れも覚えていてくれたことだった。書いた本人が忘れてしまっているようなことも覚えていてくれた。僕が誰かを傷つけたというのを、僕以外に覚えていてくれる人がいるというのは救いなのだな、と初めて気付いた。
 ちなみに今回の『OFZKFP』がなぜ5部限定になってしまったかというと、フリーペーパーのくせに1万文字を越えて、B5用紙にして15枚くらいの分量になってしまったからである。そんなもん何十部も用意できません。ただ前回の脱臼話が好きだった、という人は今回のシャブ話も絶対に好きだと思うので、またブログで日数限定で公開しようかとも考えている。


 居酒屋を出たあとは、カラフルオーケストレーションの館、略してカラオケ館へと向かった。カラオケに行くのは2・3年ぶりだった。元々下手くそだった歌はさらに下手に磨きがかかっていたけど、周りが引くのも関わらず攻めの姿勢で『ゆずれない願い』(マジックナイト レイアースOP)の絶唱をはじめ、90年代アニメしかも女性ボーカル曲をガンガン入れて、あの部屋の僕のターンだけ高円寺じゃなくて秋葉原の端っこにあるコスプレバーみたいになっていた。
 カラオケから合流した人が大変面白い人で、のっけから気を使わずに済んでしまい、もしかすると、と思って血液型を伺うとやはりというかなんというか「B型」だった。気の合うB型男子同士はなぜ異常なまでに気が合ってしまうのか、謎である。カラオケの宴が終わって朝の5時。店の前で別れるときに彼から、
「こんど、わざわざ待ち合わせて一緒にいるのに、それぞれで本を読んで、一言も話さないまま解散する、という会をやりましょう」
とお誘い頂いた。面白すぎるのでぜひやりたいと思う。B型男子同士の口約束は100パーセント守られないと2歳のときから知ってはいるけど。


 始発から1時間も経たない時間の電車には、もう座る場所もないくらい人が乗っていた。みんなどこへ行くのか、どこへ帰るのか。僕はなか卯ではいからうどんをかきこんだのち家路についた。やがて目の前で夜が明け、朝が来た。この時間の空の色が一番好きだ。万年筆に詰めて文章を書いたら、きっと面白いものが書けると思う。



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