20150309 Mon
柴那典『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)を読みました。


最近、やたら本を読んでます。
いや、前からやたらと読んでましたけど、さらに加速がついたように読んでます。
理由は簡単です。文フリの文章が書けないからです。
POMELAは壊れ、家のPCを起動してはインターネット。

さ、そんなことはさておき、面白かった本の感想いってみましょう。

柴那典 『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』 (太田出版)


まずこの本、表紙が面白いんですよ。
普通は帯に印字されてるような惹句が、タイトル・著者名と並んでカバーに印刷されてるんです。

新しい文化が生まれる場所の真ん中には、インターネットと音楽があった。2007年、初音ミクの誕生と共に始まった三度目の「サマー・オブ・ラブ」とは。

と、ででーんと、書いてあります。
そんな装丁を手がけたのは、そう、鈴木成一デザイン室。
もうー、オッシャレなんやからー。って言いたい。やっぱ凄いわ。

内容は、今までオタクカルチャーやサブカルチャーの流れで語られていた初音ミクを、
ミュージックカルチャーの中で捉えなおすという試み。
感想の結論を言いますと、面白かったです。★★★★☆くらい。

ミクのことをもう知ってる、っていう人には物足りない部分があると思います。
ミクが出た頃からずっと聴いてるっていう人は読んでもあまり面白くないと思います。
けど、僕の周りで実際に聞いたことのある、
「良い曲だと思うんだけど、ミクが苦手」とか
「機械に歌わせる意味が分からん」とか、
そういうこと言ってた人は、読んでみると面白いと思います。

1967年前後、サンフランシスコで起こったサマーオブラブ。ロック。
1980年代後半、イギリスで起こったセカンドサマーオブラブ。クラブミュージック。
そしてこの本が主張している、2007年の日本で起こった、サードサマーオブラブ。初音ミク。

要するに、それまでのカルチャーシーンが塗り替えられるということ。
大人の文化が、若者の熱気によって塗り替えられるということ。

好みの問題ももちろんありますけど、
僕の実感として、初音ミクは多分、主に若者の文化だと思うんです。
クトゥルフ神話を大体把握している大人はいても、
カゲロウプロジェクトの全容を把握している大人は少ない。ってかほとんどいないと思う。

この本の中にも書かれてますけど、
雑誌『ミュージックマガジン』のクロスレビューで、
中村とうようがパブリックエネミーのアルバムに0点をつけたって話。
(今調べたんですけど、マイケルの『スリラー』にも0点つけてるんですね、とうようさん)
それが悪いっていうわけじゃなくて、
ある程度はしょうがないことなんじゃないかなあ、と思いました。

だって、大人になると、子どものことは分からないもの。

いくらピーターパンシンドロームだからつって、まあ僕らは大人になっちゃってますんで。
かくいう僕も、かつては部屋にネット環境が無くて、YouTube・ニコ動・初音ミク勃興期には乗り遅れてます。
その後のフォローも怠ってしまったので、ミクのブームには乗り切れず。
僕くらいの年齢(30歳)の人は、2007年当時22歳くらいでしょうか。
ミクの流れに乗れたか乗れなかったか、結構分かれてると思いますので、
自分の知らぬところで勃発した波のことを知りたい方は、この本ほんとオススメです。
遠くの異文化より、近くの異文化。


一時期以降、若い人とカラオケに行くと、
みんなオートチューンみたいな歌い方を自然とするようになってて。
ほとんどのメジャー音楽で音程補正が入っている現実もあるけど、
やっぱり、ミクをはじめとするボーカロイドの、あの歌い方の影響は、凄いものがありますね。

で、僕が楽しみにしてるのは、
いま、90年代のクラブミュージック文化である打ち込みのリズムトラックから、
最回帰してきたドラマーたちが、ジャズシーンで注目されているように、
いまから10年後くらいに、歌姫初音ミクに影響されたボーカルが、どのように花開くかということ。
音楽(だけじゃないかもだけど)って、機械の進化と人間の進歩の追いかけっこの部分があるので、
きっと、肉声ボーカルのシーンの塗り替えが、あると思います。
生声でPerfume再現できるくらいの人は出てくるはず。楽しみ!


メモリースティック  ポップカルチャーと社会をつなぐやり方メモリースティック ポップカルチャーと社会をつなぐやり方
(2015/02/06)
九龍 ジョー

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『初音ミク~』もずいぶんと熱気のある文章でして、
ちょっと前に読んだ、九龍ジョー『メモリースティック』を思い出しました。この本も面白いです。
現場を大切に育てていくための関わり方、みたいなのがよく現れてて良い。
そういえば、『メモリースティック』内、九龍さんと音楽ライターの松永良平さんの対談中に、

松永 二〇〇〇年代の最初ぐらいまで、「人が持ってないものを所有する」ことの悦びというか、音楽もそういう形で作られているフシがあった。「このネタ知ってるか」みたいな。でもYouTubeとか、ソフトのつくり方の変化とか、とにかくある時点から「自分だけが持っているもの」は格好よくないことになった気がして。「こんな面白いことがあるから一緒にやろうよ」的なものに変わったという実感がある。

という部分があって、
これってまさに、初音ミク関連のクリエイターにも当てはまることだよな、と思いました。
シーン全体で進化は共有される、というこのやり方は、
だいぶ前に読んだ『文化系のためのヒップホップ入門』にも書かれてた覚えがあります。

文化系のためのヒップホップ入門 (いりぐちアルテス002)文化系のためのヒップホップ入門 (いりぐちアルテス002)
(2011/10/07)
長谷川町蔵、大和田俊之 他

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『初音ミクは~』の中に、海外の一神教と、日本の多神教との比較が出てくるんですけど、
今日読んでた、鴻上 尚史『孤独と不安のレッスン』にも似たような記述が出てきました。

孤独と不安のレッスン (だいわ文庫)孤独と不安のレッスン (だいわ文庫)
(2011/02/09)
鴻上 尚史

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あと、自分の程度によって、会える人の程度も決まってくるっていう例え話も載ってて、
楽器の演奏者だと、アマチュアレベルのままだと周りもアマチュアの人しか寄ってこないけど、
努力して上達し、プロ級の演奏が出来るようになれば、同じくらいのレベルの人が集まってくる、という話。

これ読んでて、『初音ミクは~』の中で、
THE BACK HORNを聴いて衝撃を受けて、音楽を作ろうと思ったという若者(じん)が、
いまや、THE BACK HORNのメンバー・菅波栄純と対談するまでになっていて、
あ、ホントの話なんだな、と思いました。

その対談で、良い話が載ってたので、それを引用して今日は終わります。

じん 自分も音楽を鳴らして、何かを届けよう、みたいに思うようになった。結局、それって自分が貰わないと理解できないじゃないですか。
菅波 すごくわかる。深いこと言ってると思うよ。ほんと、貰わないとわかんないんだよ。俺もやっぱり好きなバンドがいて、そういうバンドに何か貰った気がしたし。そう感じた人が次の人に渡そうって思うんだ。





ハチ 「マトリョシカ」

僕が初めて、ボカロ曲で本当に良いと思った曲を。超有名曲ですけど!




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