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20160302Wed
 >トンネルにて

「タケシ?」

左のほうから、女の人がぼくをよぶのが聞こえました。
どっかで聞いたことがある気がしたけど、だれかぜんぜん思いだせません。
思いだそうとしてがんばって考えてるうちに、
ぼくは体がうかぶような感じがしました。
風をひいちゃって、ねつが高いときみたいに、
ぼくは動かしてないのに、ゆらゆらーって、
体がひとりでに、左から右へ動いていくような気がしました。
さいごに、ボートが着いたときみたいに、
トンッて、動くのが終わった感じがありました。


「タケシ、大丈夫か?」

目を開けると、バックミラーが見えて、そこで、
お父さんがちょっと心配だという顔をしているのが見えました。

「うん……、ちょっと寝てたみたい」
「そうか」

起きたばっかで頭がぼーっとして、のどもかわいていました。
なにか飲みたいなと思ったけど、お父さんは車を運転しているのでがまんしました。
となりを見るとケイコがぬいぐるみみたいなのであそんでいます。
今日はカエルじゃなくてクマみたいなやつだなと思いました。

まだちょっと頭がぼーっとしているので、車の横のガラスに頭をくっつけました。
つめたくて気持ちがいいなと思いました。
いまはトンネルをくぐっているので、ごうごうという音がします。
オレンジの電気がいっぱいあって過ぎていきます。

ぼくは気づいて、あれっと思いました。
みどりの服だったはずなんだけど、いつのまにか服が変わっていたからです。
けど頭がぼーっとしているので、ぼくの気のせいかもしれないと思いました。
もしかして、電気がオレンジのせいかもしれません。


けど、そのとき、<平行世界>、ということばが急に思い出しました。

それは、ぼくがいる世界とはちがった世界のことです。
そこは全然ちがってたり、ちょっとだけちがってたりすることがあります。
そしてそれは、もしかすると、ぼくがいたかもしれない世界なのです。
だからそこには、ちょっとちがったぼくがいるかもしれないし、
もしかするとぼくはいなくなってるかもしれないのです。

こんな話、だれに聞いたんだっけ?
さいとう先生? ゆみちゃんのお兄さん? テレビ?
またやっぱりちゃんと思い出せません。
もう一回がんばって考えようとしましたが、
車がすごいスピードで走ってるのでジャンプして、
頭がごつんとガラスにぶつかってしまったので、やめました。

もしかするとちょっとだけちがった世界っていうのは、
ぼくのすぐ隣にあるかもしれません。
ほとんど同じに見えるけど、ぼくとはちがったぼくがいて、
ケイコとお父さんだけじゃなくて、お母さんもいるのかもしれません。

……お母さん?


ごちんっとまた頭をぶつけてしまいました。
ふだんはすごく運転がうまいのですが、
今日はいつもよりお父さんは急いでいるような気がします。
ぼくもケイコも、どこへ行くのかよく知りません。
けど、けっこう長いトンネルだなあと思いました。


ぼくが生まれる前くらいにUFOが見つかって、
その宇宙人が地球のけっこう近くから来ていることが分かりました。
それまで宇宙人はいないと言われてましたが、
なにも無いと言われていた場所に、宇宙人の星があったのです。

宇宙人は地球人よりすごい力がありました。
たとえば前にお父さんは目が悪かったみたいですが、
けど宇宙人のお医者さんのおかげで目が見えるようになりました。
もっとたくさんの地球人が宇宙人のおかげで助かりました。
だからいま、地球人にはやることがなくなってしまいました。

いまケイコが持っているのも、すごくかわいいけど宇宙人なのです。
ぬいぐるみとちがって生きてるのでもっとかわいいし、
地球の犬やネコとちがってウンチしたりしません。
だからすごく人気があるのですが、宇宙人のことがきらいな人もいます。
お父さんがそうです。

ケイコが生まれてすぐに、宇宙人のために、
たくさんの女の人が宇宙に行くことになりました。
ぼくは顔を覚えてませんが、ぼくのお母さんも一緒に行きました。
ぼくはすごいことだなと思うのだけど、お父さんはすごく悲しかったらしいです。

地球人の女の人がまた宇宙に行くことになって、
こんどはケイコも行く人に選ばれました。
ケイコは宇宙人が大好きだからよろこんだのですが、
お父さんは誰かにおこったり、あまりうれしそうじゃありませんでした。
それで今日、ぼくとケイコに言って、車ででかけました。


お父さんがどこへ行くのか知りませんが、<平行世界>に行けたら、
いまの世界とはちょっとちがってて、
もしかしたら宇宙人が来ていないのかもしれません。

そういえば、さっきぼくを呼んだ女の人は誰だったのだろうと思いました。
ちがうかもしれませんが、もしかして、お母さんだったかもしれません。
きっとお母さんがいたらお父さんもうれしいと思うので、
ここじゃなくて、そっちの世界のほうが正しいのかもしれません。
やっぱり、こことその<平行世界>ではちがうところがあるのだと思います。

どこかが、5つくらい。




CIMG0808.jpg
(中日新聞カレンダー2016年3月より)





  

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ソントン という人間が書いています
だいたい本を読んでいます





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